Vol 46:「 がん患者の妊活 」~ がんの治療と妊活について~
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「 がん患者の妊活 」~ がんの治療と妊活について~。
番組情報
放送分:2019年3月17日放送分
ゲスト:虎の門病院 乳腺・内分泌外科 田村宣子先生
テーマ:「 がん患者の妊活 」~ がんの治療と妊活について~
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの法人代表であり理学博士のアンディさんです。アンディさん、よろしくお願い致します。
番組内容
アンディ: アンディです。よろしくお願いします。今日はスタジオに虎の門病院、乳腺・内分泌外科、田村宣子先生にお越しいただいています。テーマは「がん患者の妊活」についてお話をいただきましょう。
西村: アンディさん、今週もよろしくお願いいたします。
アンディ: よろしくお願いします。
西村: だいぶ暖かくなってきてね。
アンディ: なりましたね。花粉も飛んできて。
西村: そうそう(笑) そこなんですけれども、アンディさん、花粉症をお持ちで?
アンディ: 大変ですよね。
西村: あらら。ねえ、皆さんちょっとそのあたりはね、マスクをされたりっていう方も増えてくるシーズンでも。
アンディ: はい。清浄機、4台買ってます。
西村: (笑) そんなに回していらっしゃるんですね、なるほど。最近アンディさん、いかがですか、アイジェノミクスさんは?
アンディ: はい、先週台湾から帰ってきたんですけれども、実は台湾でも子会社を立ち上げて、検査ラボも用意できたんです。
今まで台湾の検体は日本に送られてきて、日本で検査していたんですけれども、もっと早く患者さんにサービスできるように、台湾でもラボを立ち上げて検査ができるようになりました。
西村: スタッフの方、何人ぐらい? 現段階では。
アンディ: 今はまだ5、6名ぐらいですね。まず技術者から入ってもらって、そこから少しずつ増やしていこうと思っています。
西村: なるほど。そういったいろいろなことを台湾にいる皆さんにも、この情報や、またオフィスの情報も、日本の皆さんと台湾の皆さん、いろんな方々にぜひ発信していければいいですよね、アンディさん。皆さん、よろしくお願いします。
アンディ: そうですね、お願いします。
西村: さて、今週のゲストでございます。スタジオにお越しいただいているのは虎の門病院、乳腺・内分泌外科、田村宣子先生にお越しいただいております。田村先生、よろしくお願いいたします。
田村: よろしくお願いします。
西村: パチパチパチ(拍手)。 先生、今日はスタジオ、FM西東京までお越しいただきましたけれども、普段は虎の門でいらっしゃいますよね? なかなかこのエリアにいらっしゃる機会って無いんじゃないですか?
田村: そうですね。ただ、お友達が住んでたりするので、時折ホームパーティーとかで来たりとかはすることはあります。
西村: そうなんですね。よろしくお願いいたします。さて、先生には二週に渡ってお話を伺いたいと思っております。まずはクリニックのご紹介などお願いできますか?
田村: はい。虎の門病院の乳腺・内分泌外科の田村です。虎の門は今、街が変わっていて、実は今度のゴールデンウィークにうちの病院も隣の大きい施設に移ることになっています。都市開発の中ではいろいろな患者さんが、港区在住の方というよりはいろいろな地域から病院に来ていただいて治療を受けていただいている、そういった病院になります。
西村: 先生はこの乳腺・内分泌外科にお勤め何年ぐらいでいらっしゃいますか?
田村: こちらに来たのがもう7年になります。ずいぶん何か古くなってきましたが(笑)私自身が。
西村: そして、アンディさんと田村先生は、個人的にもお付き合いがもともとおありなんですって?
アンディ: 実は子どもがお互い、同じ保育園のクラスになってます。
田村: かわいい。
西村: 偶然なんですか?
アンディ: 偶然です。で、ちょっと話したら、まさか、業界が近いということが分かって。
田村: そうですね、似たような仕事をしている。
アンディ: びっくりしました。
西村: そんな偶然もおありなんですね。
田村: お世話になっています。
西村: そして、この番組でご出演いただいたゲストの方、ライフサカスさんの。
アンディ: の、西部沙緒里さんですね。西部沙緒里さんにはがん患者の不妊治療の話を少ししていただいたんですけれども、実は田村先生は西部さんの主治医でもあったことで、今日は来ていただこうと思いまして。
田村: よろしくお願いします。
西村: よろしくお願いいたします。さて、今週は「がん患者の妊活」について、こちらをテーマにお話を進めていきたいと思います。アンディさん、お願いいたします。
アンディ: よろしくお願いします。先生、まず、がんと不妊治療の関係についてお話をいただきたいんですけれども、がんとその治療の妊娠への影響について、少しお話をいただきたいと思うのですが。
田村: まず最初に、乳がんって皆さんご存じだとは思うんですけれども、私今42歳になるんですけれども、日本において乳がんのピークというのが、実は30代後半から40代後半に一つのピークがあるんですね。その次にまた60代に一つのピークがあって、実はこれ、欧米とちょっと違うんですね。
この40歳前後でピークがあるというのが、実は私もアンディさんのお子さんと同い年なんて言いましたけど、結局、子どもが欲しいなあと思っている世代で、子どもが生まれる前に乳がんになる患者さんってのはそれなりに、少なからずいらっしゃって。ある意味、乳がんになってからお子さんが欲しいと望まれる方も結構いるんですね。
ただ、乳がんの治療というのはどうしても抗がん剤とか飲み薬とか、いろいろな治療をやって、今、生存率はかなり改善してるので、15年先生きているのが普通ってまあ、変ですが、予後の良いがんにはなりつつあるのですが、実はその治療によって妊娠のしづらさを得るという情報も、患者さんには一番最初からお話ししなきゃいけない内容にはなってきています。
アンディ: なるほど。そうしたら、例えばがんの患者ですけれども、妊活しているとか、妊娠したいという希望が出たときに、どのような処置法があるんですか?
田村: いつも患者さんにお願いしているのは、将来そういう希望があるのかどうかということは一番最初に私たち主治医に言っていただくようにはしているんです。
というのも実は点滴の、俗にいう抗がん剤を乳がんの治療に際して行うことで、生理が無くなってしまったりとか、その後の妊娠する能力が下がってしまう、そういったデータも明らかになっているんです。なので、もともとがんの罹患(りかん)の段階で、がんになった段階で将来お子さんを望んでいるのかどうかということを一番最初にインフォメーションとしてこちらにいただくようにしています。
後は、飲み薬を飲んでいる患者さん。その患者さんたちは、実は飲み薬を飲んでいる間には生理があれば妊娠は可能ではあるんですが、その時に催奇性(さいきせい)といって、お子さんにトラブルが発生することもあるんです。なので、希望された段階でそのお薬を一回休薬というか、お休みしていただいて、その上で影響が無くなった段階で妊活に進んでいただくという、そういうプロセスになります。
アンディ: なるほど。先生、先ほどおっしゃったのは一般的に自然妊娠の場合の話ですよね。じゃあ、不妊治療を受ける場合は、またハードルが違ってくるんですよね。
田村: そうですね。ただ、いろいろなデータがあって、まだ実は世界的にも不妊治療をしたことによって乳がんの再発率が上がらない、というはっきりとしたデータというのは無いんです。
ただ妊娠、出産で乳がんの予防は変わらないというデータは明らかになっていますので、そういった意味では妊活に進んでいただくのは、主治医との相談にはなりますが、問題は無いと思います。
一人一人の状況で、問題が無いと判断されてから先に進む必要があるのですが、一方で、不妊治療を受け入れてくださるクリニックが、どこでも乳がんの患者さんを受け入れてくださるという訳では無いようなので、患者さんにとってはいろいろな情報を集めた上で、ご本人により良い選択を選んでいくという、そういうプロセスがとても大事にはなっていくと思います。
アンディ: ということは、その不妊治療のクリニックでも、がん患者の不妊治療の効率は、一般患者ほどじゃないと考えていらっしゃるんですかね。
田村: そもそもがその乳がんの患者さんで妊娠を希望されること自体が、年齢的に少し、もともと不妊治療にスタートする方よりも少し上目なのかもしれません。
後は、がんの治療によってもともとの卵巣の機能自体が下がっていることが予測されますので、結局、最終的にお子さんを産めるのかどうかということに関して、他の患者さんよりは少しグレーというか。
後は、自分が不妊治療の先生の立場からしたときに、不妊治療をすることでがんが再発したらどうしよう、というそういった分からない不安というか、そういったこともありますし、患者さんはそれを腹をくくって先に進もうとしてるんだけど、実は受け入れ先の先生がなかなか同意してくださらないとか、いろいろなことがあるとは思います。
西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。今日はスタジオに、虎の門病院、乳腺・内分泌外科、田村宣子先生をお招きいたしまして、「がん患者の妊活」と題してお届けしております。先生、後半もよろしくお願いいたします。
田村: よろしくお願いします。
西村: 今ね、前半のトークの中で、やっぱりその、先生方とお話するがんの治療を受けられている皆さんが妊活する上でご不安に思ったりとか、どう先生方と向き合ったらいいのかというところを私もぜひお伺いしたいと思うんですが、実際にこの治療を受けられるクリニックとか、そのあたりについてもご紹介いただけますか?
田村: はい。日本がん生殖医学会という学会があるのですが、そこの先生方が全国でどういった施設でがんの患者さんでも不妊治療を受け入れてくださるか、不妊治療というよりはがんの治療を開始する段階で、将来の不妊治療のために、例えば事前に、抗がん剤を受ける前に卵子とか卵巣を採っておくとか、後は男性だと精子を採っておいて凍結保存をしておく。そういったことをどういった施設でできるのか、というリストを作ってらっしゃいます。
ただ、私のところに来る患者さんで、なかなかそういった情報に巡り合えなくて、例えば不妊治療のクリニックに行ったら門前払いみたいに、ちょっと傷付いてお帰りになったりとか、後はがんの治療側の医者が理解が無い場合に、こんだけ元気に長生きしているのに何言っているんだ、って言われて、とても傷付かれて私のところにいらっしゃった方もいますね。
やはり医者が、医療者側の知識の広がりというか、後は患者さんが情報を取りたいときにどういったところにアクセスできるのか、その情報がなかなか取りづらいのがバックグラウンドにあるかもしれません。
西村: なるほど。
アンディ: 先生、私からひとつ、技術的な質問があるんですけど。不妊治療ではやはりいろんなホルモンを使うんですよね。その使っているホルモン自体は、例えば乳がんとかの再発を誘導する可能性があると考えられるんですか?
田村: そうですね、そこはいつも慎重に考えなくてはいけないお話で。先ほど前半でもお話ししましたが、不妊治療をどの程度受けたらじゃあ乳がんの再発率が上がるのか、というデータ自体がもともとがまだ世界的にも存在しないという、そこのネックはあると思います。
ただ、生殖医学の先生方に聞くと、実際に妊娠、出産の方が、体にとっての女性ホルモンの影響は大きいと伺っておりますので、実際妊娠、出産した患者さんたちが予後が変わらない段階で良いのではないかと。
ただ、がんの治療側からすると、結局不妊治療に3年、5年、そのがんの治療を中断して3年、5年かけてしまうと、やはり時間がいたずらに経ってしまいますので、ある意味、乳がんのことを理解してくださる先生方が、さくっと、とも言い方があれかもしれませんが、がんの治療を中断する期間をなるべく短くして妊娠、出産に向けて、その上で妊娠、出産したらきちんとがんの治療に確実に戻ってくるというか、そういったことが一番望ましいんじゃないかと考えられています。
アンディ: はい。それと、がんの患者さんが来られて、その中でも妊娠したいという患者さんがいる訳ですよね。それで、例えば先生から、もちろんがん治療もしながら、不妊治療の施設と相談して、それで成功例というか、実際そういったがん治療も妊娠もできた、という例を紹介していただきたいと思うんですけれども。
田村: 結構いらっしゃいますね。私の外来に赤ちゃんというかお子さんを連れてきてくださる方も結構いて。実際にはがんの治療を中断している不安というのもあったと思いますが、皆さんやっぱりとても幸せそうですね。
抗がん剤を受ける前に卵子というかを凍結して、旦那さまがいらっしゃる場合は胚にしてから凍結して、抗がん剤が終わってがんの治療が一段落した段階でおなかに戻して妊娠、出産された方もいますし、抗がん剤やらなくても一旦その内分泌療法という女性ホルモンをロックするやり方をして、そろそろということで希望されて、お薬をやめて、自然妊娠とか不妊治療でお子さんを授かった方もいますね。
大事なのは、そういう方がいて、でもその方々はきちんとそのご本人の不安というか、いろいろなことと向き合ってリスクを取った上で、ご本人たちがご本人たちの価値観、人生観を大事にされて先に進んでいる、と、そこが一番大事で。それを私たち医療者が否定すること無く、ただ、がんの治療もがんのリスクに関してもきちんとお話ししながら、リスクとメリットですかね、そのあたりを天秤にかけながら先に進むってのが一番大事ですかね。
実際には、結構お子さん連れてくるとみんな喜びますね。次の患者さんたちの力になるのも事実だと思います。
西村: やっぱりそのがんという宣告を受けて、治療を受ける段階で、多分メンタル的にも皆さんいろんな思いを抱えていらっしゃるところで、それでお子さんも諦めなきゃいけない、あれもこれもどうしましょう、というふうに、すごくこう、どんどん内側に心が入りがちなところを、逆に、そうではないって今ね、医療的な部分ではがんだったとしても、もちろん、妊活してみましょうよっていうふうに先生方と前向きにお話しできるってこれ、すごく心があったかくなりますよね。
田村: ただ、いつも私、患者さんにお話ししてるのが、一回足を止めて、ご本人にとって大事なことをゆっくり考えてみてくださいってお願いするんですね。
やはりそのときに、やっぱり実は旦那さまと二人で生きていくことがもしかしたら一番大事ってことに気が付かれる方もいますし、いやいや、もう、実は今まで子どもを考えてこなかったけど、自分にとってはとっても大事なことなんだということに気が付いて先に進まれる方もいますし。
やはりがんだから何かを諦めるとか、がんだから模範的な患者さんになるとかではなくて、ご本人の人生観、価値観を、患者さんがよく私に教えてくださるんですけど、自分にとって大事なものが見えてくる、とおっしゃいますね。そのときにもしお子さん、ということなのであれば、一緒に相談して先に進んでいくのが一番なのかなとは思っています。
西村: アンディさん、やっぱりこう田村先生のように心強いアドバイスや、一緒に心に寄り添ってくださる先生方とお会いできると、まただいぶこの妊活へのイメージ変わってくるんじゃないでしょうかね。
アンディ: そうですね。もともと諦めようと思った患者さんもちょっと希望が見えてくると思います。
田村: でも、長い付き合いになってきますので、お子さんもそれこそ6歳、10歳とか、それこそ患者さんとの付き合いも15年、20年の時代ですから、そこまで考えた上で一緒に歩んでいくという感じになってますかね。
西村: 先生が患者の皆さまとお話しするときに心がけていらっしゃることとかありますか?
田村: 実はこの間も患者さんにお話ししたんですけど、「私も人だ」ということですかね。
要は、お医者さんだから偉くて私には何も言えない、じゃなくて、私もおなかも空くしトイレも行くし、ただの人だし、同じように子供を欲しいと思った女性の一人でもありますし、そういった意味で一緒に、同じ目線で、という言い方があれなのか分からないのですが、同じ立場で、同じ女性として考えた上でご本人にとって大事なものがお子さんというふうに見えてくるのであれば、じゃあリスクをどう考えるか。一緒にそれを考えていければ一番良いのかな、と思います。
ただ、そのときに医学的な情報をきちんと分かるように伝えること。私がきちんと説明できないと患者さんも選べないのかな、ということは忘れないようにはしています。
西村: はい、ありがとうございます。
さて、お時間となりました。今日は虎の門病院、乳腺・内分泌外科、田村宣子先生をお招きし、アイジェノミクス・ジャパン代表、理学博士のアンディさんと一緒にお届けしました。来週も先生、よろしくお願いしたします。
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