Vol 60:日米での妊活・不妊治療の違い
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「日米での妊活・不妊治療の違い」
目次
番組情報
放送分:2019年6月23日放送分
ゲスト:東京HARTクリニック 小柳由利子先生、アクロスジャパン 代表 小川多鶴さん
テーマ:「日米での妊活・不妊治療の違い」
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのシルバンさんです。よろしくお願い致します。
番組内容
シルバン: よろしくお願いします。
西村: そして今日もアイジェノミクスのオフィスに、東京HARTクリニックの小柳由利子先生にお越しいただいております。先生もよろしくお願いいたします。
小柳: よろしくお願いします。
西村: さらに、アクロスジャパン代表の小川多鶴さんに、日米の治療の違いについてお話を伺っていきます。小川さん、よろしくお願いいたします。
小川: はい。よろしくお願いいたします。
西村: さあ、今日も人形町にございますアイジェノミクス・ジャパンのオフィスからお届けさせていただきます。シルバンさん、緊張はだいぶ解けました?
シルバン: ちょっと良くなりました。先週より慣れてきました。
西村: 先週も自己紹介などしていただいたり、あと「40代の妊活について」というお話ではシルバンさん、まさに40代で。それから妊活について、というところのね。フランスのお話なんかもいろいろ伺いました。
シルバン: そうですね。
西村: はい、今週もよろしくお願いします。
シルバン: よろしくお願いします。
西村: そして、先週に引き続きまして東京HARTクリニックの小柳由利子先生でございます。先生、よろしくお願いいたします。
小柳: よろしくお願いします。
西村: そして、先生のお隣にもう一人ゲストの方、お越しいただいております。アクロスジャパンの代表、小川多鶴さんでございます。よろしくお願いします。
小川: よろしくお願いいたします。
西村: 小川さんと先生は、普段お会いする機会なんていうのも?
小柳: はじめは、私がちょっと養子ということに興味を持ったのは、結構難渋されている患者さんがうちのクリニックは多くて。養子という選択をもうちょっと、医療と団体ってのは距離が近くなればご紹介とかもしやすいのかな、なんて思って。
で、メールしてみたら、次の週に会いに来てくださって。それで、それから何回かいろいろ養子縁組の現状とか聞かせていただいているんですけれども。
養子縁組を含む妊娠葛藤相談、養子縁組相談
西村: はい。さっそく先生からご紹介ありましたその養子縁組についてとかもね、今日はお話伺っていきたいと思いますが。小川さん、アクロスジャパンのご活動ってどんなことをされてらっしゃるんですか?
小川: アクロスジャパンは養子縁組を含む妊娠葛藤相談、養子縁組相談という相談業務を行っています。
妊娠されても何らかの事情で育てるのが大変難しい女性ですとか、あるいは何らかの事情があって産んだ後でも子育てが難しいという方に対しまして社会資源提供しながら、養子縁組という方法もあるよ、というご支援ですね。
あるいは、先生のところにいらっしゃるように、なかなかお子さんに授かることができないという方に、なかなか家庭を与えることが難しかったお子さんを紹介して新しい家族を作っていただくという支援もしています。
西村: アクロスジャパンは立ち上がって何年目でいらっしゃるんですか?
小川: 今年ちょうど10年です。
西村: ああ。10年あるとそれだけいろんなケースというか、いろんな方々とのつながりというか、そういうことがあるんじゃないでしょうか。
小川: はい、そうです。
西村: シルバンさん、さっそくなんですけれども、まず一つ目の質問をシルバンさんからお願いします。
知る権利を尊重してくれる米国の治療前コンサルテーション
シルバン: はい。小川さんに聞きたいのは、いろんな話を聞いたんですが、とりあえずアメリカで不妊治療が始まる前にコンサルテーションというものがあって、すごく高いと聞きましたが、それは価値があるのでしょうか?
小川: はい、ありがとうございます。実は私もアメリカで長く不妊治療をしたんです。
シルバン: そうですか。
小川: そのときにだいぶお金を使ったんですが、当然コンサルテーションもすごく高いんです。ただ、コンサルテーションをするにはそれだけの価値が確かにあります。
その理由というのは、最初のコンサルテーションでとってもいろんな選択肢をまず与えてくれます。日本ではそれが無いというのは私は帰国してから知ったんですけれども、一番最初に向こうでやるコンサルテーションは、あなたの年齢がいま何歳、ご主人の年齢がいま何歳、なのでいま自然妊娠する確率はだいたい何パーセントぐらい。けれども、ここでこういう治療をするとここはパーセンテージが上がる。この治療にするともっと上がる。だけれども、お金はこれぐらいもっと上がる。そして、でもこのお金を使っていまここで養子縁組をすると、このお金はここに使ってこの分セービングしたので、その後は子どもの養育費に使いますよ、というようなすごく大きなライフビジョンをその場でプレゼンテーションしてくれます。
シルバン: へえー、そうですか、すごいですね。本当にはっきり言ってますね。びっくりしました。私の経験で、日本ではそんなことが無いですね。
小柳: 日本の場合、選択肢が無いということもあるんですけれども、初めに妊娠しない可能性というのを想定しないで治療が行われるので、あとから予想外の出費になって結局諦めなきゃいけなかったとか、そういう予想外の事態というのがやっぱり起こってくると思うので、そういう下準備というのはすごく大事だと思います。
それがどうして日本では無いのかというのが疑問なんですけれども、その辺はどのようにお考えでしょうか?
小川: アメリカは、多分ですけれども、皆さんが自分の権利がどうあるか、というのをとても知っている国だと思います。
日本だと、先生とかに対してはなかなか聞きづらい、というのがたくさんあるように、私から見るとあるんですが、アメリカではどんどんいろんなことを聞きます。なので、どれぐらいの確率で妊娠しないかとか、お金がどれぐらいかかるかっていうのはどんどん聞いていくんです。
もしそれを教えてくれなければ、私の権利を教えてくれなかったということになるので、あとから例えば訴訟が起きたり、あの先生のせいでこうなってしまったということにもなりかねない。なので、初めからちゃんと提案があるということと、あとは権利の主張はちゃんとできる国なので、自分がどういう選択肢があって、いつ不妊治療をやめるかというのを自分で決めなさいよ、という考えでもあります。
小柳: 日本の場合は、まず初めに受診して話をするのは医者なので、医者からいきなり会った人に妊娠できないかも、みたいな説明をされるとやっぱり患者さんもショックだし、中には怒る患者さんもいらっしゃるので、医者からは言いにくい部分があるんですけれども、そういうときに専門のコーディネーターさんだったりがいらっしゃれば良いのかな、と思うんですけれども。
小川: はい。アメリカは、その不妊治療のクリニックの最初のコンサルテーションのときに、すでにいろんなテストが済んでます。その実験で関わってらっしゃる専門家の方、いわゆる培養士の方ですとか、あるいはコーディネーターの方、それからもちろんお医者さまもカウンセラーもですけれども、皆さんがそれぞれに出てきて、それぞれの専門的なところの見解からお話をくださるので、先生が全てを言わなきゃいけないということは無いんです。
だから、患者もすごく納得しやすいですし、専門家の方からそれぞれの見解のところであなたはこういう卵ですとか、こういう精子です、というお話があるので、お医者さまが全部負担を強いられるということが無いのかなって思います。
シルバン: 日本で、私の経験で、情報はあちこち出てるんですけれど、やっぱり最初の方じゃなくてすごく分かりづらい。全部合わせるのは、イメージとか作れません、日本だったら。
小川: 私もそうだと思います。
州によっては不妊治療じたいを良しとしないことも…
小柳: 日本でも、結構そのクリニックによって治療方針が異なったりすると思うんですけれども、アメリカでもやっぱりそのクリニック、またはその州によってとか、説明が違ったりというのはあるんでしょうか?
小川: はい、州によって。私もカリフォルニア州しか知らないんですけれども、基本的な話では全米の州それぞれ法律が違うので、それぞれちょっと違うのかな、というところと、あと、州によっては妊娠というものに対してとても神聖なものと捉えているところもあるので、不妊治療自体を良しとしない州があるのも事実です。
あと、ニューヨークなんかだと保険が適用されやすい、昔からそうなので。もっと不妊治療のところも保険適用だとこうですよ、というお話があったりして、それぞれおそらく違うと思うんですが、ただ一つ言えるのは、全米すべては、まず患者の持つ権利をちゃんと私たちが尊重しているかどうかっていうのをクリニックはケアしてくれてるかな、というのはあります。
だから、どこでどんなふうに伝えるかというのは、常に患者がその時点でどういう情報を求めているかというのに即してちゃんと答えていってくれてるのかな、と思います。
西村: さあ、引き続きお話を進めてまいります。ゲストは東京HARTクリニックの小柳由利子先生。それから、養子縁組相談事業をされているアクロスジャパン代表の小川多鶴さんにご出演いただいております。シルバンさんも引き続き、ぜひよろしくお願いします。
シルバン: はい。よろしくお願いします。
西村: さて、先生。お話の続きなんですが。
養子縁組もオプションの一つと考えて治療費の見通しを立てる
小柳: 私が小川さんと以前話していてすごくびっくりしたのが、アメリカだと治療をスタートする前にまずファイナンシャルプランナーが出てきて説明をする、というのが驚いたんですけれども、これはどういったタイミングでどういった説明を行うんでしょうか?
小川: はい。不妊治療は、多分日本よりもとっても、アメリカは高くってですね。私は特に年齢が超えていたというのもあるので、当時クリニックがオファーするパッケージを適用できなかったんです。
若い方だと4回、例えばIVFをしてこれだけのパッケージ。もしできなかったら次にまたディスカウントして、みたいなのがあるみたいなんですが、私はそれに適わずで、もうフル全額を自分で払わなければいけない、というときに。
小柳: 3回パックを使ったとかっておっしゃってませんでしたっけ?
小川: 最初の3回パックは採卵に関しての3回パック(笑) いろいろそういうパッケージがいっぱいあるのを説明するのがファイナンシャルプランナーさんで、これを分割にして払うのはこうできますとか、あと、ここにもしこうやって顕微が必要になったらここだけかかりますとか、オプショナルでこういうのがあるとか、そのあと凍結すればこれがいくらかかりますとかいうのを、すごく細かく相談に乗ってくれて説明してくれるのがファイナンシャルプランナーさんで。
かつ、そのあともしできなかったときに養子縁組をここで進めばこれだけのセービングができて、その分を養子縁組の費用に充てることができます、とかいう話までしてくれます。
小柳: 日本だともう養子とかいう話は最後の最後になってからしかしないんですけれども、それを最初に持ってくるっていうのはすごいな、と思いますね。
小川: やっぱり、さっきお話しした通り、患者の持つ権利って何かっていうのがとっても尊重されている国なので、一番最初からあなたはこれぐらいの確率だってお話と同様、私たちにも養子縁組によって子どもを迎える権利もあるよ、ということをちゃんと提示する、というところなんだと思います。
小柳: 逆に、それだけ珍しくないということですよね。その養子という選択も。
小川: そうですね。あちこちにごろごろあるのと、それから、子どものときから学校のクラスで養子縁組のクラスがあるんですね。教員のマニュアルにもあるし、不妊治療のクリニックの先生に向けたマニュアルもありますけれども、どういったことをカウンセリングするかの中に必ずアダプションという言葉が入っていますので、みんな社会の中で養子縁組ということは家族の作り方の一つだと捉えています。
専門分野以外のことを専門外の者が話すべきではないという考え方
小柳: あと、培養士さんとかカウンセラーさんも最初に登場するっていうふうに聞いたんですけれども、どんな説明をされるんでしょうか?
小川: はい。出てくる登場人物はとっても日本より多分、多いと思います。私は日本で治療してないのでよく分からないんですが、出てくる方を挙げていくと、まず不妊カウンセラーさん。それからファイナンシャルプランナー。培養士さん、ラボにいる方ですね。それともちろんドクターと、それから不妊治療コーディネーターと呼ばれる方がいらっしゃったり、あと凍結すると決めたときには凍結専門のラボの方が出て来られますし、当然一番最初に行ったときにはクラークの方とまず基本的なお話をしてカルテを作られるときも30~40分かけてすごい細かいことを聞かれたりとか。登場人物すごく多いです。
小柳: それぞれ役割がちゃんと分かれていて、なんかマニュアル的なものもあるんでしょうか?
小川: 多分それはあると思いますけれども、専門分野以外のことを専門外の者が話すべきではないという、多分、倫理綱領がしっかりしているとは思います。
シルバン: 逆に、話せる相手はすごく何人かいるので難しくないですか? 誰に話せばいいか。
小川: 私が実は選んで、あの方と話したいっていうこともできますけれども、専門のところが出てきたときにはあちらから出てきて、こんにちは、私は培養士の何々ですとか、私はコーディネーターの何々ですというふうに向こうから来てくださるので、何のときにはどの方に聞いていいのかというのが分かるようになってます。
シルバン: そうですか。自分が悩みが出てくるときにも、みんなに話したことがあるので、誰に話したいかはもう分かりますね。
小川: 誰に聞いても、あっ、これはこの方だから、って言ってつないでくれます。
シルバン: ああ。ありがとうございます。
小川さん、もう一つ。いまの話を聞きながら、ちょっと印象が出てきました。アメリカでは家を買うときもプランナーとか出てるので、なんか不妊治療とかのことは商品みたいな感じがしますね。日本はもうちょっと人間の方を見ている気がしますが、どう思いますか?
小川: そうですね。明らかにするという面では確かにとっても聞きやすいですし、あとから何かよく金額が分からないけどこの治療をしてしまったっていうことは、あんまりアメリカもヨーロッパもですけど同じで、無いのかなあとは思いますが、確かにすごい画一化されているので無機質だ、要するにコールドだって感じる人もいるかも分からないです。ただ、あとから揉めるっていうことは無いのかなとは思いますし、私の経験ではいま日本で養子縁組の支援をしていますが、うちの団体に来られる子どもを迎えたいと願う養親さん、親御さんは皆さん100パーセント不妊治療をしてからうちに来られますが、その方々がみんな一様におっしゃるのは、不妊治療何年やったけれども、これだけお金を使ったけれども、誰も養子縁組っていう選択肢を教えてくれなかった、という怒りを持ってお越しになる、というところは、やっぱりもう少し、ひょっとしたら患者側から見ると明らかにしてほしかったのかな、っていう気はします。
シルバン: なるほど。
小柳: いまのお話をお聞きすると、一見アメリカは役割が細分化されていて無機質な感じがするんですけれども、でも、その良いところも取り入れつつ、日本なりのやり方を探していくというのが良いのかなと思います。
西村: 日本もそうだし、海外のいろんな状況をケースバイケースというか、いろんな方々がいらっしゃいますから、そういう方々のお声と、先生方のお声と、いろんな情報を集めていきたいですよね。そこからまた新しい道というのが見えてくるんじゃないでしょうかね。
小柳: はい。
西村: さて、お時間となりました。今日は先週に引き続きまして東京HARTクリニックの小柳由利子先生。そして、アクロスジャパン代表の小川多鶴さんをお招きし、アイジェノミクス・ジャパンのシルバンさんと一緒にお届けしました。
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