Vol 68:EMMA検査・ALICE検査 JISART臨床研究で得られた知見
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「EMMA検査・ALICE検査 JISART臨床研究で得られた知見」
目次
番組情報
放送分:2019年8月18日放送分
テーマ:「EMMA検査・ALICE検査 JISART臨床研究で得られた知見」
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの代表であり、理学博士のアンディさん、ラボマネージャーであり、工学博士のトシさん、そしてもう一方、アイジェノミクスより石井清子さんにご出演いただきます。よろしくお願い致します。
番組内容
(全員): よろしくお願いします。
アンディ: 今日のテーマは「JISARTの臨床研究 EMMA検査 / ALICE検査について」です。
西村: はい。今週もアンディさん、トシさん、よろしくお願いいたします。
(二人): よろしくお願いします。
西村: そして、なんと入社1日目のときにこのアイジェノミクスの本社でご出演いただいた。
トシ: 忘れもしない(笑)
西村: 石井さん。今週、よろしくお願いします。お久しぶりでございます(笑)
石井: あ、お久しぶりです。よろしくお願いします。
西村: 入社1日目のときにラジオ出演はどうでした?
石井: 突然だったので、あの、よく分からず、どう進めて、そんな感じです。
(全員): (笑)
西村: でも、もう入社されてから数カ月経ちましたけれども、いかがですか?このオフィスの環境は、慣れてきました?
石井: そうですね。1年なんですけど、だいぶ慣れて楽しくお仕事をさせてもらっています。
西村: ちなみに石井さん、どんなお仕事をされているかリスナーの皆さんにお話しいただけますか?
石井: はい。臨床検査技師で、主に精度管理の方の担当をさせてもらっています。
西村: はい。よろしくお願いします。
石井: お願いします。
西村: ではアンディさん。今週のテーマから。
EMMA検査/ALICE検査のおさらい
アンディ: そうですね。実は今、JISARTという日本生殖補助医療標準化機関のクリニックさんと、EMMA検査/ALICE検査に関しての臨床研究を進めているところなんです。その進捗の報告と、実際どういう結果が出ているか。まあ中間報告なんですけれども、ちょっと患者さんの皆さんに紹介しようと思っています。
まず、もう一度簡単にEMMA検査/ALICE検査について説明をしようと思います。
トシ: ちょっと私から。このEMMA検査/ALICE検査という検査なんですけれども、まずEMMA検査。これは何かというと、子宮内の組織を採取して、その子宮内に存在している細菌叢(そう)、どんな細菌がいったいいるのか、これを網羅的に調べます。普通だとこれ、細菌培養とかして調べるんですけども、私たちのこのEMMA検査は次世代シーケンサを使って、検出された菌、全て見ます。全てお出しするのと同時に、割合もお出しします。
これ、実はEMMA検査、私たち、子宮内の細菌叢を網羅的に見るだけではなくて、ラクトバチルスが多い方が良いと思っているんですね。このラクトバチルスが今のこの細菌叢で増えやすいかどうかまで見ています。
動物の世界では人間がトップにいる訳ですが、細菌の世界でもヒエラルキーは存在していて、私たちの本社ではマイクロバイオームのチームが得た結果から、この患者さんの細菌叢だとラクトバチルスはどうなるかというのを見て判断して、必要に応じて抗生剤を提案、推奨するといったことを行っています。これがEMMA検査でございます。
もう一つ、ALICE検査。これは、感染性の慢性子宮内膜炎に強く関与していると言われている病原菌10種類をあらかじめ挙げて、これがいたのかいなかったのか。もしいたら、何パーセントいたのか、と。私たちは、これは10パーセント以上存在していた場合は、もうこれは治療した方が良いと判断して、その菌に特化した抗生剤を提案するというのをやっています。
EMMA検査/ALICE検査の臨床研究を進めています
アンディ: そうですね。ですから、今回のJISARTという、フルネームは日本生殖補助医療標準化機関。これは法人ですね。臨床研究をやりたいというご要望をいただいて、今、研究を進めています。
JISARTというのは全国30施設が加盟している施設、機関です。そちらは全国、大きなクリニックも結構入っているところなんですけれども、こういった形で臨床研究を時々行っているんです。
今回の研究も理事長の蔵本先生とか、品質管理部長の神谷先生がこの臨床研究で乳酸菌の検査をしたいということで、細菌の、実際、着床不全の患者さんは何割がその菌の環境が悪いか、というようなことを調べたり、乳酸菌の膣剤を治療して、もしくはその病原菌が入っている場合は抗生剤の治療と乳酸菌の治療をすることによって実際妊娠率が上がるかどうか、というような有効性の検査の研究を進めようとしているところですね。
実際の研究はまだ終わってはいないのですが100数十検体は集まっていて、結果もある程度出てます。それについて少しお話をしようと思っています。(*2019年8月時点)
西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。人形町のオフィスよりお届けしております。さて。はい、トシさん。
ラクトバチルスを増やせば妊娠率が上がるんですか?
トシ: ちょっと話したいことがあって。そもそもこのEMMA検査/ALICE検査なんですけれども、これを出した経緯として、本社の方で、これは論文になっているんですが、そもそもラクトバチルスが9割以上子宮内に持っている方のグループと持ってない方のグループを比較したときに、9割以上あった人たちのグループが着床率、妊娠率、生児出産までいく割合を見たときに多かったんですね。
じゃあラクトバチルスが多い方が良いんだ、と見がちですよね。でも、ここで私たちが持ってないデータは、じゃあラクトバチルスは、持ってなかったグループの人たち、増やしてあげたら妊娠率上がるんですか? ここは持ってない訳です。ここは調べなきゃいけない、と。もう一つ言わなきゃいけないのは、ラクトバチルスが無くてもちゃんとお子さんも産まれてるし、そういうことを言わなきゃいけない。
こういった中で、このJISARTのグループの中で臨床研究という形で今、調べていこうとしている細かい項目がある訳です。これをちょっと石井さんの方からご紹介いただこうかなと思います。
石井: 主に着床不全の患者さまを対象に検査をしていただきまして、その結果アブノーマルで陽性になった患者さんを推奨治療によって治療していただき、その後にラクトバチルス菌で加療していただくという形になっています。
その結果、再検査。また、そのアブノーマルの患者さまの再検査をしていただいて、その効果を見て、効果が良ければその後移植して結果を見るという感じで。その後、妊娠率が向上しているかっていう流れで今見ている経過の途中です。
アンディ: そうですね。やはり着床不全の患者さんがいれば、先生方もこれはどういう原因で着床不全になっているかというのを調べたいですね。今回は特にその菌に対してEMMA検査/ALICE検査を使って、その着床不全の患者さんの中には何割がその菌の環境があまりよろしくない、ということを調べようということで。
また、推奨治療があって、抗生剤とか乳酸菌の膣剤ですね、治療した後にちゃんと戻るかどうかですね。推奨してるから、戻るかどうかも調べるのが大事で。じゃあ戻った後に、元々着床不全の人が妊娠できるようになるか、なるのであれば何割の人がなるか、というような臨床研究を進めるのが今回の目的です。
研究が始まってまだそんなに時間が経ってないんですけれども、検体も全国から集まってきてはいて、ある程度分かってきたことがあるんです。これをちょっとお伝えしたいと思うんですが、今のところ分かってきたことを。
西村: はい、じゃあ石井さんお願いします。
子宮内細菌叢が良好な状態の方は全体の4割
石井: 今、まだ中間の途中なのですが、ノーマルといいまして、ラクトバチルス菌が90パーセントいる良好な状態の方が全体の4割。アブノーマルといって陽性の方ですね、こちらが2割。あと、ウルトラロー、ほとんど無菌の環境の方が3割となっておりまして。あと、ALICE検査の方で感染性子宮内膜炎の原因となる菌の陽性の方は数パーセントで、まだそんなに多くはない状態です。
なので、このアブノーマルという陽性の2割の方を今度再検査をして、またその結果に基づいて経過を見ていくという形になっております。
アンディ: ということは、ノーマル以外はどういうふうに治療していくかというのは、多分残りの研究で分かってくるかと思うんですね。ただ、今は検査して結果が分かってはいるんですけど、これからは調整、治療した後にちゃんと乳酸菌が増えてくるかどうかです。それから、この検査がちゃんと妊娠に役に立っているかどうかを、今後の予後調査でやっていきますね。
西村: トシさんもこのデータを実際に、まだ途中とはいえ、見られたときどうお感じになりました?
ALICE検査の陽性率は施設の治療方針によって違いが
トシ: これね、ちょっと面白いなと思ったのが、やっぱりJISARTってグループの中だと、皆さん施設として多分ISOをとられてるんですよね。そうすると、やっぱりレベルの高いクリニックさんの集まりなイメージがあって。一方で、私たちはそのJISARTさんには臨床研究でやっていて。そうではなくて、全体の検査、全体のクリニックで出している私たちのEMMA検査/ALICE検査の方も統計をとっている訳なんですけれども。
これを比較すると面白いのが、今ちょっと僕見ててですね。その子宮内に病原菌、私たちがいたら良くないなと思う病原菌がいる割合というのが、JISARTのグループだけ見ると数パーセントなのに、全体で見ると、何パーセントですかこれ? 10パーセント? 結構、数パーセントから10パーセントに増える。この辺、私個人的には気になるところですね。やっぱり治療方針としてそういったクリニック施設の偏りとかもあったりするのかなあ、とか思ったり。ちょっと想像してしまいますね。
西村: 石井さんはどうですか?
トシ: ここから気になる?
石井: そうですね、JISARTの各施設に関しては、抗生剤を何を使ったかというのも今調べていまして。それによって、クリニックによってその結果の差が出てきているので、良い結果が出ているというか、こう、無菌状態のところは結構抗生剤を使われているところが多いとか、いろいろそういった傾向も見られています。
同じ乳酸菌でもビフィズス菌では着床しなかった
トシ: あと、JISARTのクリニックさんで面白い話を聞きましたね。ラクトバチルスの膣剤っていくつか種類があるんですけど、ある膣剤を使っていて、なかなかこうラクトバチルスが生着しなかったんですけれども。
アンディ: 別の種類だったら付くっていう話ですね。
トシ: 別の、そうですね、付くっていう。
アンディ: あともう一つ面白い話、実はこのJISARTの研究で分かったのがあるんです。何でもないから、それは絶対こうとは言えないんですけど。
先生方から聞いたのは、ビフィズス菌というのは腸内菌としては非常に良いと言われているんですけど、ただ、検査してビフィズス菌は98パーセントとか。
トシ: 子宮内の?
アンディ: そう、子宮内の。患者さんが妊娠できない、着床しないんですね。それで、治療することによってラクトバチルス菌を膣剤で増やしてあげると着床して妊娠した、という例を聞いたんですね。ですから、乳酸菌だからどれでも良い、という訳ではないですね。
トシ: ビフィズス菌が悪いかもしれないって、ちょっとこれは、あれですね。
アンディ: はい。可能性はあると聞いているんですけどね。腸には良いかもしれないですけど、子宮には良い菌という訳でもないですね。
トシ: 確かに、ラクトバチルス菌ってなんで子宮内にあったら良いかって、これは仮説でしかないんですけど。ラクトバチルス、これ、乳酸をどんどん出して酸性環境に保つと言われている。一方で、ビフィズス菌は中性で生育するものなので。そうすると、なんで中性じゃ駄目かと言うと、病原菌ってだいたい中性か弱アルカリ性で生きていくんですよ。
だから、ラクトバチルスだと酸性環境にするから、病原菌が入って来ても防御してくれる。でも、ビフィズス菌だと中性環境を作っちゃうので、入ってきたら一緒に増えちゃう。そういったのも関係しているかもしれませんね。いやあ、これはちょっと興味深いですね。
アンディ: 後は、このラジオの番組を聴いてて、EMMA検査/ALICE検査も理解できた患者さんもたくさんいるといると思うんですが、一つですね、この業界でも先生方でも誤解されている方がいるそうですけれども、要は、治療するために乳酸菌が少ない場合、治療するために飲む、ですね。
トシ: ああ、菌をね。
アンディ: 内服で治療できるという勘違いされてる先生もいて、患者さんもいる訳です。飲めば、子宮内膜の乳酸菌が増えてくるという。ただ、腸にはいくんですけど、子宮にはいかないですね。
トシ: ちょっと遠いですね。
アンディ: そこをかなり勘違いされている先生もいらっしゃるので、このラジオでちょっと皆さんにお伝えしたいと思っています。
トシ: そうですね。そういう流れではちょっと一つ、私、よく言われたのは、抗生剤をよく使う検査じゃないか? って言われるんですけど、僕たちの検査って、抗生剤が必要かどうかを見極めて提案しているので、使わないケースも半分ぐらいあるし。そうそう、その辺をちょっとこのラジオを通して伝えたいなと思いました。
西村: さて、お時間となりました。今日はアイジェノミクス・ジャパンのアンディさん、トシさん、そして石井さんと一緒にお届けいたしました。ありがとうございました。
(全員): ありがとうございました。
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