Vol 16: これからの生殖医療
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「これからの生殖医療」。
番組情報
放送分:2018年4月22日放送分
ゲスト:なかむらレディースクリニック 院長 中村嘉宏(よしひろ)先生
テーマ:これからの生殖医療
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術を紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの法人代表であり、理学博士のアンディさんです。アンディさん、よろしくお願い致します。
番組内容
アンディ: よろしくお願いします。今日はスタジオに大阪から、なかむらレディースクリニックの院長、中村嘉宏先生にお越しいただいています。これからの生殖医療について、お話をいただきましょう。先生、よろしくお願いします。
中村: よろしくお願いします。
西村: アンディさん、今週もよろしくお願いいたします。
アンディ: よろしくお願いします。
西村: こう一気にね、急にこう寒くなったなあって今週思ったら、また暖かくなって。
アンディ: そうなんですよ、だから、どういう服着ていけばいいか全然分からなくなってきたんです。
西村: でも桜のシーズンは東京は終わりましたけれども、これから新緑の季節というか、初夏に向かってすがすがしい日が続きますね、これからきっと。
アンディ: そうですね、楽しみです。
西村: さて、今週はですね。今、冒頭でアンディさんがご紹介いただきましたけども、大阪からゲストの方がお越しでいらっしゃるんですよね?
アンディ: そうですね。なかむらレディースクリニックの院長、中村嘉宏先生に来ていただいてます。
西村: 先生、改めてよろしくお願いいたします。
中村: よろしくお願いします。
西村: まずは、聴いていただいているリスナーの皆さんに、先生のなかむらレディースクリニックについてご紹介いただけますか?
中村: はい。わたしのクリニックは大阪府吹田市というところにありまして。開院してまだ三年なんですけれど、その前に20年ほど東京の加藤レディスクリニックを建てられた加藤修先生が大阪院として設立されたクリニックで、合計23年の歴史を持っているクリニックです。
西村: そうなんですね。今、ホームページ拝見しております。なかむらレディースクリニック、検索されるとき、なかむらのところ、ひらがなでございます。なかむらレディースクリニック、ぜひ皆さんもホームページご覧いただけると嬉しいです。さて、ホームページにね、「なかむらレディースクリニックでは、自然周期での体外受精を中心としたこころとからだに優しい生殖医療を行っています」というふうに書かれていて。スタッフの方も非常に多いんですね。
中村: たくさんおります。
西村: 何人ぐらいいらっしゃるんですか?
中村: 全部で、だいたい40名ぐらいおります。
西村: もう、万全のスタッフの方々の体制で。
中村: 万全の体制で。
西村: 40名。そして今、拝見するとスタッフの40名の皆さんお顔も出て、写真もありますけれども。看護部、それから培養部なんていうのもあったり、事務部の方、いろいろ出ていらっしゃいますけれども、どういうふうに皆さんご活躍でいらっしゃるんですか?
中村: そうですね、まず特徴的なことなんですけれども、看護部の方はもう手術室勤務の経験が長い者、当院では卵管鏡下卵管形成術という手術を行っていますので、麻酔管理に長けた看護師を集めております。培養部につきましては13名おりまして、それぞれ厳しい試験に合格した者ばかりです。院内独自の基準を定めてまして、例えば顕微授精ですとか、一つの技術をするのにある一定の正確さ、そしてスピードでこなせるというチェックポイントを設けてまして。それを合格した者でしかその技術を受けられないという、言ってみますと板前修業より厳しい、一人前になるのに四、五年かかる厳しいテストを設けております。ですので、患者さまの大事な卵、特に自然周期ですと卵の数が限られてきますので、一個一個大切に魂を込めて扱うよう心がけております。事務部の方はもう、患者さまの支えになる、寄りそって患者さまに安心して来ていただけるよう努力しております。
西村: そして、場所は大阪でございますけれども、具体的に大阪のどの辺りでいらっしゃるんですか?
中村: 吹田市というところでありまして、万博博覧会が行われたところで、太陽の塔で有名なところです。大阪市とは、北摂地方ですね、大阪府の北部とのジャンクションになるところですね。江坂駅の近所でクリニックをしております。
西村: 大阪の方、なんか元気なイメージがあって。スタッフの皆さんもやっぱり?
中村: 元気です。
西村: 先生、今、そうでもないですよね?
中村: いや、少し緊張しております(笑)
西村: このスタッフの皆さんと共に中村先生もご活躍でいらっしゃると思うんですが、アンディさん。これからの生殖医療、こちらについて先生とお話進めたいんですよね。
アンディ: そうですね。先生とは前回お会いしたときにも、今の日本の不妊治療の現状とか問題点についても少し意見を言っていただいたんですけども、やはり今、日本の平均の妊娠率といいますか、その不妊治療の平均の妊娠率としては海外に比べてそれほど高くないところはあるんですよね。
中村: 残念ながらそこまで高い訳じゃなくて。体外受精と言いますとやっぱりもう万能の治療、100パーセント妊娠できるんだって思われてる方もいらっしゃるんですけど、特に年齢によって妊娠率は変わってくるんですけど、30代後半ぐらいになってきますと一回あたり、卵一個戻して妊娠できる確率というのはもう、意外と皆さま想像するより低いかもしれないです。25パーセントぐらいが平均値じゃないかなと考えております。やっぱりまだ改善の余地があると考えているんです。
アンディ: この間先生と話したときに、もちろんその卵というのは受精卵、もしくは胚と言いますが、胚の部分と子宮内膜の部分、両方改善する余地があると考えているんです。じゃあまず、この番組の前半は受精卵、それから胚についてどういうふうに改善していく方法があるかについてお話をいただきたいと思います。
中村: わかりました。胚の改善ですけれども、まず一つ。非常にきれいな見た目の胚、現実で今子宮に戻す胚。胚というのは受精卵が成長していったものですけれども、それを戻すのにどうしているかといいますと、顕微鏡で観察してその見た目だけで。言い方悪いかもしれないんですけど。見て形態が良いというんですけれども、見た目の良い胚を戻している訳です。もちろん、見た目の良い胚というのは良い胚である率は高いんですけど、そういう見た目の良い胚を戻しても25パーセントぐらい。30代後半になってくると、必ずしも期待されるような数字ではないんです。人間もそうですけれども、見た目だけでも分からないところがあるんです。そしてその受精卵での問題ですけど、一番問題なのは偶然に起こる染色体異常です。それがあるか無いか、染色体異常があると着床しない場合が多いですし、着床したとしても流産してしまう可能性が高いんです。染色体異常をどうやって調べていくか、現在のところ日本では倫理的な問題で行われてはいないんです。海外で行われているPGSと言う方法があります。
西村: PGS。はい。
中村: Preimplantation Genetic Screeningです。そういう方法なんですけれど、まあちょっと舌噛みそうな名前で、実際噛んでたかもしれないんですけれども。要するに、胚細胞の状態ですね。胚細胞と言いましても受精後だいたい五日間ぐらい胚を、受精卵を育てていくと胚盤胞という段階になります。胚盤胞というのは指輪の例えで言いますと、リングと宝石がありますでしょう、この宝石の部分が赤ちゃんになる部分で、内部細胞塊、外の部分が外部細胞塊、TEとかいうんですけど、そこの外の部分は胎盤になるんです。リングの部分が胎盤になって、宝石の部分が赤ちゃんになる。ここの胎盤の部分、そこから細胞を何個か採ってきて、そこからDNAを抽出しまして、それは次世代シーケンサという、最近できました、急速に発達してきている機械にかけて。染色体異常があるか無いかというものを調べていく。染色体というのはすごく難しいような感じがしますけれども、男性が46,XY、女性が46,XX、まあXとかYというのは性染色体というんですけども、男性、女性を決めている染色体です。46というのは22組の染色体といいましてこれは男女共通のものです。その数がすでに異常がある胚細胞、胚盤胞というのは結構混じってくる訳なんです。見た目が良くてもそういう染色体に異常がある卵というのが混じってきます。それはどれぐらいの割合かと言いますと、30代後半、あるいは40代ぐらいになってくると、もう4個のうち1個が正常、3個が異常がある。
西村: その数字を聞くとちょっとびっくりしてしまう数字ですよね。
中村: 現状どうしているかと言いますと、もう卵を戻して妊娠するかしないかの結果を見て判断するしかない。これがやっぱりちょっと諸外国に比べて日本の妊娠率が低い原因じゃないかなと私は考えてます。
アンディ: 先生がおっしゃる通り、海外でもこのPGSの有効性が確認されているので、日本でも学会では今後解放する方向には向かってはいますよね。
中村: おそらくそうじゃないかなと考えておりまして。現在、日本産科婦人科学会の方が今後の解禁に向けてスタディ、臨床研究を行っている、有効性についての研究を行っている段階です。
西村: 「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~」。今日はゲストになかむらレディースクリニック院長の中村嘉宏先生にお越しいただいております。先生、後半もよろしくお願いいたします。
中村: よろしくお願いします。
アンディ: まず前半の方は胚のお話、胚の確認のPGSの方法は導入できたらいいなという話をいただいたんですけども、後半ですね。じゃあ子宮内膜、要は種を植えるために土の方も整えないといけない、という話にはなると思いますけど、子宮内膜に関して先生、従来の方法について少しご説明ください。
中村: わかりました。従来、胚盤胞移植が日本では一般的なんですけれども、凍結して、融解して、子宮内膜のコンディションを整えて卵を戻しているんですけれども、要するに何日目に戻すか。胚盤胞というのはだいたい排卵後五日目の卵なんです。子宮の内膜も排卵後は刻々、日々状態が変わっていきます。排卵後五日目の卵を、排卵後五日目の状態に調整した内膜に戻してたんです。卵がすごく良いのにどうしても妊娠しない方もいらっしゃるんです。この着床ウィンドウ、インプランテーションウィンドウというんですけど、着床の窓ですね、日本語にすると。これが普通は五日目なんですけれど、それがちょっとずれている方も中にもいるのは最近分かってきました。
アンディ: 着床の窓という概念は昔からあったんですけど、正確に測る方法はなかなか無くて。例えば日付診というものもあるんですけど、病理で見るので人によって個人差が出てくるんです。ですから正確性は疑われたりはするんですけれども、これも番組で紹介したことがある。
西村: そうですね。着床の窓についてはね。ぜひ、何だろう? とお気付きの皆さんは、この番組はポッドキャストもありますので、繰り返し聞いていただけても良いと思うんですが、やっぱりその着床の窓のお日にちとか時間とか、人によって本当にすごく細かく違うんだな、って話が以前ありましたよね。
アンディ: そうですね。やはり、人の着床の窓は人によって反応が違うので。黄体に対する反応が違うので、子宮内膜の中でいつ整うか、人によって若干時間がずれたりはするんですね。あと、その窓が長い人と短い人がそれぞれいるので、やはり正確に測らないと移植するタイミングは分からないですね。
中村: 今まで、だから一律五日目に戻すのが一般的だったんですけど、それも個別化ですね。これもやはりゲノム医学の進歩で着床のときに働き出す遺伝子というのが分かってきまして、その遺伝子がちゃんと五日目に働いているかどうか。平たく言うと、それを調べていって、ずれているかずれていないかを。80パーセントの方は五日目で大丈夫なんです。二割ぐらいの方が五日目からずれてまして、15パーセントぐらいが後ろにずれてる、残りが前にずれてる方。それを調べる検査がERA検査ですね。着床の、子宮内膜受容能あるいは着床の検査、それをすることによって個別化できる検査。
アンディ: ちょっと補足ですみません。先生がおっしゃった五日目というのは、黄体を打ってから五日目ですね。先生、実際このERA検査を導入されてから、実際の体験談を少しいただけますか?
西村: ぜひ、お願いします。
中村: 導入するまでは、まだ実感できませんし有効かどうか分からなかったんですけど、何回良い卵を戻しても着床されない方はやっぱりいらっしゃいまして。で、ちょっとこういうのがある、ということを聞きまして導入しました。割にこれ、本当にシャープに効きまして。そうですね、かれこれ6回良い卵を戻して妊娠されなかった方で、しかも40代前半ぐらいの方なので一回あたりの妊娠率そんなに高くないんですけれども、一日ずれてらっしゃって。その日に合わせて戻したら見事に妊娠されまして。私も本当にほっとした、と言ったら言い方悪いかもしれないですけど、本当にこういうゲノム医学の進歩なんだな、と。シャープな検査なんだなと実感いたしました。
西村: アンディさんもこのERA検査について嬉しいお声、先生方から本当に多いですね。
アンディ: そうですね。本当にこういう声を聞くと、やはりこの仕事をして良かったな、と思いますね。
西村: さて今日は、なかむらレディースクリニック院長の中村先生とお話進めてまいりました。先生、ありがとうございます。
中村: ありがとうございました。
西村: そしてアンディさん。アイジェノミクス・ジャパンのツイッターなどもあるんですよね?
アンディ: あります。
西村: この番組に関しては「#妊活ラジオ」としてつぶやいておりますので、過去の放送、ポッドキャストなどもお探しになるときもツイッターご活用いただけるとありがたいです。それから、この番組への先生方へのメッセージやリクエストというか、こんな話を聞きたいんだけれども、なんていうそんなお声がありましたら、ぜひ。FM西東京のホームページにメールフォームがございます。そちらからぜひ、番組へのメッセージも書いていただけると、アンディさん。お答え、しますよね?
アンディ: はい、もちろん。
西村: ぜひ皆さんのメッセージ、お待ちしております。さて、次回は今週に引き続き、なかむらレディースクリニック院長の中村嘉宏先生にお越しいただいてお話をしていきます。先生、来週もよろしくお願いいたします。
中村: よろしくお願いいたします。
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