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これからの生殖補助医療(ART)について

これからの生殖補助医療-イラスト2

こちらの記事では、日本で行われている基本的な生殖補助医療(ART)についての情報をご紹介します。

生殖補助医療(ART)とはなにか?

生殖補助医療(ART)では、卵子や精子を体から取り出し(採精・採卵)、体外で受精させます。受精卵を培養すると、細胞分裂して胚と呼ばれるものになり、これを子宮に移植します。

採卵・採精→体外での受精→胚の培養→移植

というこの一連の技術のことを、生殖補助医療(ART)と言います。ARTと聞くと新しい技術と思われるかもしれませんが、初めて体外受精で子どもが生まれたのは、なんと今から40年も前のことです。1978年、世界初の体外受精による妊娠出産がイギリスで成功し、日本では『試験管ベビー誕生』などの見出しでメディアに大きく取り上げられました。それから5年後の1983年、日本でも体外受精による出産が成功しました。

年々増加する、ARTによる妊娠出産

近年では、ARTによる妊娠出産は珍しいことではありません。2014年には総出生児の約5%がARTにより誕生しています。これは、1クラス40人の教室にARTで生まれた生徒が1~2人いるという計算になります。

これからの生殖補助医療-年別-出生児数
年別 出生児数 – 日本産婦人科学会ART調査2014より引用

以前のARTでは胚を培養後、すぐ子宮の中に戻すという新鮮胚移植が主でした。しかし、日本では現在、凍結胚移植が一般的になっています。これは、一度受精卵を凍らせて保存し、再び溶かして子宮内に戻すというものです。

この図からもわかるように、ARTの中でも新鮮胚移植(*注1)より凍結胚移植(*注2)の出生児が圧倒的に多く、凍結胚移植が今の治療の7割ほどを占めています。

(*注1)新鮮胚移植は一回の生理周期で採卵から胚移植までを行うこと。
(*注2) 凍結胚移植(FET)は採卵して受精させた受精卵を一時的に凍結保存し、別の生理周期で移植すること。新鮮胚移植で使わなかった胚を凍結する場合と、新鮮胚移植を行わずに採卵してすぐに凍結保存する場合がある。

新鮮胚移植では、採卵と同じ周期に移植を行います。採卵で取れた卵をその日のうちに受精させ、約5日間培養したのちに移植します。つまり、採卵から移植までの日数が長くても1週間ほどしかありません。そのため、採卵による傷やホルモンの影響により、子宮が妊娠に適していない状態である場合があります。

一方凍結胚移植では、胚を凍結することで長期間胚を保存することができます。

採卵→受精→培養→凍結(保存)→融解→移植

といった流れになり、移植の時期をコントロールできます。

その結果、子宮のコンディションを整えてから移植を行えるため、新鮮胚移植より高い妊娠率が望めます。ちなみに、最長で6年間凍結した胚においても、治療成績に差は見られなかったとの研究があります。

これからの生殖補助医療-イラスト1

ちなみに現在、新鮮胚移植か凍結胚移植かに関わらず、「1度の移植で子宮に戻す受精卵の数は、原則1つ」というガイドラインが設定されています。

体外受精が行われ始めた頃、「1度の移植で子宮に戻す受精卵は3個以下」というガイドラインが設定されました。しかしその結果、双子や三つ子の妊娠が急激に増えてしまいました。多児妊娠は母体への負担が大きく、命の危険性もあります。母体を守るため堕胎する例などもあり、それを防止するべく現在のガイドラインが再設定されたのです。

加齢とともに低下する出産率、上昇する流産率

現在、不妊治療患者の平均年齢は39歳と言われており、不妊治療において、患者の加齢は避けては通れない道です。

これからの生殖補助医療-体外受精の年齢別総生児出産率・流産率
日本産婦人科学会 平成28年度倫理委員会 登録・調査小委員会 よりデータ引用・グラフ作成

グラフから、女性の年齢が上がるほど、妊娠率が下がっていることがわかります。これは加齢に伴う卵子の質の低下が大きく影響しています。生産率は35歳を境に徐々に低下する一方、流産率はぐんと上がり、43歳頃には50%を超えています

高齢妊娠の流産の原因のほとんどが染色体数異常(ダウン症などのトリソミー)によるもので、これは、加齢に伴う減数分裂の異常が影響しています。

流産を繰り返すと、次の妊娠においても流産を発症するリスクが上がります。2回連続での流産を反復流産、3回以上の連続流産を習慣流産と呼び、反復流産後に再び流産する確率は40%にもなります。

医療はもちろん日々進歩しています。長年、妊娠率を上げて流産を未然に防ぐ方法が考えられてきました。

妊娠率を上げ、流産を予防するための取り組み

「着床前診断」 ( PGD :Preimplantation Genetic Diagnosis)というものが1990年頃にイギリスで初めて行われました。これは遺伝性疾患(筋ジストロフィーなど)になりうる遺伝子を持つカップルの胚に、その遺伝子が遺伝していないか、また、染色体数異常(ダウン症など)はないか診断する検査です。

この検査により、子の遺伝病を防ぐことができます。また、染色体異常のある胚は自然流産する可能性が非常に高いため、正常な染色体をもつ胚を移植することで反復流産の確率を下げられます。

受精卵が細胞分裂していくと、胎児になる部分と胎盤になる部分に分かれ、胚盤胞と呼ばれるものになります。着床前診断では胎盤になる部分から細胞を数個取り出して、遺伝子疾患を診断します。検査の結果、受精卵が正常であれば子宮に戻します。

着床前診断を行えば、遺伝性疾患を回避し、染色体異常による反復流産の可能性を低くすることができます。しかし、この検査は誰もが受けられるわけではありません。

着床前診断では子の性別や特定の障害有無も調べられ、「命の選別」に繋がるのではないかという倫理的な問題を抱えているためです。

日本産婦人科学会は「『着床前診断』に関する見解」を出しており、着床前診断(PGD)の実施は原則として、親が重篤な遺伝性疾患を持つ場合や、染色体異常が原因で流産を繰り返してしまう場合に対してのみ認められています。

これからの生殖補助医療-イラスト3

また、「着床前スクリーニング」(PGS:Preimplantation Genetic Screening)という検査もあります。これは、遺伝子疾患を持たないカップルにおいても、染色体数異常(ダウン症など)のみを診断することができます。

着床前スクリーニングは、着床前診断とほぼ同じ方法で胚の遺伝学的検査を行います。染色体数に問題がない胚を移植することで、流産率を低下させることと、妊娠成功率を向上させることを目的としています。

着床前スクリーニングにより、染色体数異常による流産の可能性が減少し、移植回数における妊娠率も大きく向上します。

残念ながら、日本産婦人科学会は着床前スクリーニングにも着床前診断と同じく倫理的な問題があるとして、日本国内の病院・クリニックではまだ行われていません。

しかし今や、着床前スクリーニングはアメリカやヨーロッパ諸国、アジア諸国の先進国で広く実施されている技術です。日本でも、着床前スクリーニングが行われるようになる日は近いでしょう。

生殖補助医療は日進月歩で進化を続けています。本サイトでは、先端生殖医療の今とこれからについて、みなさまと一緒に考えていきたいと思います。

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