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Vol 51:遺伝病と受精卵について~PGT-Mとは何か?患者さんの体験談~

西村さん、小柳由利子先生、トシさん

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「遺伝病と受精卵について~PGT-Mとは何か?患者さんの体験談~」

番組情報

放送分:2019年4月21日放送分
ゲスト:東京HARTクリニック 小柳由利子先生
テーマ:「遺伝病と受精卵について~PGT-Mとは何か?患者さんの体験談~」
FM西東京のページ:こちら

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番組紹介

ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。

この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの技術責任者で、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

番組内容

トシ: よろしくお願いします。今日もスタジオに東京HARTクリニックの小柳由利子先生にお越しいただいております。今日のテーマは「遺伝病と受精卵について」になります。

西村: さあ、本日のゲスト。先週に引き続きまして東京HARTクリニックより小柳由利子先生にお越しいただいております。先生、今週もよろしくお願いいたします。

小柳: はい、よろしくお願いします。

トシ: 先週の話は、染色体の数を調べるPGSの検査についてお話ししました。今週はPGDについてです。PGDの話というのは遺伝性疾患を持つ人や保因者が対象となる検査なんですが、ここを先生の方からちょっとお願いいたします。

小柳: はい。日本では、日本産科婦人科学会の承認を受けて行われるということになっていて、第1号は2004年に実施が認められまして、現在では54施設が認可されているんですけれども、意外とこの検査について知られていなくて。
 その理由としてはいまだに臨床研究として行われているということで、あまりその宣伝をしていない。有効性だったり、その倫理的な問題について議論がまだ終わっていないという形なんですけれども、一つは患者団体からの反発というのが強くて。それでなかなか実施に踏み切れていないという状況もあると思います。
 これは出生前診断のNIPTというものも同じような状況になります。

西村: 遺伝性疾患を持つ方というふうにお話があったんですが、具体的にこう、対象の患者の皆さんはどういった方が対象になられるんでしょうか?

小柳: これは結構たくさんありまして。単一遺伝子による遺伝性疾患なんですけれども、代表的なのは神経筋疾患の筋ジストロフィーとか。徐々に筋力が弱っていって、呼吸筋が弱って呼吸不全になったり。
こういったのは比較的長く生きる方は多いんですけれども、代謝性疾患といってエネルギーを作ったり毒物を解毒できなかったりという異常が出てしまう方では、ほとんどが予後不良で小児期のうちに亡くなってしまったり。

西村: そうなんですね。

小柳: なので、疾患によってかなりその重症度に差があるというのが特徴ですね。
 あとは血液疾患というものもありまして、赤血球の異常が起こると赤血球が壊れて貧血になったり、血小板の異常があると、血友病とかが有名なんですけれども血が止まらなくなってしまったり。血液疾患は症例によってかなり症状の出方が異なるのが特徴ですね。

トシ: やっぱり、こういった疾患となると重症度の差が結構あるんですね。

西村: 先生はツイッター、ブログなどを通して患者さんのお声を頂戴することって結構あるんですって?

小柳: そうなんですよ。今回ラジオの話をいただいて、東京HARTではPGDの認可施設ではないので私も知らないことが結構ありますので、ツイッターを通して実際の患者さんのメッセージを募集しまして、2名ほどメッセージを頂戴しましたので、その中から今日はリアルな声をお届けしたいと思います。

西村: まず、お一人目の方。メッセージを先生、まずは読み上げていただいて。お願いできますか?

小柳: はじめまして。PGDの経験について個人を特定されてしまうのでは、と少しだけ心配になったのですが、誰かの役に立てばとメッセージさせていただきました。
 私はデュシェンヌ型筋ジストロフィーの保因者で、学会の認定施設で倫理委員会に申請してもらい、承認されたので検査を受けました。
 年齢はその時点で33歳、不妊治療歴は4年目で、一度PGDを受けずに顕微授精して妊娠した際に病気が遺伝していたことが羊水検査で判明し、妊娠継続を19週で諦めた経緯があります。
 この患者さんは申請してから約半年で承認されて、比較的順調に進んだパターンではあるんですけれども、患者さんとしては承認されるかどうかの基準が患者側から見るとブラックボックスでよく分からないのがすごく不安でした、と。また、基準の明確化や、せめていつ承認の可否が分かるのかをはっきりしてもらえると良いのになと思います。
 また、重篤な遺伝子疾患を保因されていて、子どもを持つことをためらっている方に少しでもこういった情報が届いてほしいと願っています、ということですね。

トシ: これ。まず申請書類っていうものを準備して、クリニックから出すんですね。で、半年。やっぱり半年かかるもんなんですか。

小柳: 最低でも半年ですね。だから、認定施設でカウンセリングとか倫理委員会での審査を受けて、第三者の医療機関でまたカウンセリングを受けて。で、また認定施設に戻ってきて再度希望を確認して、っていういろんな手順があると。

トシ: 多いですね。

小柳: 実際には、遺伝病の方は9割近くが認可されるらしいんですね、データによると。でも多いのは、その習慣流産で転座があるために流産を繰り返す方っていうのは、長いと2、3年審査にかかってしまって。

トシ: 2、3年?

小柳: 流産の回数が足りないとか、そういったことで却下されてしまうということが多いようなんですね。
この方は30代前半でまだ時間がありますけれども、高齢の、30代後半の患者さんになると半年というのは非常に大きいし、もう2、3年待ってしまうと生殖年齢を過ぎてしまう可能性があるんですね。
ですので、手順をもう少し簡略化するなり、またその情報をもっと一般に広めるというか。もちろんまだ議論中の問題もあるのでそう簡単にはいかない部分もあるとは思うんですけれども、誰かの権利を守ることは誰かの機会を奪うことにもなってしまうと思いますので、やっぱり。

トシ: そうですよね。これ、9割は申請して通るって話もあって、でも1割の方は通らない症例もあるってことなんですか。

小柳: そうですね。

トシ: いや、やっぱり半年っていうのが私、今聞いて、一番早いパターンだと。時間かかる場合だとやっぱり1年、2年とかかってしまう。
 仮にですけども、私がもし子どもを持ちたいと思ったとき、にこういった検査が必要だと思ったときにですね。1年、2年ってのはとても長い時間なんですけども、これやっぱり、今の現状はこういった時間がかかってしまうんですね。
 なんでこんな時間がかかってしまうんですかね、半年もちょっと驚いたんですけど。やっぱり倫理委員会ってものが1年に開かれるのがそれとも関係しているんですかね。

小柳: あとはやっぱり、カウンセラーさんがまだそんなにいないのと、臨床遺伝専門医という専門家が説明しないとなかなか難しい。遺伝的な知識に関しては患者さんもお持ちでは無いので。なので、そういった人数が限られてくるので、やっぱりそういう枠が無いというのも。

トシ: なるほど。まだちょっと仕方が無い部分があるってことですよ。確かにカウンセリングは大事だと思います。

小柳: ただ、海外では一切そういうカウンセリングなどの手順を踏まずに体外受精の一環として、スクリーニングと同じぐらいのスピードで。

トシ: あ、そうなんですね。

小柳: でも実際、アイジェノミクスさんでも海外でもそういったご経験をお持ちだと。

トシ: はい、海外の方では。私たちの本社の方も含めて、やはり遺伝カウンセリングというのを社員としていて、その話があったらすぐに、クリニックの方から話が来たら、どういった疾患かを調べさせてもらって、数日以内にお返事しますね、受けられるかどうかを。それで患者さまの方が希望すれば弊社の遺伝カウンセリングの方と話す場を設けて、それで実施する、しないの話をするというのは聞いてますね。

西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。今日はゲストに東京HARTクリニック、小柳由利子先生にお越しいただき、前半に引き続きましてPGDに関する患者さんの声をご紹介いただきたいと思います。先生、お願いいたします。

小柳: はい、よろしくお願いします。二人目のメッセージを紹介させていただきます。
 こんにちは。私は28歳女性です。婚約をしたばかりの年明けに、指定難病の保因者であると判明しました。私の父が体調不良が続いていて、昨年ようやくこの病気が原因であると診断されました。日々、筋肉に関わる病気のため弱っていく父の姿を見ていると、子どもを産み育てる覚悟ができません。
5カ所の病院や遺伝カウンセリングをめぐり、この病気の治療法が確立されていないこと、20歳以上生きること、母体に影響が無いことなどを理由として、出生前検査の対象外と言われました。子どもを産んだ場合、その子の人生の選択を阻めるリスクがあるという理由で、20歳までは病気が遺伝しているかどうかの検査も受けられないそうです。
 これを知ってびっくりしたんですけれども、この患者さんの場合は、男の子を産んだ場合に半分の確率で遺伝する可能性がある病気なんですね。なので、選択肢としては女の子をPGSで選択するか、もしくはPGDを行ってくれる施設を探すかとそういう2種類の選択があるんですけれども。
 続いて患者さんのメッセージでは、どこに行っても国内ではできない。国外に通じている機関などはあるけれど、医療技術は定かでないためリスクも高い、と聞かされます。
婚約者は子どもを希望しているため、破談を覚悟しています。私に残された道はあるのでしょうか。
 という、とても切実なメッセージなんですね。この方は出生前診断でまず検査ができないか、ということを考えられたんですけれども、当然ながら重篤ではないということでそれが認められなかったので、PGDに関しても同じ理由で認められない可能性が高いんですね。
 この重篤ということの解釈についてとても考えさせられるんですけれども、医学的にはその寿命ということでその重症度を判断するんですけれども、必ずしも長く生きるから重篤ではないということではないと思うんですよね。例えば、いつ発症するかという。

トシ: そうですよね。これ、お父さんが、ということなので。ある年齢に達したときに症状が出てきたって、初めてそれで娘さんが知ったって形。うーん、これはちょっと。

小柳: 発症するかもしれない不安感の中で生きていくことだとか、あとは発症してからも介護を必要としながらも生きていく場合は周りの方にも負担がすごくかかってしまうと思います。そういうのも含めると一概にその寿命というもので重篤かどうかという判断はできないと思うんですよね。

西村: 先生、このあたりの倫理的な問題についてはどうなっているんでしょうか?

小柳: 海外では、特にイタリアとかドイツでは、カトリックの影響で非常に生殖医療に関する規制が強かった時代がありまして。ところが最近は緩和されてきて、PGSもPGDもできるようになってきてるんです。その背景としては、まず医者とか患者が選択の自由ということを主張して訴訟を起こして、結果として法律が違憲であるというふうに司法によって判断されて改正されてきたっていう歴史があるんですね。
 日本ではあまりその訴訟というのは起こりにくいんですけれども、実際には諏訪マタニティーとか大谷レディスクリニックの医師や患者さんが学会を相手取って訴訟を起こして、その結果、却下されたんですけれども均衡型転座に関してPGDができるようになったりと、少しずつ進歩しているような状況があるんですね。
 なので、日本ではアンダーグラウンドにPGSやPGDが行われるように少しずつなってきているんですけれども、それはあまり好ましくなくて、やっぱりこういった社会問題を通して一般の人も考えるチャンスになると思うし、そういうのは必要なステップだと思うんですね。そういったことを通して社会的な理解というのを生んでいくというのが必要だと思っています。

西村: 二週に渡って、患者さんのお声もご紹介、今週はさせていただきましたが、先生、最後にですね、このリスナーの皆さんにメッセージを頂戴できますか?

小柳: はい。これは私の個人的な考えなんですけれども、倫理問題に限らず、人間は本当に人の置かれた立場になって考えるっていうことはすごく難しいと思うんですよね。
 例えば遺伝病に関しては、その病気の種類やその症状というのは本当に人それぞれだし、あとは患者さんの介護の手とかそういった経済的な面も含めて環境要因というのも本当に個々に違う。
 だからこそ、人の身になって本当に考えるのが難しいからこそ、自己決定権というのはすごく重要だと思うんですね。なので、そういった選択の自由ということにももっと目を向けて、みんなで考えていくということがすごく大事だと思っています。

西村: さて、お時間となりました。二週に渡って東京HARTクリニック、小柳由利子先生にお越しいただきました。先生、二週に渡ってありがとうございました。

小柳: はい、どうもありがとうございました。

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