妊活ブログ

アイジェノミクス・ジャパンの妊活情報配信ブログ

Vol 64:化学流産と着床の窓

Tiempo de lectura: 2 minutos
トシさん、小柳先生

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組情報

放送分:2019年7月21日放送分
ゲスト:東京HARTクリニック 小柳 由利子先生
テーマ:「化学流産と着床の窓」
番組を聴く:

番組内容

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのラボマネージャーであり工学博士のトシさんです。トシさんよろしくお願い致します。

トシ: よろしくお願いします。今日はスタジオに東京HARTクリニックの小柳由利子先生にお越しいただいております。今回のテーマは「化学流産」になります。先生からまず、化学流産についてご説明いただけますか?

化学流産とは

小柳: 化学流産というテーマは、アイジェノミクスのホームページに一番アクセスがある、ということで相談がありまして、今回ちょっと考えてきたんですけれども。
 まず、化学流産というのはどういうことかということなんですけど、化学流産の化学というのはまず「化学的妊娠」の化学で、妊娠反応が陽性に出るということですね。
 妊娠には臨床的妊娠と化学的妊娠があって、臨床的妊娠というのは超音波で実際に胎嚢(たいのう)が確認できることを一般的には妊娠というんですけれども、妊娠検査薬が最近は精度が高くなっていますので、自分で検査したりして陽性に出るというのも、これが化学的妊娠。これはだいたい妊娠4週ぐらいから陽性になります。
 化学流産というのは、化学的妊娠には至ったけれども、臨床的妊娠には至らないという状態のことを言います。
 化学流産に皆さん興味があるというのは多分、胚移植の後とかに結構、毎日検査薬を試したりされている方も多くて、ちょっとでも陽性になったら、あっ、私は化学流産、その後判定で陰性になっても化学流産だって思っている方もいらっしゃると思うんですが、臨床的に意義のある化学流産というのは妊娠4週の時点でhCGが20以上ぐらい、割としっかり出たけれども胎嚢が確認できない、というのを私たちは化学流産と考えています。

トシ: そうなんですね。なるほど、そういうことなんですね。この化学流産になってしまうのが、卵か着床か、というところ。胎嚢が確認できるというともう何週っていう、これは?

小柳: 5週です。

化学流産の原因

トシ: 5週なんですね、なるほど。化学流産になってしまうというときは、その卵側の原因でなってしまうのか、もしくは着床って方は子宮内膜側になってしまうのか、このどちらかっていうことで?

小柳: 実際には両方あり得るんですけれども、一般的な流産に比べて化学流産というのは着床して割とすぐの時期なので、卵より着床の占める割合というのは大きいと考えていますが、卵の質にもよりますので、だいたい30代前半ぐらいであれば着床の問題が高いかな、とか、30代後半ぐらいになってくると卵が原因かな、と考えるんですけど。
きちんと調べるには卵の方の検査をしないとはっきりしたことは言えないんですが、そういったことが繰り返されるような患者さんでは、着床の詳しい検査をしていくという流れになりますね。

トシ: 確かにこう、卵の方の問題で言うと、本当に35、6歳を起点に、採卵して受精卵を作ったら5割は、着床しても流産になってしまう卵が半分ある、と。それがやっぱり40歳を超えてくると、8割がそういった卵になってしまうといったのが分かっていますので、確かに今先生がおっしゃったように卵か着床か、子宮内膜側の問題か、というのはもう、30代前半なら卵側だろうと。30代後半なら着床の窓の問題だろうという話になってくるんですかね。
※30代前半なら着床の窓の問題、30代後半なら卵側の誤り

ERA検査の精度

トシ: 着床の話が出たので、私たちのERA検査の話もちょっと紹介させてほしいんですけれども。私たちのこのERA検査、子宮内膜着床の検査というのが私たちのオリジナルの検査として出しているんですが、これは着床の窓の時期を見つけることができる検査で、どこまでの精度で出るかというと、12時間の差まで出ます。12時間早く移植した方が良いですよとか、12時間遅くとか。24時間とか。そういったあたりが出る検査なんですけれども、こういった良い卵を戻しているにも関わらず、あれ、着床、うまく妊娠しないとか、妊娠まで至らないとか、着床はするのに妊娠に至らない、そういった場合はぜひこの私たちのERA検査で一度、着床の窓というものを確認していただくことがとても良いと思ってます。

小柳: 松岡(トシ)さん、ERA検査ではどれぐらいの頻度でずれがある患者さんがいらっしゃるんでしたっけ?

トシ: これはですね、3割です。3割から4割に近い患者さんが、このERA検査を受けていただいた方がずれていらっしゃるのが分かっています。

化学流産と着床の窓の関係

小柳: 私たちの臨床的な経験ではそこまで多くないんじゃないかな、と思うんですけれども、着床の窓というと皆さん、開くか閉じるか、どちらかしか無いと思われるんですけど、実際その化学流産の原因でもあったりして、半開きみたいなところに引っかかると化学流産になってしまったりするっていうのが経験上あるんですね。
イメージとしては山状で正規分布みたいな感じになっていて、中心が多少ずれている人はいるかもしれないけれども、結構幅があって。その幅も人それぞれなんじゃないかなっていうふうに考えています。

トシ: そうです、私たちもよく質問されるのがこの窓の大きさ、長さですね。よく言われるんですよね。例として私たちがよく出すのが山です、やっぱり。山のすそ野がこう広いのか、狭いのか、とかですね。そういう着床の窓の端っこになってしまったときに着床するとどうしても化学流産になりやすいんじゃないか、というふうに。

自然周期とホルモン補充周期での着床の窓の違い

小柳: それはあると思います。その幅は個人差もあると思うんですけれども、ホルモン補充と自然周期の違いというのも結構大きいと思っていまして。
ホルモン補充では卵巣から実際にはいろいろなホルモンが出ているのに対して、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンしか補充しないし、投与の仕方も均一に投与するので、どうしても内膜の質が自然とはちょっと異なった状態になってしまうと思います。なので、意外とホルモン補充周期で着床しなくても、自然周期で移植すれば妊娠する方もいらっしゃるんですね。

トシ: これ先生、自然周期とホルモン補充周期で着床の窓の長さって、なんかこう、自然の方が長いとか、そんな、印象である?

小柳: 自然の方が長いと思っています。実際、胚盤胞というのは受精してから5日目から6日目になるので、1日以上ぐらいの幅がありますよね。

トシ: ええ、そう思います。

小柳: なので、そんな12時間単位で窓が決まっていたら、人類こんなに反映していないと思うので。

トシ: (笑) そうです、私たちがさっき言った12時間というのは、12時間遅らせた方がより窓の中心に近いですよ・・・

小柳: そうですね、ベストな位置は。

トシ: ・・・そうそう、ベストな位置はっていう。

小柳: 確かにERA検査で特定できると思うし。実際ERA検査をやってレセプティブの時期に移植して、最終的に妊娠しなかった方はゼロなんですね。

トシ: すごい。

小柳: なので、すごく有効な検査ではあると思うんですけど、費用がやっぱり・・・

トシ: そうそう、そこはありますね。

小柳: ・・・ネックになっていますね。

トシ: おっしゃるとおりで。

小柳: なので、年齢の若い方であったりとか、ちょっと卵の数にも余裕があれば、まずERA検査をやる前に排卵周期での移植にトライしてみるというのもありだと思います。

西村: さあ、後半も東京HARTクリニック、小柳由利子先生にお話を伺っていきます。今日のテーマは「化学流産」についてでございます、さて、後半なんですが。

トシ: はい。先生にちょっとお話ししたいのは。

小柳: はい。

トシ: 今ですね、妊娠の成功率、PGTやったとしても、やっぱり7割ってよく聞くんです。

小柳: PGT-AとERA検査を組み合わせて、ですよね?

トシ:そう、組み合わせて。そのとおりです。

小柳: はい、そういう報告が結構海外では行われてますけど、意外と低いんだな、という感じで。

トシ: そう。もっと上がらないんですよ。

化学流産と慢性子宮内膜炎

小柳: そうですよね。その残り3割が何なのかっていうのが化学流産にもかかわっていると思うんですけれども、時間の関係で2つほど挙げさせていただきたいなと思うんですが。
 一つが、慢性子宮内膜炎ですね。これは結構最近、よく話題になるようになって。報告はいろいろあるんですけれども、頻度としてはだいたい閉経前女性の約25パーセント。4人に1人ぐらいあるということで、結構。

トシ: 結構多いんですね。

小柳: 多いんですね。臨床的な経験でいうと子宮筋腫とか子宮内膜症、あとは卵管が腫れていたりとかっていう場合にかなり罹患(りかん)率が高いような印象がありますので、その悪玉菌に感染する機会というよりは、子宮内の環境が重要なのではないかなと思っています。

トシ: ちょうど私たちの、子宮内の細菌叢(そう)を見る検査、EMMA検査ALICE検査という検査を出しました。これは、子宮内膜に存在している細菌を網羅的に調べます。どんな菌がいるのかっていうのを割合と一緒に出して、もし病原菌、悪玉菌があれば、それに適した抗生剤も提案する、とそういった検査を出しています。

小柳: 当院でもALICE検査を出した患者さん、何名かいらっしゃるんですけれども、子宮内膜炎が組織的に陽性なのにALICE検査では出なかった、という方がいて。なので、ある程度その菌量が多くないと特定できない場合もあるのではないかな、と思っていて。
なので今のところ、子宮鏡とCD138免疫染色という組織の検査、これを両方行うのが診断としては確実といわれるんですけれども、実際、抗生剤を何種類か投与しても良くならない患者さん、難治性の方がいらっしゃるので、何の抗生剤が一番感受性があるかというのを特定する上では、ALICE検査は有効になるのではないかなと思っているところです。

トシ: 先生。もう一つっていうのは、何になりますか?

着床障害と不育症

小柳: 不育症の因子になりますね。不育症と言うのは本来、臨床的妊娠の後の複数回の流産、特に卵子の側ではなくて子宮の側の問題なので、心拍確認後の複数回の流産の場合に疑うものなんですけれども、不育症の原因としては、血液凝固系の因子の増加や減少、またはそれらに対する自己抗体によって血小板が固まりやすくなって、胎盤に血栓ができてしまうということが原因とされているんですけれども、最近ではこういった因子が子宮の内膜の血管を作るのを障害してしまうという作用があるということが分かってきていて、着床障害の原因にもなるということが報告されてきています。
 不育症の採血。これは採血で検査するんですけれども、採血がちょっと特殊で。採った後に遠心をかけたりとか、すぐに冷却しないといけないとか、特殊な機械が必要とか、専門のクリニックでしか検査できない項目が多いので、私たち不妊症のクリニックでは調べることにはちょっと限界があるんですね。
なので、専門の病院に患者さんをご紹介させていただいているんですけれども、かなり待ち時間というか、受診するのに2、3カ月かかったりするということがあるようで。中には染色体異常で繰り返し流産されている方とかが不育症のクリニックを受診されるケースがすごく多いと思うんですけれども、そういったことによってなかなか受診できないという。
なので、私たちの提案としては、まず予約をして、その前に胚を移植するとなったら、移植周期の生理開始3日目からビタミンE製剤のユベラと、血液をさらさらにするバイアスピリンですね、それを内服することでだいたいの場合カバーできるので、検査をせずにこれらを内服してしまうということも有効である場合があります。

トシ: 小柳先生、今日もありがとうございました。また、この残り3割の着床の問題のあたりをまた聞かせてください。

小柳: そうですね。実際、着床は本当複雑で、それ以外にもいろいろあるんですけれども、また。

トシ: ぜひ、よろしくお願いいたします。

西村: ゲストにお越しいただきましたのは、東京HARTクリニックより小柳由利子先生でした。先生、ありがとうございました。

トシ: ありがとうございます。

小柳: ありがとうございました。

関連記事

コメントする

コメント無し

コメント無し