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Vol 70:受精卵と凍結保存

Tiempo de lectura: 2 minutos

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「受精卵と凍結保存」

番組情報

放送分:2019年9月1日放送分
ゲスト:亀田IVFクリニック幕張 平岡 謙一郎先生
テーマ:「受精卵と凍結保存」

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番組紹介

ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。

この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのラボマネージャーであり、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

番組内容

トシ: よろしくお願いします。今日もスタジオに亀田IVFクリニック幕張、平岡謙一郎先生にお越しいただいています。今日のテーマは「受精卵と凍結保存」についてになります。

西村: さあ、先週に引き続きましてゲストはこの方です。亀田IVFクリニック幕張より平岡謙一郎先生です。よろしくお願いいたします。

平岡: よろしくお願いいたします。

西村: 平岡先生、二週目でございますからだいぶリラックスして。先週は少し緊張されてらっしゃるなんておっしゃってましたけど、だいぶこのスタジオの雰囲気にも慣れてきた頃でしょうか?

平岡: いや、ちょっとまだ無理です。

トシ: (笑)

西村: あれっ?(笑) 平岡先生、改めて自己紹介をリスナーの皆さまにお願いいたします。

平岡: はい。千葉県千葉市の亀田IVFクリニック幕張に勤務しています、培養士の平岡謙一郎と申します。私自身、2000年から培養士をやっております。

西村: 先週は、培養士のお仕事はどんなものだとか、どういった研究を今までされてらっしゃるか、とか。はい、今週なんですが。

胚の3割が凍結保存の段階で駄目になってしまった時代

トシ: 今週は、受精卵の凍結保存ですね。先生は2000年からやられているので、その当時からどのように変化してきたのかという歴史をご存じでして、その辺を深く掘り下げてお話を伺いたいなと思っています。
 まずは凍結保存の歴史というか、どんな方法があったのかというところをよろしくお願いします。

平岡: はい。僕が2000年に培養士になった頃、受精卵の凍結保存というのは、ゆっくり、時間でいうと3時間ぐらいかけてゆっくり冷やしながら凍結保存する。ゆっくりやるので緩慢凍結という言い方をされているんですけど、緩慢凍結で凍結保存するのがメインでした。
こちらの方法の問題点なんですが、解凍したときに生きてくれてる受精卵の割合がだいたい、施設によって変わるとは思うんですが、6割とか、良くても7割ということで、裏を返すと3割の卵が駄目になってしまってたっていう時代だったんですが、ちょうど2005年あたりに凍結保存の技術の大きな革命がありまして、これはもともとあった緩慢凍結法、ゆっくり凍結する方法から、もう瞬間的に、一瞬で凍らせるという方法になるんですが、これに変わってからもう生きている割合が劇的に改善して、99パーセントの受精卵がちゃんと生存できるようになったという。

トシ: すごい技術革新だ。

西村: 瞬時って、ごめんなさい、素人質問で本当に申し訳ない。シュッて感じなんですか?(笑)

平岡: シュッて感じです。もう、おっしゃる通りです。

西村: このぐらいで?

液体窒素でヒトの胚を凍結できるようになった

平岡: 液体窒素ってマイナス196℃のものを横の発泡スチロールに設置するんですけど、受精卵を凍結保存の容器に、こうシートみたいになってるんですけど、そこにちょっとピトッとこう乗せて、それをもう本当に、さっきおっしゃった通り液体窒素にそのままブシュッとつけて、もう、これで終わりです。

西村: へえー。すごいスピーディーなんですね。

トシ: すごいですね。これを技術開発したの、なかなかよくやったな、と。

平岡: もともと昔からこの理論は出来上がってたらしいんですけど、哺乳動物に応用できるまでのいろんな条件設定ができてなかったのが、それが2000年に入ってやっと条件が整って、やっとヒトにも臨床できたっていう流れですね。

トシ: 当初のゆっくり冷やしていく方法。これは普通の細胞の実験、卵ではなくて体細胞ですね、そういった細胞を凍結保存するときはそういった方法を使うんですよ。だから、おそらく最初の、ゆっくり温度を下げていくっていうアイデアはそこから来ていると思うんですよね。卵も細胞だからこれは良いだろう、と。そしたらまさかの、瞬間で。これができたの、だいたい2005?

平岡: 2005~2006年あたりからもう、これが主流になってきたっていうところで。今はもう完全に、日本ではほぼ100パーセント、この瞬間的に凍結する方法が使われています。

トシ: これは、生まれたのはどこの国とかあったりするんですかね?

手先が器用な日本人は凍結技術も高い

平岡: これは、理論は確か海外で、この凍結保存のキットというのは、日本初。

西村: へえー。

トシ: すごいですよね。

平岡: なかなか、ちょっと細かい時間の制約だったり、薄っぺらい、幅が5ミリぐらいですね、なので最初、手先がやっぱり日本人は器用なので、そういった意味ではおそらく瞬間的に凍結する技術が一番上手なのは日本人ですね。

トシ: やっぱりこういうところでも日本人の器用さが。

平岡: 器用さがすごい出てますね。

トシ: そうか、日本からのあれだったんですね。

平岡: そうですね。日本から広まっていったという話ですね。

トシ: その日本でも、どこどこが、ってあるんですか? どこの誰々先生が、とかって。

平岡: もともと加藤レディスクリニックで始まった方法なんですね。

トシ: これが日本全国に広がって、今、全世界に広まった。

平岡: そうですね。

トシ: あと、その凍結保存の中で気になっているのが、胚のグレード。卵のグレードですね。その辺とか、どうなんですか?

生存率99% 元気な状態で胚を眠らせることがポイント

平岡: ここはやっぱり、凍結保存というのは、あくまでも元々ある能力の卵をそのまま瞬間的に眠らせてその状態でよみがえらせる技術で、決して良くなる訳ではないので。もし凍結する前のグレードが低い子は解凍した後も低いままになってしまいますし、もちろんグレードが今度あんまり良くないと、解凍した後にちょっと駄目になってしまってることもありますので。
もちろん技術はもう確立されていますので、凍結する前の受精卵がどれだけ元気な状態で眠らせることができるか、ってことがすごく重要になってきます。

トシ: なるほど。だから、ちょうど凍結保存の技術が革新があったときに、先週お話しした培養液の技術革新もあった訳で。どうにかして卵を元気な状態で胚盤胞期胚まで育てる、で、凍結保存にもっていく、という。
どちらが欠けても駄目だったちょうどその当時に培養液の技術が開発され、凍結保存の技術も開発され、という。すごい。
培養士の側からすると、実際に働いてたらもう感動でしかないですよね。

平岡: そうですね。特に凍結保存が、生存率が60パーセントから99パーセントに上がったというのは、自分の中ではもう驚きというか奇跡というか、本当に。

トシ: そういうことですよね、奇跡って。うん。

平岡: 凍結保存が本当に、最初は特に卵を溶かすときがすごく嫌だったんですけど、99パーセントの生存率が出るって分かってからは、そこら辺のストレスもだいぶ軽減はされてきたなっていう。

トシ: やっぱり胚培養士さんの仕事って、すごいストレスに、常にこうあると思うんですよね。小さい卵を操作するって並大抵のことじゃない。
 僕も大学時代に、家畜の卵とはいえ、すごい難しいなと感じていて。顕微鏡見ながら操作する訳で。これがもう、ヒトの卵となると、それだけでまずストレス。触るの怖いなとか思ってしまいますので、そういった中でのこの技術革新があって、生存率もずいぶん保たれるというのはすごい、働いていて気持ちよく働ける。もうそれしかないな、ねえ。

西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。ゲストに亀田IVFクリニック幕張より平岡先生にお越しいただいております。
 今、前半でね、そういったいろんなタイミング、研究のタイミングもそうですし、技術革新のタイミングとかもピタッ、ピタッと合って。どんどん妊活の技術がどんどん上がっているっていうのを改めて感じながらお話伺ってきたんですが。そもそも、出会われたタイミングもいつなんですか、お二人は?

トシ: 私は、平岡先生にお会いしたのは実は2年前ですよ、本当は。

西村: 今、平岡先生、あれっ? そうだったっけ? って(笑)

平岡: そうでしたっけ。一カ月前だと思ってました。

トシ: (笑) そうなんですよね。いや、2年前のセミナーがあってですね。そこで平岡先生とご挨拶させてもらったことがあったんですよ。そのときは深く話すことは無かったんですけれども、でも、周りの先生から話だけ伺ってて。いつかこう、話したいなって思ってたんです。今日はすごく良い機会だと思って、いろいろ話して。

平岡: ありがとうございます。

西村: でも平岡先生は、一カ月前(笑)

トシ: (笑)

平岡: そうですね、忘れてました。

トシ: いやまあ、そんなもんですよ。

西村: 忘れた頃にね、こうやってまた再会があって。しかもラジオでこうやっていろいろとね、リスナーの皆さんにお話しできるタイミングがピタッと。

トシ: そう、合った(笑)

西村: というところでしょうか。さて、平岡先生と後半なんですが、トシさん。

凍結保存の方法は統一されている?の意味

トシ: はい、私からですね。弊社アイジェノミクスはこのERA検査が出て、これも一つの技術革新ではあると思っているんです。この中で、2016年にアメリカの生殖医学会の方でこのERA検査の発表があったんですね。これは何の発表かというと、全世界の規模で実施した臨床研究の成果を発表した訳です。
この発表した内容ってもので、妊娠率が25パーセント上がりますよというのをうたってまわっている訳ですが、ある先生に、まあ一人だけでは無いんですけれども、先生からやっぱり言われたこと、質問があったんです。
これ全世界規模でやってる、となると、各施設によって凍結保存の方法が統一されているのか? と言われたんです。
私は分からなかったんです、その意図が。だって、凍結保存の方法は確立されているでしょ? なぜそこ気になるのかな、とか思って、分からなくて、正直にお答えして。統一はしていません、と。各クリニックの、施設の方法で行ってもらってます、と。
 この意図というものを。何故聞かれたのかな、っていうのを、今、平岡先生にお聞きしたいなと思って。

平岡: その先生の意図は僕もよく分からないんですが、日々その受精卵の凍結とか解凍をやらせてもらっている立場からすると、例えばその、一概にその風船で凍結しましたと言ってもその風船の大きさっていろいろで、本当に小さいものから大きいもの。
で、今度、当然その小さい風船の子はすごく中に入っている水も少なくて抜くのも簡単で、ざっくり言えば凍結が簡単なんですけど、その風船がより大きくなればなるほど中に入ってる水の量も増えるので、それをしっかり抜いてあげたりとかっていう操作が必要になってくるので。
一つ、そのばらつきってことを考えると、まずその凍結するときのその風船の大きさが、例えばちゃんと統一されていたのかどうかっていうことを多分、その先生は疑問に感じられたんじゃないかなっていう。

トシ: どういう大きさがあるものなんですか?

平岡: いろいろ、そうですね、大きくなると本当に、風船といってもちょうどヒヨコの卵と一緒で殻に覆われている状態なので、そこからちょっと出かかっている子とか、完全に出てしまうともうかなり大きくなって、通常の受精卵の状態よりも倍近くに大きくなることもありますので、当然そういった卵を凍結するときの条件と小さいときの条件は違うでしょって言われれば、確かにそうだなっていうこともあります。

トシ: 素朴な疑問なんですが、その殻っていうのは透明体のことだと思うんですが。

平岡: ああ、そうですね。

トシ: 透明体がある無しでは、特にあった方が良いとか、無くても良いとか?

平岡: 以前は、出てしまうと駄目だって言われてたんですけど。

トシ: そんな時代があったんですね。

平岡: 今はもう、ちゃんと中の水を抜いてさえあげれば、透明体があっても無くても変わらないですね。

トシ: なるほど。そこもあったんですね。無いと駄目だとかあったんですね。

平岡: なので、ちょっと話それるんですけど、僕が完全に出てしまったものを瞬間的に凍結するということで、一応、論文上は世界で初めてそれに成功をして。

西村: へえー。

トシ: すごい。

平岡: あの当時、論文を書いたときにその審査をしてくれた先生が、透明体が無いのに生きる訳ないでしょ、っていうコメントが確かあったのすごく記憶にあるので。なので、あの当時は殻が出るとそれはもう駄目だから、査読をしてくれた先生のコメントには、いや、だからうちはもうそんな卵凍結してないよ、というようなことが書かれていたので。

トシ: これもね、固定観念からのこう、なんとか解決しなきゃいけないっていうのでやったらできる。

平岡: なので、出てても大丈夫です。

トシ: 上げるそのグレードが、1から6。

平岡: そうですね、大きさに合わせて、大きくなるにつれて6ってことになるので、まず一つ、そこら辺がちゃんと統一できているかというと、やっぱりそれは施設によって多分変わると思いますし、受精卵の凍結できるタイミングってやっぱり患者さんの卵の成長具合によっても多分変わるので。

トシ: そうですよね。

平岡: そういったところが統一できてないんじゃないの、って言われても、それは確かにそうかなっていうところですね。

トシ: 気になった先生が言われてたのは、多分そのことを言ってたのかもしれないですね。凍結する卵の、言ったらERA検査をやった上での臨床研究なので、これを実際に子宮に戻して、どれだけ妊娠して出産までいったかっていうところが大事なところなので、多分その卵の状態のことを。

平岡: 状態と、あとグレードもそうですね。先ほど申し上げたように、良い子は良い子のままよみがえるし、ちょっとグレードの低い子は低いままよみがえるので、そこら辺を全部ごちゃまぜにして比較すると、グレードが良い場合はどうなの、低い場合はどうなの、っていうところは確かに疑問を感じるところではあるかなと思います。

胚のグレードと着床・妊娠の関係

トシ: ありがとうございます。ちょっとそのついでで、気になったんですけど、グレードなんですけども。これ実際、1から6までのグレードがあって、もちろん良いグレードのものから戻すと思うんですけれども、やっぱり3とか2とか1になってくると、なかなかこう、戻しても着床、妊娠は難しいものですか?

平岡: そういう訳ではないんですが。その段階的に、小学校の学年みたいなものなので、1は1年生、2は2年生、と患者さんに説明するときによくこの説明方法を使うんですけど。
1年生2年生だと、もしかしたらそのまま2年生で止まっちゃう子も中にいるかもしれないので、なので今は一般的に4年生ぐらいですね。ある程度大きくなったところで凍結保存ということが多分メインにやられていると思いますので。同じ風船であっても成長の若い子と、もっと先に行った子というところでも差が出る可能性はあるかなと思います。

トシ: 先生のところではもう、例えばグレード4まで?

平岡: 4です、4以上。中には、ずっと観察をしていると当初1年生、2年生、3年生でもその先が必ずもう6年生になるって分かっていれば、2年生で凍結しても良いと思うんですけど、中には2年生、3年生まで育ったからちゃんと先まで育つかなと思ったら途中で止まってしまったって子もやっぱりいるので。
そういう意味ではそういうのを見てから、学年でいうと4年生以上、だいぶ大きくなって殻が薄くなったところまで待ってから凍結しようってことにしてます。

トシ: ありがとうございます。

西村: さて、お時間となりました。今日は、亀田IVFクリニック幕張の平岡謙一郎先生をお招きし、アイジェノミクス・ジャパンのトシさんと一緒にお届けしてまいりました。

トシ: 次週は、受精卵の質についてお話を伺います。

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