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Vol 71:受精卵にストレスを与えないための体外受精・顕微授精テクニック

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「受精卵にストレスを与えないための体外受精・顕微授精テクニック」

番組情報

放送分:2019年9月8日放送分
ゲスト:亀田IVFクリニック幕張 平岡 謙一郎先生
テーマ:「受精卵にストレスを与えないための体外受精・顕微授精テクニック」

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番組紹介

ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。

この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのラボマネージャーであり、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

番組内容

トシ: よろしくお願いします。今日もスタジオに亀田IVFクリニック幕張、平岡謙一郎先生にお越しいただいています。今日のテーマは「受精卵の質」について伺います。

西村: はい。今週も亀田IVFクリニック幕張より平岡謙一郎先生のご登場です。平岡先生、よろしくお願いいたします。

平岡: よろしくお願いいたします。

西村: 3週にわたって先生にお話を伺っております。改めてここで亀田IVFクリニック幕張のご紹介を皆さんにお願いします。

平岡: 私の勤務いたします亀田IVFクリニック幕張は千葉県千葉市、駅で言いますとJR京王線の海浜幕張駅より徒歩5分のところにあります。
 われわれのクリニックは主に体外受精をはじめとした高度な生殖医療を提供させていただいてます。われわれのクリニックは亀田という名前がありますが、亀田総合病院のサテライトになります。
当クリニックの特徴といたしましては、クリニックに来られる患者さんの不妊治療に関することはもちろんのこと、将来妊娠を望まれる若い世代の方や、がん、生殖医療に対する啓発活動にも力を入れております。

西村: ありがとうございます。さて、今週なんですが、トシさん。

トシ: 今週のテーマは「受精卵の質」ということで。受精卵の質と聞くと平岡先生、何が浮かびますか?

顕微授精における技術革新

平岡: そうですね、受精卵を評価する基準というものがありますので、そこで良いグレードが付くものってことになるんですが、そこに至るまでに、どうしても卵子って外に取り出してますので。僕らの仕事というのはその質を上げることはできませんので、培養士サイドとしてはその質をいかに下げない操作ができるかが重要なところになるかなと思います。

トシ: その中で一つ、顕微授精というものがあるかと思います。まず、体外受精と顕微授精を比較した場合に、どっちの方がストレスフリーかってだけを聞くと、やっぱり体外受精なんですか?

平岡: これはそうですね。これも患者さんによく聞かれるんですが。体外受精と言われる、卵子に精子を振りかける方法になるんですが、本当に操作としては卵子が入っている培養液に精子をただ入れて、それで終わりになります。 
顕微授精の場合は、卵子のまわりをこうモサモサした卵丘細胞と呼ばれる細胞が覆われているんですが、それをまず取り除いてあげないといけない。取り除いてあげた後に今度ものすごく細い針を使って、卵子の横から卵子自体に穴を開けてそこに精子を入れてあげないといけないので、そこだけ聞くとすごく顕微授精というのは体外受精に比べて侵襲性が高い技術かなとは言えると思います。

トシ: なるほど。これも技術の話なんですが、顕微授精なんですけども、ここも一つの革新というか、これは本当、家畜の分野から話をすると、ピエゾという技術があるかと思うんですけど。

西村: ピエゾ。

トシ: これは顕微授精をするときにはマウスであれウシであれ、ピエゾを使って行う。とにかく、研究の分野だと実際には精子を入れるというよりは核を置換するとか、そういったいろいろな技術の研究なんですけども、そのピエゾの技術がこの臨床の分野でも入って来てるんですよね。

平岡: はい、そうですね。

トシ: ちょっとこのピエゾについて、分かりやすく。

平岡: そうですね、難しいんですが。よく例えられるのが、車の運転になるとオートマチックとミッション車ということになるんですが。
これまでの顕微授精技術というのはどちらかというとミッションですね。マニュアル車を運転するようなもので、当然最初覚えるまでに、オートマを覚えるよりはすごく時間がかかったりだとか、当然そのドライバーのセンスがすごくあればすぐ習得できるけど、習得するには一定の時間がかかるというところが今までの顕微授精技術で。 
決して今までの顕微授精技術が悪いということではなくて、一人前になるまでにやはり時間を要するというところが問題だったんですが、このピエゾというのは簡単に言いますとオートマ車を運転するみたいな感じなので必要最小限、その運転の仕方を覚えさえすれば、後はオートマを運転するように運転ができるということなので、一番大きなメリットとしては新人、若い子を育てるときにすぐ路上に出るのがマニュアル車よりは早いってことがすごくあると思います。
そうすると、培養士間の技術の差が無くなるというのが、僕の考えるピエゾの良いところだと考えてます。

トシ: ありがとうございます。実際このピエゾを使った顕微授精というのは、だいたい世界で言うと半々とかなんですかね?

平岡: いや、これがあの、今、世界ではほとんどやられていなくて。これもたまたまなんですが、僕が2015年にそのピエゾという顕微授精技術が今までの方法よりもどうも安定しているようだ、という論文を発表しまして、それから少しずつ。以前から、僕が発表する前にも発表はあったんですが、いかんせん数が少なかった。論文にすると多分3報ぐらいしか無かった。

トシ: 少ないですね。

平岡: はい、無かったということと、いくらオートマとはいえ使いこなすまでにちょっとしたコツが必要なので、それがなかなかみんなに伝わらなかったので。あと最初、先行投資でお金がちょっとプラスアルファいるので、あえて買う必要無いじゃないかという形で広まってなかったというところなので。今おそらく、日本でそのピエゾってのを使われているのはだいたい3割から4割。

トシ: なるほど。5割はいってない?

平岡: いってないですね。世界に関しては僕が知る限り、ピエゾを使ってる施設は全世界入れても多分5施設あるか無いかぐらいですね。

トシ: あ、そんなに少ないんですね。

平岡: 全然まだ広まってない状態ですね。

トシ: 僕ちょっとすごい不思議っていうかね、大学時代の研究のとき、ピエゾは必須だったんですよ。なので顕微授精イコールピエゾっていうぐらいなイメージだったんですけど、今ちょっと臨床の分野ではそうなんですね。

平岡: 最初にお話しした、多分マウスの場合だとサイズが小さいので、ピエゾを使わないと卵は死んでしまうという状態なので、実験動物の世界ではもうそれが当たり前ということです。

トシ: こういった違いがあるのも不思議というか。先生はもちろんピエゾを使ってらっしゃる側なんですよね。ピエゾを導入しようとする施設に対してはもちろんこう、トレーニングに行ったりはされてるんですよね。

平岡: そうですね。指導に行かせていただいてます。

トシ: やっぱりあれですか、そういった受精率がなかなか安定しないところにはピエゾを入れてあげた方が。

平岡: というところもありますし、新人教育の期間を短くするということがすごく培養士を養成する上で大事なことなので、そういったこともしたいということと、あと細かいことを言うと、よりピエゾの方が精子を入れるところがすごく優しいというところがありますので、お医者さんの中にはより優しく精子を入れてあげたいということで、ちょっとピエゾを教えろっていう方もいらっしゃいます。

トシ: やっぱりこれ、今日のテーマ「受精卵の質」という面から見ると、卵に対して優しくしてあげたい、というのでピエゾはすごく一つの良い手というか。

平岡: そうですね。ただ、それだけではなくて結局そこに行きつくまでの操作がどうだとか、女性のおなかに相当するインキュベーターと呼ばれるところにどれだけ早く返してあげるかといった、そういうところも結局気を配らないと。
顕微授精だけをいくら丁寧にしてもその前後がありますので。そこら辺の操作をいかに優しくできるかというところがその質を上げるというか、質を落とさずに持っていけるという大事なところだと思います。

西村: さあ後半も、亀田IVFクリニック幕張より平岡先生にお話を伺ってまいります。

卵子にストレスを与えないためのテクニック

トシ: さっきの顕微授精の話があって、その前後も大事だという話があったんですけども。まずその前、というと、どこから前になりますか?

平岡: これはもう、卵子を外に取り出した瞬間からもう勝負が始まってると思いますので、そこからいかに卵子を冷やさないようにするかであったり、顕微授精する前は卵子の周りを覆っているモサモサした卵丘細胞を外さないといけないので、あそこもどれだけ優しく短時間で外せるかっていうところが、二つ大きくポイントとして挙げられるかなと思います。

トシ: そこ、どれぐらいの時間で取り外すんですか?

平岡: これはまあ、うちのルールでいきますと、1個あたり1分以内で外すように、と指示を出してます。

トシ: 早い。

平岡: 外す前に酵素につけないといけないんですけど、その酵素につける時間もできればもう30秒以内でと制限をして。その後、卵子と同じぐらいの大きさのストローで出し入れをして周りの細胞を落とす、と。そこで怖いのは、早くやれと言うと、卵子よりもかなり小さいサイズで出し入れすれば簡単に外れるんですけど、そうすると卵子が今度は中で潰れてしまうので。

トシ: なるほど、ストレスになって。

平岡: それが結局質を落とすということになりかねないので、そこら辺の兼ね合いは気を付けるようには指導をしています。

トシ: それから顕微授精を行って、その後となってくるとそれは培養の部分?

平岡: 培養の部分ですね。なのでもうここは、いわゆる培養液というのは人で言うお風呂みたいなものなので、そのお湯をどれだけ冷やさないか、とか。後は当然、受精卵っておなかの中にずっといますから、無駄に光を当てないとか。とりあえずもうお風呂の中にずっと。
なので、培養液をいかに守ってあげるかというところになりますので、先ほどお話に出てたタイムラプスインキュベーター。外に出さずに受精卵の観察ができるというのもすごく一つ大きなツールかなとは思います。あと当然、タイムラプスがあるから安心って訳ではなくて、受精卵を凍結保存するときとか、外に出すときには他の子も一緒に出さないといけなくなるので、そういったところもどれだけ凍結する子を出したらすぐ、いかに戻すかといった、そういったすごく小さいところではあるんですが、そういうところも質を落とさない上ではすごく大事なところかなと思ってます。

培養液にも工夫

トシ: あの、ちょっと気になったのが、培養液ってたくさん種類がこう、いろんなメーカーさんから出てると思うんですけど、いったい何種類ぐらいあるものなんですか?

平岡: ええと。

トシ: 僕もちょっと今、すごい気になったんですけど。

平岡: そうですね、僕が知る限り、おそらく日本国内で10社近くあるんじゃないかと思います。

トシ: 10社もあるんですか? へえー。それを、クリニックの経験と成績で選んでいくんですね。

平岡: 経験と成績で、はい。どれが良いかというのを。

トシ: なるほど。それで、決められた培養液を使って、このクリニックのプロトコールに従って、ですよね。

平岡: そうですね、なので1種類だけだともしかしたら、化学的な表現では無いんですが、培養液と患者さんの受精卵の相性が合わないかもしれない、というのもあるので何種類か準備をして。例えば1回目、あんまり相性良くなさそうだなと思ったら、2回目はちょっと別の会社に変えるといった形でやってます。

トシ: ちょっと思いました、やっぱり各社、メーカーさんが出してるけれども、各社がベストだと思って出してるはずなんですね。それを思った根拠まで追っていくと、多分相性があるはずだと思うんですよね。そうやって、やっぱりいくつか取り揃えているものなんですね。

平岡: そうですね。うちは3種類、一応準備してやってます。

トシ: へー。ちょっと僕にとって新しい話でした、ありがとうございます。あとその、ストレスを限りなく無くす、これは卵子の質を上げることはできないから、下げるのをできる限り抑える考えですよね。

平岡: そうですね。

それぞれの工程でベストを尽くす

トシ: 言ったら、卵子を採ったときが1としたら、そこから卵丘細胞を取り除くのにストレスがちょっと加わる。顕微授精でもちょっとあるかもしれない。そうなったら培養環境、例えばどの培地を使うかなどもあるかもしれないと。で、胚盤胞期胚になって、それを凍結する直前、凍結するときですね、にもストレスがあるだろうという中で、実際に卵の気持ちになってみないと分からないものだと思うんですけど、あれですか、凍結保存から融解させたときにストレスを、もちろん見て分かる訳がないんですけども、でも胚培養士さんから見て、日々いろんな卵を見ていく中で、この卵なら絶対これうまくいくだろうな、とかやっぱりあるんですか、そういう思う瞬間。

平岡: グレードっていうことでいくと、まあグレードが高い方がうまくいくだろうなというのはあるんですが、自分の子どもみたいな感じで思っているので(笑) 少しグレードが悪くても信じてあげたいって形になってしまってますね。
 でももちろん、冷静にグレードというのを見ると、やはり高い方が解凍した後の元気さ加減もやっぱりグレードが高い方が良いというのは、それは残念ながら間違いないですね。

トシ: 私、たまに先生から質問を受けることがあって。ERA検査をして着床の窓も見つけて。この卵なら絶対着床、妊娠するはずだと思って戻したけど駄目だったんだっていう。何か考えられる原因無いかなってこう問い合わせがあるんですね。そういうとき、一番困るんです私。これまですごい経験積んでらっしゃる先生たちが、これはいけるぞって思って戻したのに、着床、妊娠しなかったときに、何か考えられる原因無いかなと問い合わせもらうんですけど、回答を持ち合わせてない訳ですよ、僕らも。これが一番難しい(笑)

平岡: 僕もちょっと難しいところであって。当然思い通りの結果が得られなかったときっていうのが、もしかしたらどこかで操作上でストレスを抱えてしまった部分がちょっと大きくなった部分があったのかな、と反省をしないといけないですし、なるべく反省をしないで済むようにそれぞれの工程でベストを尽くさないといけないな、と考えてます。それが全部かみ合ったときに初めて、例えばERA検査の結果と合うとかってことに多分なると思うので。全部がやはりうまくいかないと、なかなか良い結果ってのは得られないかなと感じてます。

西村: 3週にわたって亀田IVFクリニック幕張の平岡謙一郎先生にご出演いただきました。最後に平岡先生、皆さんにメッセージをぜひお願いいたします。

平岡: はい。一応、培養士をやる上でどういうことを考えているかということを挙げさせてもらいますと、患者さんの受精卵も自分たち夫婦の受精卵のつもりでお世話をさせていただいている、という形で仕事に取り組ませていただいております。もし今回の番組で当クリニックに興味を抱いていただけたのであれば、ホームページ等を見ていただければと思います。

西村: あの、亀田IVFクリニック幕張では、先生方のタッグがすごい力強いんですって?

平岡: そうですね。お医者さんがすごく、一緒に、密に連絡を取り合いながら、どうやったらうまくいくだろうということを日々話し合ってます。

西村: ぜひ皆さん、ホームページ等チェックしてみてください。3週にわたってご出演いただきました平岡謙一郎先生でした。ありがとうございました。

平岡: ありがとうございました。

トシ: ありがとうございます。

西村: トシさん。いろんな話題を本当にこの番組でご紹介しているんですが、今後はどんなお話したいとかあります?

トシ: 次週、ぜひ話をしたいのは、受精卵の染色体が2本ずつあるかどうか、とかですね。そういった着床前の検査についてお話ししていきたいと思っています。

西村: うんうん。新情報が、ある?

トシ: そう、なんか日本でも、ようやく着床前検査をスタートするという話がちょっと来ていてですね。そのことについてちょっと触れたいと思います。

西村: はい。ぜひ皆さん、来週もお楽しみに。

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