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Vol 72:着床前検査と着床前診断の違いについて

Tiempo de lectura: 3 minutos

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組情報

放送分:2019年9月15日放送分
テーマ:「着床前検査と着床前診断の違いについて」
番組を聴く:

番組内容

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの代表であり、理学博士のアンディさん、ラボマネージャーであり、工学博士のトシさんです。アンディさん、トシさん、よろしくお願い致します。

(二人): よろしくお願いします。

アンディ: 今週のテーマは「着床前検査と着床前診断の違い」についてお話を届けたいと思います。

染色体の異数性を調べるスクリーニング検査

西村: ここって結構言葉が似てるというか、分かりづらくて混同しちゃう場合もあったりとか?

アンディ: そうですね、もともと英語の名前ですね。
まず、着床前検査についてなんですけれども、元々の名前はPGS、英語で言えばpreimplantation genetic screeningという名前だったんです。screeningという意味では確定診断ではなくてスクリーニングという手法で良いものと悪いものを分ける、という意味だったんです。
一昨年か去年からですかね、名前が変わって。PGSじゃなくてPGT-A検査という言い方になって。preimplantation genetic testing for aneuploidy。aneuploidyは染色体の異数性、要は染色体の数が46本じゃなくて1本多い少ないとか、それによって異常が起きる、着床しない、病気になるとかいうような現象です。
ですからPGT-A検査着床前検査。日本語も診断じゃなくて検査という名前にしてて。要は確定診断ではありませんよ、という意味で名前を付けました。

トシ: このPGT-A検査という着床前検査の目的は、さっきアンディさんも少し話しましたけど、染色体の数がちゃんと2本ずつあるかどうか見るための検査です。
もし1本多い、少ないとなっていると、どうしてもその卵はおなかの中に戻しても着床しなかったり、着床したとしても流産になったりとかそういったことが起きてしまう。そういったものを前もって調べましょう、というのがこのPGT-A検査です。
方法はもう、今は次世代シーケンサというものを用いて、受精卵の胚盤胞期胚という細胞がたくさんある状態からいくつか、本当に5細胞ぐらい培養士さんが採取して、それを私たちがシーケンサと言われるDNA配列を見るやつですね、それで調べさせてもらうと。で、本当に2本ずつあるかどうかを見て結果をお返しする、となります。

PGT-A検査で採取する細胞の種類

アンディ: 実際採る胚盤胞の状態というのは、実は細胞はある程度偏っているんです。胎児になる部分と胎盤になる部分があって、胎児になる部分は採らないようにして胎盤になる部分のいくつかの細胞を取り出して。栄養分なので、おそらく、確証が無いですけれども、比較的影響が少ないと考えて、その栄養分だけ採ってその中のDNAを検査するという手法になります。

トシ: ここで、胎盤になる部分の細胞を採るので、見てるのはやっぱりそこなんですよね。胎盤になる部分の細胞を見てるんですよ。だからこのPGT-A検査の見えないところというのは、本当に赤ちゃんになる部分の細胞を見ている訳では無いので、そういった結果がちょっと変わってきたりとかそういったのは起こり得る検査ではあるんですね。
 これを弊社アイジェノミクス本社の方で、あれは2、3年前でしたか、臨床研究という形で出しましたね、論文の方を。

アンディ: うん、そうですね。

トシ: 実際にPGT-A検査をしたグループとしなかったグループですね。その間でどれだけの。

アンディ: 妊娠率の向上ですね。

トシ: そう、そうです。

アンディ: が、確認できて。もちろんその検査に費用がかかる訳です。実際に費用をかけて検査する場合は(妊娠)成功に至るまでは時間が短くなるんですね。時間の短縮効果があるんですが、検査代がかかってしまうのもあるんです。
じゃあもし検査しないで失敗したら、また不妊治療の費用がかかってしまうんですね。その場合のコストを比較をしたんですけど、検査をしても(合計コストは)高くならないというような結果が得られたんです。じゃあ、同じコストで。

トシ: 短期間で。

アンディ: 短期間で子どもができるというのは、患者さんにとっては非常にメリットのある検査になるかと思います。

西村: そうですよね。やっぱり妊活において時間というのが、本当に皆さん時間の中でどうされるかというところを常に思ってらっしゃると思うので。そこを少しでも短くできる可能性があるというのはすごくメリットですよね。

トシ: 特に日本は高齢での妊活をされている方が多いので、すごい大事だと思います。

アンディ: 半年、1年間でも大きな差がつくから。

西村: いやあ、そうですよね。

トシ: そうです、本当にそうだと思います。この辺りをこれから日本の方でもうまくやっていけたら、進んでいったら良いなとすごく思います。

西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。引き続き、今日のテーマは「着床前検査着床前診断の違い」についてお届けしております。さて、アンディさん。

遺伝子の突然変異を見る着床前診断

アンディ: はい。前半は着床前検査の話についていろいろと話したんですけれども、後半は着床前診断についてお話を届けたいと思います。
 診断と検査の違いは、着床前診断の英語は元々preimplantation genetic diagnosis、診断という名前を付けてるんですけれども、これも1~2年ぐらい前に変わって、今はPGT-M検査になったんです。前半の着床前検査のpreimplantation genetic testingまでは同じですけど、後半はfor mutationです。
ということは、見るものが違って。着床前検査というのは染色体の異数性、数が合っているかどうかだけの検査ですけれども、着床前診断は例えば突然変異が起きて、大事なところに変異が起きると一カ所だけの変異でも子どもが病気になる、というような突然変異ですね。それについての検査になります。

トシ: この着床前診断では、先ほどの着床前検査と同じように受精卵から調べる訳です。その胚盤胞期胚の将来胎盤になる部分の細胞を採ってきて、ここからDNAの中のもうターゲットは決まっているのが前提です。
例えばご夫婦、もしくはご親戚の中で、自分の家系にはこういったリスクがあるとか、こういった疾患があるかもしれないとか、そういったのが分かっていた上で、その遺伝子の問題のある部分をターゲットにして調べる検査です。なので、そこをターゲットにして調べるので診断という名前が付いていたんです。
受精卵をこう作った場合、例えばご夫婦で共通した遺伝子に変異があったと。ご本人たちは全然健康そのもの。でもこれは劣性遺伝といって、生まれてくる赤ちゃんが25パーセントの確率でご夫婦の両方の遺伝子が傷付いた部分が受け継いでしまう。そういった受精卵を4つ作ったときに、確率では1つはそういった疾患を持った赤ちゃんになってしまう。
それを遺伝子検査からどの卵が疾患になる、ならない。保因者になる、ならない。そういったあたりを明確に見る検査です。これをして戻してあげれば安心して、赤ちゃんが生まれたときに自分とは違う疾患を持ってない赤ちゃんが生まれるとかそういったことができる検査になります。

アンディ: 先ほど劣性遺伝の話だったんですけど、親両方とも保因者の場合ですね。保因者というのは劣性遺伝ですから本来染色体を2本ずつ持っているんですけど、片方だけ変異が起きても発病しないです。それを保因者と言いますけれども、ということは〇×1本ずつ持ってるんです。
お父さんもお母さんも〇×、〇×両方持っていると、〇と〇が子どもになると健常者になるんですけれども、〇×、〇×、だいたい50パーセントの確率ですけど、それはまた保因者の子どもが生まれるんですね。一番良くないパターンは、×と×がくっ付いて子どもが生まれると病気になるから、それを外さないといけない、というようなことを考えてこの検査がある訳です。

着床前診断と倫理審査

トシ: この検査で一番、日本では話題になるのは、どういった疾患であればこの検査が受けられる対象になるのかどうか、というのがよく話に。

アンディ: そうですね。いわゆる倫理審査というのがあって。病院の中でももちろんあるし、妊産婦の倫理委員会というのもこちらの検査に関しては一応規制しているものがあるんですね。

トシ: これってすごくやっぱり難しくて。お医者さんの立場からしても、産婦人科医から見た目線と、小児科医から見た目線とかこう、各先生の専門分野から見た目線によって見方はいろいろ変わってくるのがやっぱり一番難しいなって。これは私たち検査会社側から見てても、難しいんだろうなというイメージは持ってます。

西村: 実際この検査を受けられる方も、そこでいろいろ感じられることたくさんおありでしょうから。すごく倫理観というか、という側面からももちろん難しい。いろんな先生方のご意見をまとめるのも難しいところっていう。

トシ: でも本当、私たちから思うのは、当事者の気持ちをなんとかくみ取ってあげてほしいなあ、って思いますね。
 つい先週だったかな。ネットで着床前診断に道を、と題して、目のがんの女性患者が生まれてきた次男に遺伝していたって話が載ってたんです。なぜ今回これを取り上げたかと言うと、読むと、いま現状ではこの疾患はこの検査を受けられる対象では無いけれども、そういった道に緩和していく方向で進めようといった内容が書かれていたんですよね。
この患者さんの場合、目のがんですよね。確かこの女性の患者さん、奥さまの方だったかな、は片目だったと思うんです。もう片方の目は病気になっているんだけども、薬か何か飲んで治療しているから大丈夫だと。ただ、お子さんの方、次男の方に両目にがんになってしまって両方残念ながら、という形だったと思うんですけども、やっぱりそういった当事者になってみないと、本当にこれ、この検査があったのに、と後から思っただけでは悔やみきれない部分が出てきたりすると思うので。なかなか難しいけれども、規制緩和の方向へって書いてたので、その辺はそういう方向に行ったら良いなと、私はすごく思います。

西村: アンディさん、その辺どのようにお感じになりますか?

アンディ: いろいろ記事を読んで、もちろん彼が言ったように検査に対して慎重に対応していく必要があるのと、それから、先ほど言ったようにPGT-A検査PGT-M検査の区別がつかない記者さんもいる訳ですよね。ですから、実際記事を読んで誤解される方もたくさんいるかと思うんです。
着床前検査というのは本当に、染色体の異常を検査して、どの胚を戻せば着床率が上がる、それから流産率を下げるというような目的で検査している訳です。ただその着床前診断PGT-M検査、今までPGDで呼んだものなんですけども、やはり事前に、さらに手厚くカウンセリングしないといけない部分がすごくあって、もちろん倫理審査もより厳しくしていくものですから、その区別をはっきりしてもらった方が良いという思いがあって。

トシ: もうおっしゃる通り、その通りですね。
僕たちもよく、この着床前検査と言われPGT-A検査の話で依頼を聞いているのにも関わらず、話していくと何か遺伝子変異の話になったりするんですよ、たまに。いや、それ違いますよというのを説明しないと、これとこれ違うものだから、という話をする機会はあります、実際。この辺ちょっと、今後区別していくような形を、もっと私たちも明確に伝えていきたいなと思います。

西村: さて、お時間となりました。今日はアイジェノミクス・ジャパンのアンディさんとトシさんと一緒にお届けしてまいりました。
今週のテーマは「着床前検査着床前診断の違い」。これ結構大切な内容だったので、ぜひ皆さんね、この内容、ポッドキャストによる配信も行っておりますので、FM西東京のポッドキャストページからお聴きください。
それから、来週なんですが、アンディさん。

アンディ: はい、来週のテーマは「PGT-A検査の特別臨床研究」についてです。PGT-A検査というのは着床前検査ですね。着床前検査の日本産婦人科学会の特別臨床研究のお話をしたいと思います。

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