Vol 10:ミトコンドリアと生殖医療
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「ミトコンドリアと生殖医療」。ミトコンドリア移植(AUGMENT療法)についてもご紹介します。
番組情報
放送分:2018年3月11日放送分
ゲスト:
テーマ:ミトコンドリアと生殖医療
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術を紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの法人代表であり、理学博士のアンディさん。そして、技術責任者であり、工学博士のトシさんと、お届けしていきます。お二人とも、今週もよろしくお願い致します。
番組内容
(二人): よろしくお願いします。
西村: アンディさん。今週の話題は?
アンディ: 今週の話題は「ミトコンドリアと生殖医療」です。
西村: アンディさん、トシさん、よろしくお願いいたします。
もう気付いたら、あっという間にもう三月に入っておりますけれども。早いですけれども、もうそろそろ春が近づいてくれるといいかな、なんていうふうにも思うんですけど。アイジェノミクス・ジャパンは、会社が。
松岡: 東京の日本橋、人形町にあります。よくご存じですね。
西村: そうですよ。なんでかって、だってこのアイジェノミクス・ジャパンさんの「妊活ラジオ」のことも、Facebookページでご紹介いただいてますよね。街の風景のお写真とかもアップされてるんですよね、アンディさん。
アンディ: ある、と思います。気が付いてないですけど。
松岡: ありますよ。
西村: ありますよってトシさんがおっしゃってますけど。ぜひ、Facebookとかやられていらっしゃる皆さん、後はTwitterも『アイジェノミクス・ジャパン』で検索していただけると情報をお届けしておりますので、そちらも見ていただきながらこのラジオを聴いていただけると嬉しいと思います。
さて、今日なんですけれども「ミトコンドリアと生殖医療」というふうに、アンディさんおっしゃられました。ここで、はてな、ミトコンドリア? これ、先週のエンディングにも私言った言葉なんですけれども、この辺り、まずはアンディさん、いろいろ教えていただけますか?
アンディ: まず、ミトコンドリアっていうのはなかなか言いづらい言葉ですよね、私にとっても、この外人にとっては。
西村: なんか、久々に言ったかしらっていう。いつ言ったことある言葉かな、っていうふうに思ったんですけど、トシさん。
松岡: いや、ほんとに、この言葉を友達に言ったら「ミドリムシ?」って言われてしまって。
西村: あ、なんかでも、イメージがね?
松岡: イメージは似てるかもしれない。
西村: 似てるかもしれないですけど、全然違いますよね? 全然違います、皆さん。
アンディ: ミトコンドリアというのは、われわれの細胞の中でエネルギーをたくさん作ってくれる細胞器官、小器官です。このミトコンドリアというのは自分のDNAを持っているんです。進化の過程でもともと細菌、バクテリアだったんです。それが細胞に飲まれて今のミトコンドリアになったんですけれど、元々独立した細菌だったんです。
松岡: 今おっしゃるように、10億年か20億年前に細胞の中に入って、しかもミトコンドリア自身が持っていたゲノムDNA、これが一部細胞のDNAの中に取り込まれてしまったせいで、ミトコンドリア自身ではもう生きていけない。ひとりでは生きていけない、必ず細胞の中で一緒に増えていくしかないんです。
遺伝子の数、例えばヒトですと3万遺伝子とか言うんですけれど、このミトコンドリア、たった数十個しか持ってない、というか取られちゃったので。そういったミトコンドリアですけれども、とても大事な、私たちの細胞から手放せない細胞内小器官として。
西村: そんな存在なんですね。
アンディ: 西村さん、母性遺伝って聞いたことありますか?
西村: 母性遺伝? お母さんから遺伝する? 単純に漢字だけ言うと。
アンディ: 正しいです。
西村: 合ってます? ばっちりですか? よかった。
アンディ: 実は母性遺伝というのはミトコンドリアと非常に大きな関係があるんです。生殖の過程の中で、精子がある程度のミトコンドリアを持っています。卵子にはたくさんのミトコンドリアを持っているんですが、実際受精するときには精子のミトコンドリアは入れず、排除されます。入ったとしても分解されるんです。オートファジーという。
松岡: そうですね、オートファジーっていう機構があって。この機構、すごく面白いといいますか。よく細胞が飢餓状態、ご飯が無くなってくるとオートファジーっていう機構が働くんですけども、これがこの分野ではすごく大事で。特に卵って受精した後、卵自身の力でお母さんの着床まではひとりで生き抜かなくちゃ駄目なんです。そうしたら、そのエネルギーをどうしてるかといいますと、ここでミトコンドリアです。しかも、お父さんのミトコンドリアはエネルギーを作る訳では無くて、エネルギーを作るための材料として使われる、こういった・・・
西村: えー。エネルギーになっちゃうんだ。
松岡: ・・・そうです。エネルギーを作るための。細かく言うと、分解されて、アミノ酸ひとつひとつになって、そのアミノ酸が使われる。そういった機構があるんです。
西村: 本当に人間の体って不思議ですね。
松岡: 本当、不思議です。これはもう本当、不思議でしかない。
アンディ: 母性遺伝の話に戻りますが、お母さんからしかミトコンドリアが入ってこないことから、母性遺伝と言うんです。これによって世界中に分布するヒトから、あるミトコンドリアの配列をすべて調べてきたんですが、人類すべてのミトコンドリアについての母親を調べたところ、大昔にアフリカにいた女性が、人類のすべての・・・
松岡: 一番最初の。
西村: 起源の方がいらっしゃるという。
アンディ: ・・・先祖、と言ったらいいですね。ということが分かったんです。ですから西村さんもわれわれも、元々はアフリカから来たと考えられます。
松岡: すごい話ですよね、そう思うと。
アンディ: ミトコンドリアは実は生殖医療でも使われているんです。例えばミトスコアというのは、これは弊社の検査になるんですけれど。
西村: ミトスコア?
アンディ: ミトスコア。ミトコンドリアのスコアで、略してミトスコアです。これは弊社の検査にはなるんですけれど。
先週、着床前検査の話をしましたね。それは染色体の異常が、要は異数性が起きてるかどうかの検査だったんですが、面白いことにミトコンドリアというのは受精してからどんどん分裂していくんです。だいたい五日か六日ぐらい経ったら胚盤胞という状態になるんですが、それまでミトコンドリアはまったく増えない状態で分裂していくんです。ですので、細胞あたりのミトコンドリアの数はどんどん減っていくはずです。
でも、増えてくる場合があります。増えてくる場合は何かのストレスがかかって、何かの問題が起きて、一生懸命生きようとするときにエネルギーが必要だから、ミトコンドリアが増えてくるんです。ですから実際、検査するときにこの胚盤胞の状態でミトコンドリアは本当は少なければ少ないほど良いんです。増えてくる方が逆に良くない。
西村: ストレスがかかってるってことですね。
アンディ: はい。問題が起きてる胚なんです。
松岡: 逆に言ったら、卵が何とかして生き抜こうとしてミトコンドリアを増やしていってるんだけども、それは本来であれば着床妊娠に至るのはなかなか難しい卵だというような解釈ですね。
アンディ: 本来はエネルギーを使わなくてもスムーズには生きていけるんですけれども、一生懸命してるところはかえって問題が起きてる、ということが分かるんです。
松岡: このミトスコアなんですけれど、分かっているのは、年齢には依存しない・・・
西村: あっ、そうなんですか?
松岡: ・・・と分かっていて、卵に依存する。各卵によって、その数値はちょっと変わると、そういうのが分かっています。
西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。今日はアンディさんとトシさんと「ミトコンドリアと生殖医療」についてお話を進めております。
松岡: 後半はミトコンドリア移植、オーグメント治療、こちらのお話をちょっと。卵子に元気をつけるってことで、お話ししたいと思います。
西村: 卵子に元気をつける? アンディさん。
アンディ: 卵子に元気をつけるというのは、ミトコンドリアの移植ということなんです。ミトコンドリアを移植することで卵子に元気をつけるんです。これはある会社が考えた方法で、実際に大阪のクリニックの先生が使っているんです。今度、一緒に収録に来ます。実は、その方法には3つのステップがあるんです。
西村: じゃあ、その3ステップを皆さんにご紹介していきましょうか。まずアンディさん、ステップ1。
アンディ: ステップ1。患者さんから卵巣の組織を少し採るんです。
西村: ステップ2。
アンディ: ステップ2は、卵子の組織に、卵の前駆細胞というのがあるんです。要は、卵になってないけど、卵になる細胞があるんです。
西村: ステップ3。
アンディ: ステップ3は、この前駆細胞からミトコンドリアを採るんです。なぜかと言うと、元気なミトコンドリアが入ってるんです。その元気なミトコンドリアを採って、精子と混ぜて一緒に卵子に注入すると効果的らしいです。
西村: 今、効果的っていう言葉があったんですけど、具体的にどう効果が感じられるんでしょうか?
アンディ: 女性の卵子は年を取るとともにちょっと弱ってくると言われるんですけれど、実はミトコンドリアも関連しているんです。ですから、先ほど説明したように精子と前駆細胞のミトコンドリアを注入することによって、この発生〓ハッセイ〓(11:31)の段階で持つようになるんです。
松岡: 卵子に、エネルギーを生産するミトコンドリアをあえて入れてあげることで胚盤胞期胚まで育ててあげると。着床する前までの卵の状態に、ミトコンドリアを入れることで育ててあげる、こういった方法です。画期的な方法だと思います。
西村: 今日は「ミトコンドリアと生殖医療」というテーマでお話進めてまいりました。だいぶボリュームがこう、お話あったと思うんですけれども、さらにこの辺りを次のゲストの方にお話しいただくんですよね、アンディさん。
アンディ: 次はHORAC グランフロント大阪クリニックの森本理事長に来ていただきまして、先ほどの生殖医療とミトコンドリアの話について、実際使った効果とか感想について話していただけると思います。
西村: 先生には、東京にお越しいただくっていうことですか?
アンディ: はい。また大阪から先生がやって来ます。
西村: この番組は、いろんな先生方が実際にスタジオにお越しいただいたりとかしながらお話を進めてるんですけど、来週は、先ほどオープニングでお話ありましたけれども、会社の方に私、お邪魔しちゃっていいですか?
アンディ: はい、ぜひいらしてください。はじめてですけども。
西村: ぜひ。アイジェノミクス・ジャパンの会社の中からお届けをしていきたいと思っておりますので皆さん、よろしくお願いいたします。
(二人): よろしくお願いします。
松岡: 西村さん。ちょっとこういった情報もあるんですよ。
西村: あっ、何ですか?
松岡: さっき私が話したオートファジー。この機構なんですけども、この機構を発見したのは日本の大隅教授というのがいまして。数年前にノーベル賞を受賞したこの機構なんですね。この機構が卵子の発生にとても重要な役割をしているというのも、日本人が発見したその機構がこの日本の生殖医療の分野にも関わっているというので、とても嬉しい話であります。
西村: そして。あっ、アンディさんが私をじーっと見てらっしゃいますけど。「まだもう一言お伝えしたかったことがある」? あっそうなんだ。ぜひ、どうぞ。
アンディ: ミトコンドリアは、実は酸素呼吸と関わっていて。酸素呼吸があると、何があるか分かりますか?
西村: どういうことですか?
アンディ: 活性酸素が発生するんです。活性酸素というのは、日本語で言ったら何でしょう。ラジカルといって、例えば老化とか、いろいろ関わってくるんです。例えばラジカルがDNAに攻撃して細胞が死んだりしていくと、皮膚の老化とか、それに関わってくるんです。ですから、化粧品とか、よくラジカルとか言うんですけど。
西村: ああ、聞いたことあります、確かに。
アンディ: それとも関連してるんですよ。ミトコンドリアの話をすると、本当に本を書けるほど言えるんです。私もそれほど知識は無いんですけれども、今日は生殖医療の話に絞ってお話をお届けしました。
西村: ありがとうございます。さて、お時間となりました。今日はアイジェノミクス・ジャパン代表、理学博士のアンディさん。そして、技術責任者トシさんに「ミトコンドリアと生殖医療」についてお話しいただきました。来週はゲストの方、もう一度ご紹介をお願いします、アンディさん。
アンディ: 来週はHORAC グランフロント大阪の理事長、森本先生に来ていただきます。
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