Vol 11:ミトコンドリアと不妊治療
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「ミトコンドリアと不妊治療」。
番組情報
放送分:2018年3月18日放送分
ゲスト:HORACグランフロント大阪クリニック 森本義晴 理事長
テーマ:ミトコンドリアと不妊治療
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術を紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの法人代表であり、理学博士のアンディさん。そして、技術責任者で、工学博士のトシさんと、お届けしていきます。アンディさん、トシさん、今週もよろしくお願い致します。
番組内容
(二人): よろしくお願いします。
アンディ: 今日はゲストの方にいらっしゃっていただいてます。今日のゲストは、HORAC グランフロント大阪クリニック、理事長の森本義晴先生に来ていただきました。先生、よろしくお願いします。
森本: よろしくお願いします。
西村: アンディさん、トシさん。今週は、ちょっと聞いていただいている皆さんがお気付きの方いらっしゃるかもしれないんですけれども、FM西東京のスタジオを飛び出しまして、普段アンディさんとトシさんがいらっしゃるアイジェノミクス・ジャパン。人形町にございますけれども、そちらから、今日はお届けしていくんですよね?
アンディ: はい、そうですね。
西村: ぜひ、よろしくお願いいたします。先生のご紹介を、アンディさん、お願いできますか?
アンディ: 森本先生はHORAC グランフロント大阪クリニックの理事長です。先生からもクリニックの紹介をしていただけますか?
森本: 大阪から来ました。大阪で三つの大きな不妊センターを経営していると。年間一万人の方が体外受精を受けておりまして、患者さんは非常に広い、遠くから来るんです。一番遠い人はモスクワとか、中国、モンゴルなども来られます。今まで治療した患者さんが200万人。大きな不妊センターをやっております。
松岡: すごいですね。
西村: 森本先生と一緒にこの番組、お届けしていきたいと思います。さて、今週のテーマでございますが。アンディさん、トシさん。どんなテーマで先生とご一緒にお話ししていきましょうか?
松岡: 今日はミトコンドリアに関して、卵子の初期の段階からちょっと簡単にお話を伺いたいなと思って、先生の方をお呼びしました。
アンディ: ミトコンドリアと不妊治療も、前回、私とトシと二人で、少し簡単に説明したんですけど、今日は先生からお話をいただきたいと思います。
森本: ミトコンドリアって結局すべての細胞の中にあって、ミトコンドリアがもし不健康になってくると老化が起こったり、あるいは妊娠しないとか、流産するとか、産科ではそうですし、いろんな病気にもなりますよね。だから非常に必須の、小器官と言いますけど、そういうものです。エネルギーをも作るという、一番基になってる小器官のことを言います。
アンディ: ミトコンドリアに関してちょっと質問があるんですけど。先生、卵子の老化というのは、ミトコンドリアと関係はあると聞いているんですけど。
森本: 非常に大きく関係しています。今、リスナーの方もそうなんですけども、非常に年のいった方が多い。40歳以上で、遅く結婚して、そしてやっと病院に来られるって方もいるので。そういう方の卵子が、ミトコンドリアが不健康になってしまってる。そのために妊娠しないんです。だから、なんとかそのミトコンドリアを活性化して、若返りを図ろう、っていうのがわれわれがやってる研究なんです。
松岡: そもそも卵子って、やっぱりミトコンドリアが卵子を育ててるって言ってもいいんでしょうか?
森本: もともと卵子っていうのは、卵巣の中に卵子のもとみたいな細胞がありまして、それが順々に卵子になってくるんですけど、その中でミトコンドリアが無いと卵子が大きくならない。それから次、大きくなったら今度は精子と一緒に出会って受精をするんです、それができない。今度できたら、その後は今度、分割をしていって最終的には着床するんですが、その分割ができない、着床もできない、といろんなことに関係をしておりますので、このミトコンドリア無しでは妊娠ということは起こらないんです。
西村: 先生、一つ質問なんですけれども。卵子はいつ、卵巣内にできあがるんでしょうか?
森本: 今、二つの説、というかルートがあって。一つは、幹細胞があって、その幹細胞から卵子ができてくるんだっていう、これは新しい説なのね。それまではある程度、胎児のときに100万個ぐらいの卵子があって、それを順々に使っていくんだっていうのが定説だったんですけど、今、ちょっとその二つの説に分かれていて。本当のところはまだよくは分かっていないのが、正直なところです。難しいんです。
松岡: その大事な卵子を作る上で、卵子成熟、というのがやはり一つのキーになってると思うんです。そことのミトコンドリアの関係というのをもう少し。
森本: ミトコンドリアって、すごい働き者なんです。細胞の中で一生懸命働いているんですけど、核の周りで働いたと思ったら、細胞の端の方にいって働いたりして、また帰ってくるみたいな、非常にハードワーカーなんですが。ミトコンドリアに力が無いとその移動もできないし、そういうふうに卵が成熟していく過程ですね、非常にドラマチックな動きをするんです。
もともと大きな核があって、それがこう、核膜が破れて、でまた融合するようなことも起こるので、その間のエネルギーってすごい要るんですよね。エネルギーはATPと言います。これを作っていかないと妊娠できないっていう方がいて。最近、非常に難治性の不妊症といいますか、何回も体外受精やってもできない方あるんですけど、その中のほとんどの方がもうミトコンドリアの異常なんです。
西村: 今お話しされてるミトコンドリアがとってもこう、大切な役割を果たしているというお話だと思うんですけれども、こう疲れちゃってたり、元気が無いミトコンドリアというのも存在してるんですよね?
森本: そういうことです。ミトコンドリアっていうのは、自分で自分の品質を管理しているというか、悪いミトコンドリアが出てきたらそれを治してもう一回使うとか、あるいはもうとことん駄目な場合は、貪食細胞というのがあって、そのミトコンドリアを食べてしまう、自分で自分を食べるんですけど、そういうふうにして悪いミトコンドリアを減らそう、減らそうとするんです。
活性酸素というものがありまして、人間は呼吸してるんですけど、その呼吸している中から出てくるのがその酸素の、良くない酸素があるんです。それがミトコンドリアをいじめるんです。だから、できるだけその活性酸素を減らすことによって、ミトコンドリアは元気になる。
西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。今日は、HORAC グランフロント大阪クリニック、森本先生にお越しいただいて、お話を進めています。後半もよろしくお願いいたします。
ミトコンドリア、先週に引き続いてですね、生命の神秘といいますか、本当に不思議な部分を先生にお話しいただいておりますけれど、アンディさん。
アンディ: 先生から後半は、ミトコンドリアはどのように不妊治療に役立つか、っていう話をいただきたいと思います。
森本: ミトコンドリアって、女性だけじゃないんです。例えば卵子ではものすごく大きな役割を持ってるんですけど、精子も首のところにミトコンドリアがいて、それが無いと動かないんです。動かないと卵に入れないでしょ? そして妊娠しない、といったことがあるので、男女ともにミトコンドリアを元気にするということが妊娠に大いにつながる。そういう元気にする方法もいろいろあるんですよね。
例えば、いろんなサプリメントを飲むとか、運動をするとか。またこれは別の機会に話しますけど。それともう一つは、良いミトコンドリアを卵子の中に加えて追加していくっていう、ミトコンドリア移植という方法があります。
西村: ミトコンドリア移植? 移植ができる?
森本: そういうことです。
西村: 例えば移植って言うと、臓器移植って言う言葉はだいぶ皆さんポピュラーで聞いたことがあったりとか、身近に感じてらっしゃる方も多いと思うんですけども。健康な方のミトコンドリアを移植する、っていうイメージで合ってますか?
森本: ちょっと違うんです。われわれがやっているミトコンドリア移植っていうのは、自家ミトコンドリア移植と言います。つまり、自分のものなんです。皆さん、女性の中には卵巣の表面に卵子になる、先ほどちょっと申し上げた、卵子になる幹細胞、もとの細胞があるんです。その中のミトコンドリアはまだ元気が残ってるんです。いくら本人が老化しても、そこは若いんです。その幹細胞を採ってきて、その幹細胞の中のミトコンドリアを卵子に注入する、ということをしますと、卵子が元気になる、若返る。そういう治療を今やってる訳です。
アンディ: 先生、その、実際若いミトコンドリアが入った後に、古いミトコンドリアと混ざってる状態は、その後はどうなっていくんですかね?
森本: そこは、実はまだ解明されていない。われわれのこの方法で、今、なかなか妊娠しない、ひどい人は体外受精50回も60回もやってる方、そういう方にわれわれの方法を試したところですね、30人の方に試したその中の三分の一、10人が妊娠したんです。
そういう方のメカニズム、なんで効いてるのかっていうのは分からないんですが、やっぱりその入れたミトコンドリアがその品質をこう、改善するような働きをしてるんじゃないか。その悪いミトコンドリアの品質を高くするような働きをしてるんじゃないかというように考えられているんです。もちろんミトコンドリアの数を追加する、とそういうことによる効果もあるとは思うんですれども、そっちではなくてむしろ全体のミトコンドリア質が上がってくる、その刺激によってですね。
松岡: 質を上げるっていう。
森本: そういうことですね。ミトコンドリアっていうのは分割したり引っ付いたり、もう本当にめまぐるしいんです。一時間に五、六回やってるんです、それを。だからどんどん増えていきますし、どんどん減っていきますし。だから、良いものが入ってくるとそれに倣って、良いミトコンドリアが増えていく、ということがあるんじゃないかと思うので。
非常にまあ、そういう患者さんは長く苦労して、もう十年も体外受精やってるとか、一回も妊娠したことが無いというような方多いですからね。非常に、そういう意味では素晴らしい技術だと。
松岡: ミトコンドリアの話でちょっと思い出したんですけど、数が減ったり増えたり、あと、融合したりするんですよね? そういったこう、流動的、さっきあった卵子の成熟の過程で周りにいたり、核のまわりにいたり。卵子って大きいんですよ。だいたいその細胞の10倍の大きさはある訳です。その中で小さな小さなミトコンドリアがすごく動くって、それだけでもすごいエネルギーを使っているにも関わらず、卵子を成熟させてまた発生させていく、もうすごいことだと思います。
森本: 要するに、一個の細胞が60兆の細胞になる訳です。人間の体っていうのは60兆あるんです。それだけのエネルギーを持っている。それは全部ミトコンドリアによって起こる。それはやっぱりすごいもんだと思いますね。
西村: 先生、今ミトコンドリア移植のお話ありましたが、実際に先生のクリニックでもそうだと思うんですけれども、プロセスとしてはどういうふうに受けるのか、もしくは時間に関しても教えていただきたいんですけれども。どれぐらいの時間がかかるのか?
森本: まず、われわれの病院に来ていただいて、だいたい紹介される方が多いんですけど、もとのクリニックで10回も20回もやってるけども赤ちゃんができない、ということで。来られたら、まずはしっかりと話を聞いていただく。インフォームドコンセントと言いますけど、ご夫婦にこの成功率とか、それから危険性とか。まあ、あんまり無いんですけど、そういうことも申し上げます。
その次にやることは、卵巣の生検なんです。これは腹腔鏡というものを使って、6×6×1ミリ、つまり米粒ぐらいのかけらを三つ採るんです、卵巣から。その卵巣から採ったものから幹細胞というものを取り出して、これはその専門の技術者がいるんですけれども、そこからミトコンドリアを採る。
そのミトコンドリアをどうするかと言いますと、二つに分けます。一つはそのまま使う分。それからもう一つは、凍結をして置いとくんですね。次にもう一回使えるんです。最初の分を、今度は顕微授精というのがあります。精子を卵子の中に注入する方法。そのときに精子と一緒にミトコンドリアを卵の中に入れる。これが過程なんです。
まあ、腹腔鏡というので二泊ほど入院をせないかん、ということが一つあります。だけどまあ非常に簡単な手術なので、非常にその、大きな影響は無いということです。
松岡: その注入された卵は、注入してない卵と比べてどういうふうな発生の違い?
森本: はい。びっくりするような発生をすることがあります。例えば、胚盤胞というのが最後にできるんですけど、そこまでいかない方がもうほとんどなんです。もう私見たこと無い、っていう方が、その胚盤胞ができたみたいです、もうピカピカの卵になるんですよ。それで妊娠するんですよね。
非常に面白い症例があったんですけど、その方はがんで、抗がん剤を6回ぐらいやって、そしたら卵がボロボロになって。
松岡: そうですよね、卵巣に影響が。
森本: もう全然妊娠もしないし、卵も採れないです。そういう方にやってみたところ、卵がもうピカピカになりました。で、妊娠されたんです。だから、逆にさかのぼってみると、抗がん剤の影響はミトコンドリアが駄目になったんだ、逆に学問的には分かったっていうことが。がんを克服して、赤ちゃんができないって悲しいじゃないですか。そういう方ができたので、本当に喜ばれた例があります。
西村: さて、お時間となりました。今日はHORAC グランフロント大阪クリニックの森本義晴先生をお招きし、アイジェノミクス・ジャパン代表、医学博士のアンディさん、そして、技術責任者のトシさんと一緒にお届けしてきました。
さて先生、今日は私ども、スタジオではなくてこのアイジェノミクス・ジャパンにやって来たんですが、先生も、こちらにはなかなかいらっしゃる機会は無いんですか?
森本: 初めて来ましてですね。
アンディ: ありがとうございます。
森本: 素晴らしいラボがあって、びっくりしました。
西村: ラボの説明をぜひ一言、アンディさん。皆さんに、どんな施設があるか。
アンディ: ここに次世代シーケンサーっていう機械が置いてあるんです。これを使うとDNAの配列を読むことができて、それで発現解析とかいろんな遺伝子検査ができるんです。弊社はもちろんその不妊治療に関わる遺伝子検査全般の検査を行っております。
西村: はい。そして、来週はどんなお話、テーマで進めていきますか? アンディさん。
アンディ: 来週も森本先生に来ていただきまして、不妊治療における統合医療についてお話をいただきます。
西村: 来週も先生、よろしくお願いいたします。
森本: よろしくお願いします。
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