Vol 18: PGS(着床前診断)の現状と将来
病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「PGS(着床前診断)の現状と将来」。
番組情報
放送分:2018年5月6日放送分
ゲスト:IVF大阪クリニック 院長 福田愛作 先生
テーマ:PGS(着床前診断)の現状と将来
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番組紹介
ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。
この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術を紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの法人代表であり、理学博士のアンディさん、そして、トシさんでございます。今週もよろしくお願い致します。
番組内容
(二人): よろしくお願いします。
アンディ: 今日はIVF大阪クリニックの院長、福田愛作先生にお越しいただき、着床前検査の現状と将来についてお話をいただきましょう。先生、よろしくお願いします。
福田: よろしくお願いします。
西村: それでは今週のゲスト、IVF大阪クリニックの院長、福田愛作先生にご登場いただきましょう。先生、よろしくお願いいたします。
福田: こちらこそよろしくお願いします。
西村: 先生。私、今日、先生にお会いするのが楽しみで。福田愛作先生という、もうお名前がまずとってもハッピーな。ね、トシさん、素敵な(笑)お名前でいらっしゃるので、今日は先生、愛作先生と私たちお呼びさせていただいてもよろしいですか?
福田: はい。もちろんです。
松岡: ありがとうございます。
西村: では今日、愛作先生、ご一緒によろしくお願いいたします。
福田: はい、お願いします。
西村: まず、愛作先生。クリニックのご紹介を皆さんにお願いできますか?
福田: 私のクリニックは大阪府東大阪市というところにあります。東大阪と言いますのは文字通り大阪の東の端にあります都市なんですけど、そこで年間だいたい3,000件の体外受精をやっております。私のクリニックの特徴は、一つの独立したビルですので、いわゆるテナントのクリニックですといろんな方と遭遇しますよね。ですけども、患者さん以外はこのクリニックには来られないということでプライバシーとか、それから患者さん不妊治療に関していろいろ気にされますよね? そういう面が非常に患者さんにとっては良い環境ではないかと思ってます。
西村: さっそくなんですけれどもアンディさん。この番組にメッセージが届いたんですよ。なので、アンディさんと先生でご一緒にお答えいただければと思うんですが、先生よろしいでしょうか? では、ラジオネーム「ゆきんこ」さんからのメッセージ、ご紹介させていただきます。「エイジングの話が番組でありましたが、妊娠に関しては見た目だけでなく実年齢が重要になりますか? 見た目の若さはあくまで見た目なので、妊娠力に関して重要なのは実年齢なのでしょうか?」というふうに質問をいただきました。
アンディ: はい。そうですね、私から見ると実年齢というのは、一番大事なのは特に35歳以降。今日の話題にも関わってきますけど、実際不妊治療をするときに胚ができて、その胚の中の異数性、まあこれ、海外のデータなんですけども、歳をとるとともに異数性が起きる確率が上がってくるんです。ですから40歳になってくると異数性が起きていない胚は二割あるか無いかになるんです。特に卵子の方に起きるのですが、精子の方も、精原細胞も歳をとるとともに、男の人もそうなんですが突然変異が溜まってくるんです。そういうこともあって、やはり若いうちに妊娠ができたら一番いいと思います。先生、追加をお願いします。
福田: 女性は、僕は若く見えるほどいいかなあと。僕もその方が好きなんですけど、現実的には今、異数性というのは要するに染色体異常の卵が年齢が上がれば増えるということがあります。ただやはり、若く見える方の方が卵巣の年齢も若い人が多いと思います。ただし、若く見えても卵巣の年齢がいってるとか、それから、若くても卵の少ない人もありますので。AMHといいまして、ホルモンがありましてそれを測りますと若い方でも卵が多いとか少ないとかいうことも分かりますので、できたら若くてもそういうAMHを測るということを一度されてみたらいいかなと思います。
西村: 番組ではこのようにリスナーメッセージを皆さんから募集させていただいております。FM西東京のホームページからぜひ、愛作先生へのメッセージなどもお待ちしておりますので、ホームページから皆さま、お待ちしております。さて、今日のゲストはIVF大阪クリニックの院長、福田愛作先生にお越しいただいておりますが、さて、アンディさん。今週のテーマは?
アンディ: 今週のテーマは着床前検査の現状、ですね。海外、アジア、そして日本国内におけるPGSの現状について。まず、技術は多分、十数年前から応用されてはいるんですけれども、先生、その技術の沿革から少し話していただけますでしょうか?
福田: 先ほど言いましたように、女性は年齢が大きくなると卵の染色体異常が増えるんです。ですから、大きく年齢が上がれば上がるほど流産率が増える、と。そして昔から、流産した赤ちゃんの染色体を調べると染色体異常が70パーセント以上といわれます。で、それを検査しようということで体外受精が始まってからもう20年以上前に、体外受精の受精卵の染色体を検査する。実はこれ、世界初めての体外受精のエドワーズというのは、体外受精を始める前に受精卵の染色体の検査をしてたんです。これが将来必ず役に立つだろうということを予言してたんですけども、まさにそれが1990年代に始まりまして。その当時は染色体の一部に色を付けて染めてみるというFISH法という、魚みたいですけど、FISH法という検査をされてました。それでやりますと、染色体の二つ、三つとか多くても十いくつしか調べられなかったので、当初は受精卵の染色体の検査をしても流産の予防には結びつかないと言われてたんですけれども、ここ五、六年、新しい検査法ができまして。受精卵のすべての染色体の検査を一度にできるという検査が見つかってから、そういうことに意義があるということが分かりました。
松岡: 先ほど先生の方から話題に上がりました、最近、この五年間での新しい技術、次世代シーケンサ、NGSの登場ですね。これがようやく世に出てきて今、弊社、アイジェノミクス・ジャパンの方ではサーモフィッシャー社のシステムを使ってるんですけども、この登場によって全染色体が一度に解析ができるという技術が確立されました。この技術を使って今、海外、もちろんアジア、日本国内ですね。今先生の方から現状の方をちょっとお聞きできたらと思います。
福田: 今話があったNGS、新しい分析法なんですけれども、それは実は日本以外の国ではほとんど使われてます。それで、受精卵を事前に検査をして、正常な受精卵を戻せばもちろん妊娠率も上がりますし、流産率も減ります。ですから不妊治療を受けている患者さんには非常に恩恵になっています。ところがですね。日本ではこれ、禁止なんです。これが禁止なんですけど、実は日本でも出生前診断といいまして、妊娠した患者さんのお母さんの採血をして、その血液から胎児の染色体異常を知ることは許可されているんです。その検査、NIPT、新出生前検査といわれますけれども、新出生前診断をして異常と分かった方の90パーセント以上が人工妊娠中絶を選ばれています。ですから、染色体異常の子どもさんを妊娠するとほとんどの方は中絶されるんです。中絶というのは女性にとっては肉体的にも精神的にも非常に大変なんです。それは許されているのに、その受精卵を事前に検査する、いわゆるPGS、着床前スクリーニング。今はPGTAと言われるんですがPGSとここでは言います。は、日本では全面禁止なんです。これはもう非常に理不尽なことなんですね。
西村: 「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~」。今日は大阪より、IVF大阪クリニックの院長、福田愛作先生にお越しいただいております。愛作先生、後半もよろしくお願いいたします。
福田: お願いします。
西村: 前半のお話の続きが、アンディさん。
アンディ: はい。今、学会では日本でのPGSを許していないという現状を先生おっしゃったんですけども、実は弊社もこのPGSの有用性に関して全世界でランダム化臨床試験という臨床試験を始めたんです、4月に。残念ながら日本ではPGSが許されてないということで、こういう事情があってクリニックに参加していただけなかったのはとても残念でした。あと、先生に一つ伺いたいんですが。この学会で、多分倫理委員会でこういったPGSの検査を禁止しているんですけど、訴えている理由というのは?
福田: 日本ではPGS禁止なんですけども、ただやはり日本も重い腰を上げて日本産婦人科学会がついにPGSを始めましょうということで、四年ぐらい前に臨床試験として始めることになりました。それでまあ、遅ればせながらなんですけども、やっと昨年からパイロット・スタディというので約100名の患者さんに対してこのPGSの検査をして、これが有効かどうかということを日本でも検査しましょう、と。それで、もしこれが有効であれば将来的には日本でもオッケーにするということで、まずは検査を、パイロット・スタディをしましょうということで始まってまして。実は私、そのパイロット・スタディの小委員会の委員、日本産婦人科学会の委員もしております。パイロット・スタディには二つの種類がありまして、一つは流産予防というもの。それともう一つは、幾度体外受精をしても妊娠しないという妊娠困難な方。この二つの群に分けてパイロット・スタディを現在やっております。それでうまくいけば今年の終わりまでにはその結論が出て、どちらに転ぶか分からないですけども、もし有効性が示されればもっと大きな、数百人の本試験に進むということに現時点ではなってます。
西村: でもこの、海外と違って日本はこうだんだん徐々に緩やかにそういうことが進むんですね。
福田: 一つは、やはり日本は障害児を産むことに対して、そういう障害児自体が産まれることを阻止するということに関して倫理的なハードルが高いんです。ですから端的な例はダウン症の子供たちとかそういうことの出生に関して、ダウン症の子供たちでも立派に生きてる方たちがおられるので、その辺で倫理的ないろいろ問題があってですね。まあ、ストップしようという方の意見も、必ずしも私もそれが悪いと言ってる訳ではないんですけれども、多くの不妊治療を受けてる患者さんの権利もあるんではないかということで、その辺の葛藤がこういう現状になってると思います。
松岡: 愛作先生。私からもちょっと質問といいますか、疑問といいますか。今、PGSの技術は全染色体が見えるようになって、これによって必ずこの染色体が例えばトリソミーになってるとか、モノソミーになってるようであれば、もう流産するっていうのが分かるものがあるかと思います。そういったものを含めて、今日本ではまだ禁止されているということについて、ちょっとお聞きできますか?
福田: それは今、トシさんが言われる通りで。例えば日本ではPGDといわれる着床前診断は許されているんです。その中でいわゆる均衡型転座と、染色体が一部入れ替わっているような方。80パーセント以上流産するんですけど、そのような方でも日本では二回流産しないと検査をしてはいけないんです。ですから、一回流産されてわれらのクリニックに来られると、二回目の流産をするまで待つんですよね。だから、分かっていながら二回目の流産を見ないと検査をさせないという。これ、僕は非常に非倫理的なことだと思うんですけど、それが日本産婦人科学会の決まりになってるんです。ですから、PGS以前にPGD、いわゆる着床前診断においても非常に理にかなっていないことを患者さんに課しているというのが現状です。
松岡: ありがとうございます。何とか良い方向により早く向かうことを祈ります。
福田: やはり患者さんにはこういう検査を受ける権利があると思うです。皆さんにこれをしろと言うのではなくて、したい患者さんが自分の受精卵に対してこれをできる、という社会をやはり作るべきだと僕は考えています。
西村: さて、お時間となりました。今回のゲスト、IVF大阪クリニックの院長、福田愛作先生でございました。愛作先生、来週もぜひよろしくお願いいたします。
福田: こちらこそお願いします。
西村: そして、先生のクリニックのホームページ、今拝見させていただいたんですが。趣味はマラソン。家庭菜園。マラソンはどのぐらい走られるんですか?
福田: 昨日も実は10キロほど走ってきたんですが。マラソンが趣味で、実は4時間を切ったこともあるんです。
西村: アンディさん、トシさんは?
松岡: いやあ。走れないですね。フルマラソンは無理です。
西村: 最近スポーツは、アンディさん、されました?
アンディ: いや。そうですね、たまにジムに行くぐらいですけど。全然もう、走っても1キロぐらいです。
(一同、笑い)
西村: 先生、私も実はそうなので、このスタジオに今おります四人の中で一番、先生がエネルギッシュでパワフルということが(笑)これで分かりましたね。ぜひ愛作先生、来週もよろしくお願いいたします。
福田: はい。こちらこそ。
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