セミナー|SARS、MERS研究から考察する新型コロナウイルスの妊娠・妊婦への影響
FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。毎週さまざまな先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。
番組内容
2020年4月26日放送分
※2020年4月時点の情報です。
西村: 今日はFM西東京のスタジオ、そして人形町にございますアイジェノミクスのオフィスにお電話をつないでお届けしていきます。
本日のテーマは「カルロス・シモン教授によるCOVID-19と妊娠について」です。トシさん、リュウタロウさん。
(二人): こんにちは。よろしくお願いします。
西村: よろしくお願いします。さて、先週も話に挙がりました、このコロナウイルスの影響。不妊治療をされている皆さまもいろんなところで情報を得てらっしゃると思うんですけれども、今日はまず、日本国内のクリニックさんの状況を知りたいんですが。トシさん、少し教えていただけますか?
トシ: クリニックさま、私たちにとってはお客さまですね。クリニックの先生や看護師さま、そして培養士さまにお電話して状況をちょっと伺いました。学会から声明があってから、やっぱり各クリニックさまは移植の方を控えているという話を聞きました。
それでも患者さまによってはどうしても移植をしてほしいといった方もおられる、と。そういった患者様に対しては、先生も対応しているというような状況を聞いています。ただ、この話で私が感じたのは、緊急事態宣言が出されたところはやはり移植を控えているところが多い印象だったんですね。ただ、そうではない地域ですと、比較的患者さまの方は移植したいといった方が多いようですね。なかなか一律にはなっていないような印象を受けました。
西村: なるほど、同じ日本の中でも首都圏と違うエリアの方々で対応が違うということなんでしょうか?
トシ: そうですね。おそらく先生と、また患者さまも温度感が違うんじゃないかなと思います。都内のクリニックに通われる患者さまと、地方に通われる患者さまの温度感ですね。それが大きく違うんではないかな、と思います。
西村: なるほど。それから、私どもが取材でいろいろ先生方にご出演いただけましたけれども、結構、新幹線を使って治療にいらっしゃってるって患者さまもいらっしゃいましたもんね。
トシ: そのとおりですね。本当にそうです。
西村: そういった交通機関を使わないでどのように、といったところもありますものね。今オンライン診療って話題に挙がったりしますけれども、不妊治療に関してもオンライン診療されていらっしゃる先生方、増えてきてるんじゃないでしょうか?
トシ: もうおっしゃるとおりだと思います。まずクリニックの先生たち、土日を使って説明会をしてらっしゃるんですね。それがもうあちこち今、ウェブでの説明会に切り替わってますね。
家にいながら前に進んでいける、そういった話を聞ける、遠いクリニックの説明会にも参加できるというメリット等がありますね。
西村: なので、今後この「妊活ラジオ」でもそういったオンライン診療されている先生方のお声なんかもお届けできたら良いですね。
さあ、リュウタロウさん。先週は、アイジェノミクスのカルロスさんについてのお話と、それからウェビナーシリーズについてのお話がありました。今日もそちらについての続きをお話しいただけるんですよね。
リュウタロウ: そうですね。今日はまず第1回、4月2日(2020年)にカルロス・シモンが話したウェビナーの内容の解説をしていきたいと思ってます。
まず、テーマが「COVID-19と妊娠」ということで。ただ、このCOVID-19という病気がまだ出てきてからそんなに何カ月も経っていないのでまだまだ事例は少ないんですけれども、その中でもどういったことが分かるのか、というような内容のセミナーでした。
まずこれ、4月2日のセミナーなので4月1日の状況を話してるんですけれども、その時点でもうグローバルで感染者が82万人。ヨーロッパ46万人、アメリカが19万人。ただ、これはもう、日々どんどん増えているというのが今日の現状だと思いまして。カルロスも、これはもう、ものすごく特別な状況だと話していました。
まず最初にカルロスがすごく印象的なことを言ったのが、今回の新型コロナウイルスなんですけれども、特徴的なコロナウイルスで、実はCOVID-19という単語とウイルスの名前というのは別です。COVID-19というのは疾患の名前で、これを引き起こすウイルスの名前がSARS-CoV-2という名前なんですね。
西村: へえー。
リュウタロウ: つまり、2002年、2003年にはやったSARS(サーズ)の仲間で、もう一つ2012年にはやったMERS(マーズ)。SARS、MERS、そして今回の新型コロナウイルス、この3つがコロナウイルスの兄弟で、この21世紀に入って20年も無いという短い間に3つも重篤な感染症が出てきている、しかも同じ兄弟の中で、というようなことをすごく強調して言ってます。ここが非常にインパクトがあったところですね。
一方で、SARS、MERSと兄弟なので、そのSARS、MERSの事例を見ることで今回のCOVID-19についても将来どういったことが起こるのかってことが多少なりとも参考になるんじゃないかな、っていうのが今回のセミナーの一番の内容でした。SARS、MERSは早い段階で抑え込みがかなりうまくいってまして、SARSは拡大感染したのは31カ国、MERSが27カ国。ただ、今回のCOVID-19は4月1日時点ですでに194カ国に広がっているという、かなり状況は違うんですけれども、その中でもやはりSARS、MERSというのがものすごく参考になりますよ、というところですね。
もうニュースなどでも皆さん散々お聞きになっている内容ですけれども、このCOVID-19は潜伏期間が2~14日で平均5日で、入院患者の平均が50~56歳と言ってました。あと、高齢の方ですとか疾患を持った方、免疫に疾患がある方、妊娠している方のリスクは高いということを話していました。
※2020年4月時点の情報です。
リュウタロウ: トシさん、そのあとはウイルスの検査について少しカルロスが話してましたよね。先ほど話したようにSARS、MERSの兄弟なので、実は検査方法RT-PCRというのが。結構今、PCRというのがすごく身近な単語に今回いきなりなったんですけれども、実はこのSARS、MERSもまったく同じ、ですよね。
PCRと後はもう一つの免疫の検査もあって、免疫もこのコロナウイルスでの評価はどうなの、ってのは最近出回っている話かと思うんですけれども、SARSの場合はまずPCRをやって、もう一つがその抗体が作れているかどうかというような検査をやるってのがSARSの検査なので、今回の新型コロナウイルスもまったく同じ考え方でまずPCRで検査をするというのが現状ですね。
トシ: 今、PCRという言葉が出てきていますけれども、次に出てくるのはELISA(イライザ)です。ELISAという検査の名称のものがいずれ出てくると思います、ニュース等で。このELISAというものの方法は、タンパク質を認識してコロナを検出する方法となります。
リュウタロウ: そうですね。PCRはDNA、RNAという核酸を見ているんですけれども、ELISAあるいは免疫の場合は血清ですね。血液の血清を採って、ちょっと免疫の専門的な話になるんですが、IgDというものとIgMというものが挙がってきているかどうかを見る検査ですね。
これ、結構厄介なのが、今回の新型コロナウイルスが最初の4~5日が症状が出ないというところで、抗体の方もやはり増えてくるのがちょっと時間がかかって。早くて1週間ぐらいで、遅いと抗体が挙がってくるのが3週間ぐらいかかるので、PCRと組み合わせていくというところが必要なのかな、というような話をカルロスはしてました。
トシ: ちょうどこれがスライド番号では7枚目ぐらいですかね。
リュウタロウ: そうですね。免疫なんですけど、これはちょっと余談ですけれども、このIgD、IgMというのが、今までの私たちのテーマとはちょっとずれてはくるんですけれども、赤ちゃん、胎児は母親のこのIgDという抗体をおなかの中にいるときにもらうことで、産まれた最初の免疫をそれでやるということで、この抗体というところでも妊娠というところとすごくつながりが深い話かな、という感じはしましたですね。
西村: トシさん。多分リスナーの皆さまは気になってらっしゃるところだと思うんですけれども、さっきおっしゃられてたSARS、それからMERS、それから今回の新型コロナウイルス。このあたりに対しての症例というんでしょうか、データってあるんですか?
トシ: そうですね、あります。まず紹介したいのは、ウェビナーでも話はあったんですけれども、このSARSに関してのヒトに対する、細胞に対する受容体ってものにこのウイルスが感染するんですけれども、この受容体が体のどこで発現しているかというのはすでに2004年のときに調べられています。
この中で一番受容体が多く発現しているのは胚であるというのは分かっていて、精巣、卵巣であったり、子宮では発現はしていない。ただ、そうは言っても卵巣、精巣も詳しく見ていくとある細胞は特に発現しているとか、そういったことは分かってたんです。この報告が2004年に挙がっているんです。
ここから今回、COVID-19が起こりました。そしたら、すごく心配になってきますよね。実際の症例が集まって来ているので、ここをちょっとリュウタロウさんに話していただきます。
リュウタロウ: はい。SARS、MERSはそんなに感染として世界的に広がらなかったというところもあって症例は少ないんですけれども、やはり妊娠の所見というのはいくつか。論文ではSARSは17例、MERSは13例、実際にあったみたいです。ただ、やはり自然流産ですとか死産になったりというところも出てきてしまっているということがあって、過去の経験からはやはり妊娠されている方が感染した場合、これは症例が少ないので絶対にそうだと言い切れないんですけれども、致死率あるいは重症化しやすくなる、流産率が高くなるですとか、そういった事例は実際にはあるということなので、まずは感染しないように予防するというのが一番大事だというところです。
※2020年4月時点の情報です。
トシ: カルロス・シモンもそのときに少し話されたのが、おそらく感染したときに担当医、ドクターがある治療をするだろう、それによる影響もやっぱりあるだろうというのは言ってましたね。
リュウタロウ: そうですね。感染したというのが直接的ではなくて、処置によっていろいろ影響が出てしまったという可能性も否定できないので。そういう意味ではちょっと症例が少ないので何とも言えないですけど、という話にはなってしまいますよね。
西村: これから、アイジェノミクスでは世界中のいろいろなデータとかの蓄積をして、そしてより良い検査ができるような状態に、というのを普段からやられていらっしゃると思うんですけれども、このあたりはどうですか、リュウタロウさん。今後についていかがでしょうか、アイジェノミクスさんは。
リュウタロウ: そうですね、アイジェノミクスとしては妊娠というところに関して、より広い視点でバックアップといいますか、サポートをしていきたいということで、これからもCOVIDも感染症というところも含めて、カルロスはもっと研究に力を入れていかないといけない、ということを話していまして。こういったデータを蓄積して、より正しい対応ができるように、アイジェノミクスとしてできることをやっていきたいな、ということは話しています。
西村: はい。トシさん、それでは最後に皆さんにメッセージをお願いします。
トシ: こういった状況ですので、オンライン診療というのが最近トピックとして挙がってきていると思います。来週は、そのオンライン診療のシステムを提供している『メドレー』という会社さまに出てもらおうと思っていて。ぜひそこでオンライン診療が実際どんな形なのか、の話をしたいと思っています。実際に使っている先生にも登場していただけたらな、と思っているところです。
今、このような状況であっても、私たちアイジェノミクス・ジャパンは普段どおりに稼働しておりますので、ご質問等あればFacebook、Twitter、Ameblo、ウェブサイトなど、何からでも構いません。ご質問を投げていただければ私たちの方で対応させていただいております。
リュウタロウ: そうですね。弊社の方でも在宅でできることもいっぱいありますので。
西村: さて、お時間となりました。今日はアイジェノミクス・ジャパン、トシさんとリュウタロウさんと一緒にお届けしていきました。
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