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Vol 50:受精卵側の問題について~着床前検査の世界の状況や日本での流れ~

Tiempo de lectura: 1 minuto
西村さん、小柳由利子先生、トシさん

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。今週のテーマは「受精卵側の問題について~着床前検査の世界の状況や日本での流れ~」

番組情報

放送分:2019年4月14日放送分
ゲスト:東京HARTクリニック 小柳由利子先生
テーマ:「受精卵側の問題について~着床前検査の世界の状況や日本での流れ~」
FM西東京のページ:こちら

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番組紹介

ここからのお時間は「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」をお届けします。
最近「妊活」という言葉をよく耳にしませんか?
妊娠の「妊」、活動の「活」、ひとことで言えば文字通り「妊娠するための活動」という意味があります。
まさに妊活中のあなたに届けていく20分間です。

この番組では、ゲストをお迎えし、テーマに沿って不妊治療の最先端技術をご紹介していきます。
お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンの技術責任者で、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

番組内容

トシ: よろしくお願いします。今日はスタジオに東京HARTクリニックの小柳由利子先生にお越しいただいております。今日のテーマは「受精卵側の問題について」になります。

西村: さあ、今週も始まりました『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。トシさん、よろしくお願いいたします。

トシ: よろしくお願いします。

西村: そして、今日はゲストの方、お越しいただいております。東京HARTクリニックよりお越しいただきました小柳由利子先生です。先生、よろしくお願いいたします。

小柳: はい。よろしくお願いします。

西村: まずは東京HARTクリニックのご紹介と、それから小柳由利子先生の自己紹介を皆さんにお願いできますか?

小柳: はい。東京HARTクリニックは、東京の表参道にあるクリニックです。創業19年を迎えまして、この業界ではかなり老舗になっていますが、安定した治療成績に甘んじず、常に世界最高の医療を取り入れながら治療成績の向上に取り組んでおります。
 私は2006年に大学を卒業しまして、それから臨床研修、4年間の研究生活を経て、4年前から東京HARTクリニックで勤務しております。

西村: 実は先生、私の同級生も妊活で東京HARTクリニックさんにお世話に(笑)

小柳: そうなんですね。

西村: はい、なってたので。今日びっくりして。

小柳: 何かのご縁で。

西村: そうなんですよ。なので、いつもクリニックに行かれている患者の皆さんも聴いていただいている方多いと思いますので、ぜひ今週はよろしくお願いいたします。

小柳: はい、お願いします。

西村: さて、トシさん。今週のテーマなんですが。

トシ: 今週のテーマは着床前検査ですね。受精卵側の問題として、世界で行われている着床前検査について今日は話していきたいと思います。
 まずはその種類についてですが、主にPGSってものと、PGDってものの2つに分けられます。このPGSってものはスクリーニングですね。その受精卵から一部細胞を採って、その細胞の中の染色体が2本ずつあるのが普通なんですが、それが1本とか3本とかになってないかを調べるのがこのPGSになります。
 次にPGD。このPGDは診断になります。これは、ある遺伝的な病気のある人やそういった保因者ですね。もし遺伝子に傷がついていた場合、ある一定の確率でお子様の方にその疾患が出てしまうというのがありますので、このPGDという検査でそういった卵を前もって調べることができます。
 今はこのPGSのことを、世界的に名前が変わってPGT-Aという言い方になってます。やっぱりこのPGDの方も名前が変わってPGT-Mという形になっています。
あと、PGT-SRというものがあって、これはどちらかと言えばPGDの方に分類される訳ですが、これは検査としてはPGSと同じで、目的は流産を避けるのがあります。
PGT-SRは転座のことを指しています。転座とは、染色体としては2本ずつあるんですが、ある染色体の部分が別の染色体の部分にくっついてたりするのがあります、これを転座といいます。
続いて、検査方法についてご説明します。検査方法、これは胚盤胞期胚の栄養外胚葉という、胎盤になる部分ですね。その部分から細胞を5~10個採取いただきます。その細胞を私たちの方で、実際には増幅といって、そのDNAを増やして、次世代シーケンサーを使って網羅的にお調べします。これで実際にその卵が染色体が2本ずつあるかどうかをお調べします。

小柳: 胚盤胞の中の検査する部分というのは外側の胎盤になる部分なので、胎児になる部分を取る訳ではないんです。なので、産まれたお子さんにも特に影響は無いということが今までの報告では分かっています。

西村: そして、この検査方法。着床前検査をめぐる世界的な動きって、先生、どんな感じなんですか?

小柳: はい。PGSについては2000年ごろから世界中で行われるようになりまして、今では世界の約70パーセントの国で認可がされています。人口でいうと95パーセントくらいの方がこの検査の恩恵を受けることができるんですね。
 有効性に関する報告も、特に38歳以上であったり、習慣性流産のある患者さんに対してはその染色体の異数性の割合が増えていますので、それを調べることによって妊娠率を上げ、流産率を下げることができるというのが分かっているんです。
 でも、日本は非常に慎重な姿勢を示しておりまして、独自に2016年からパイロットスタディとして臨床研究が行われています。

トシ: 先生がおっしゃったそのパイロットスタディというのは、臨床研究を進めるちょっと前に、本来は臨床研究、多施設でやるんですが、その前に少ない施設数でやってみる、というのがこのパイロットスタディといいます。
 日本では慎重になっているようなんですが、その理由ってのはやっぱり何かあるんですかね?

小柳: はい。その議論されている理由としては、一つは有効性について。もう一つは倫理的な問題というふうに考えられるんですけれども、有効性に関しては先ほど申しましたように、海外で多施設の研究というのがすでに行われていて、その検査の技術も昔に比べるとだいぶ進歩してきたんです。その進歩に伴って有効性も上がってきている。なので、それに関してはあえて日本でやり直す必要も無いかもしれない。むしろ倫理的な問題の方が大きいかもしれないですね。
 倫理的な問題については、よく言われる命の選別とかいうことが言われるんですけれども。

トシ: そうですね、言われますね。

小柳: でも実際には流産しないための検査なので、戻しても産まれない卵というのを見分けているだけなんですね。なので、選別というよりはむしろ産まれる胚の選択の方なんです。これが、あまり一般的には理解されていない。

トシ: 言う通り、私たちもよく耳にする選別と選択って言葉、よく同じ意味で使われたりするけど全然違って。これは命の選別ではなくて選択だと、私もちょっと話を聞いてそう思いました。

小柳: あと、よくそのトリソミーで出産に至るのが21トリソミーのダウン症っていうのがあるんですけれども、胚盤胞の検査のステップから出産までのその期間で約7割がもう淘汰(とうた)されてしまうということが分かっているんです。
 なので、今普通に生活できているダウン症の方っていうのは本当にごくごくラッキーな例であって、ほとんどが流産とか着床しないという形で終わってしまうということも意外と知られていないことなんですね。

トシ: なるほど。

西村: 『妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ~』。今日はゲストに東京HARTクリニックより小柳由利子先生にお越しいただいております。先生、後半もよろしくお願いいたします。

小柳: はい、よろしくお願いします。

西村: もう、情報量がすごくたくさんあるんですが、後半、トシさん。

トシ: 後半は、その有効性についてお話を伺っていきたいと思います。先生、着床前検査の有効性なんですが、お願いできますでしょうか。

小柳: はい。先ほども話した通り、大規模な報告では38歳以上、習慣流産のある患者さんに対して非常に有効であるということが分かっているんですね。
 実際、体外受精では着床の問題と、あと、卵側の、胚の方の問題、2点しかないんですけれども、きれいな卵であっても着床しないということがよく起こります。
 その理由というのが染色体異常になってくるんですけれども、年齢とともにその割合が上がることが分かっています。35歳ぐらいだと胚盤胞の50パーセントぐらいが正常なのに対して、38歳くらいだと3分の1、41~42歳になると5分の1というふうに、年齢とともに正常の割合が下がることが知られていて、また、習慣流産の患者さんなどでは若くてもその異常な割合が多いということが分かっています。

トシ: あと、その着床の問題でもやってましたけれども、私たちのERA検査ですね。着床の検査、エラ検査、イーラとか言いますが、これは良い卵であっても着床の窓ってものがずれてるとどうしても着床できない、妊娠できない、と。こういうために私たちのERA検査ってのはすごく良い検査だと思っています。
 あと、EMMA、ALICEという子宮内の細菌叢(そう)ですね、そういった検査も私たちも出しております。この細菌叢というのは子宮内にラクトバチルス菌が多い方がより良いですよ、というのがメッセージなんですが、なぜ多い方が良いかというと、病原菌が入って来てもそれが増えないようにする環境を作るのがラクトバチルス菌だということで、子宮内の細菌叢検査、EMMA、ALICEってのを出しています。ちょっとすいません、紹介させてもらいました。

西村: そして、正常胚が100パーセント着床する、とは限らない。というお話なんですよね、先生。

小柳: はい。実際、世界中の報告でも、妊娠率が70パーセントというのが一番良い報告で、どうしても正常胚を戻しても付かない場合があるといわれていて、その理由の一つが先ほどの着床の問題なんですけれども、それ以外にも、検査によって細胞は少し減ってしまうのでグレードが下がったりとか、あとは免疫的に何かダメージを受けることで子宮の内膜に拒絶されやすくなるんではないか、というような仮説もあるんですね。

トシ: なるほど、実際に、そしたらその20~30パーセント、残りですね。100パーセントの妊娠率を目指すにあたって、20~30パーセントのところはまだ未知な部分が入ってるってことですよね。

小柳: 逆に、正常な胚を戻してみないと着床の問題については分からないので、着床の問題の解明にも正常胚を戻すということは重要になってくるんですね。なのでこの技術は治療でもあり、医療の進歩には必須の技術であると考えられます。

西村: 先生、これ実際にですね、日本で行われるためには? っていうところと、先生のこの件に関する思いをぜひ皆さんにお話しいただけると嬉しいんですが。

小柳: 日本では議論がまだ難航していて、正式なやり方でこの検査を受けることはできない状況なんですけれども、実際には日本はやっぱり治療年齢というのが他の国より高かったりするので、すごく需要はあるんですね。それに少子化の対策にもなると思います。
 どうしてなかなか議論が進まないかというと、やっぱり専門家の間だけでいろいろ議論はされているんですけれども、現場の声というのが実際にあまり考えられていないと思うんです。
ある専門家の中には、流産は繰り返せば累積妊娠率は同じなんだから流産を繰り返せばいいんだ、みたいなふうに言う人もいるんですけれども、やっぱり患者さんはお金も時間も費やして不妊治療しているので、そういう中で、妊娠した喜びから突然の流産という、すごく精神的にも苦痛が大きいし、身体的にもすごく大変だと思うんですよね。そういった患者さんの苦しみみたいなものがなかなか世の中に伝わっていないなと思うのと、あとは実際、医学的にも流産を繰り返すことによって卵の質が下がったりとか、あとは子宮の内膜がだんだん薄くなってしまって、流産を続けているうちにもう着床すらしなくなってしまうというような患者さんも実際には多くいらっしゃるんですね。
 なので、なるべく流産しない胚を戻すということが子どもを産めるかどうかの重大な未来に関わる問題になってくるんですね。そういうこともあまり知られていないので、私たちもこういった正しい理解を促すということが必要だと思います。

トシ: ありがとうございます。本当にね、今私話聞いて、日本でできないこの検査ですけれども、本当に早い段階で次のステージに行かないといけないんじゃないかな、と私思いますね。
 今って、私たちの検査会社でさえ患者さんから電話が来ます。このPGSをやりたいんですけれども、っていう話をこう振ってくるんですが、私たち紹介できないんですよ。まだ海外でしかできないので。患者さんも海外でしかできないのを分かっててかかってくるんですけど、やっぱりその後にあるのはやっぱりこういった現場の声と、流産になってしまう、による影響ですね。そういったものがあるっていうのが今、ちょっと私、そこのところはあまり詳しくなかったんですが。

小柳: 患者さんもやっぱり、最近は患者の会があったりとか、あとはキャンペーンとかを通して主張するということも可能な時代ではあると思うんですけれども、やっぱり患者さんが自分の体験を告白するのは勇気がいることだと思いますので、こういった現場の医師、私たちが代表して患者さんの考えをこうやって公共の電波で伝えるということはやっぱり一つの大きな役割なのではないかと思っています。

トシ: ありがとうございます。
 次週は、今日ちょっとお話しなかったPGDについてもう少し詳しく話していきたいと思っています。このPGDは片方の、例えばX染色体に傷がついていた場合、そうすると男の子が産まれると病気になってしまう。そういったものとかもありますので。
このPGDの検査はさっき話したPGSとは違っていて、2004年に初めて実施が認められています。実際施設数は徐々に増えて、現在は54施設でできる検査。PGDはできます。
なので、そのあたりをもう少し詳しく、症例と合わせてご紹介できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

西村: そしてさらに先生。来週はそのPGDに関する患者さんのお声もご紹介いただけるんですよね?

小柳: はい。ツイッターを通して実際の患者さんのお声をメッセージで募集しまして、その中から2つご紹介させていただきたいと思います。

西村: さて、お時間となりました。今日は東京HARTクリニックの小柳由利子先生とご一緒にお届けしてまいりました。来週も先生と一緒に「遺伝病と受精卵について」、それからPGDに関する患者さんの声をご紹介していきたいと思います。

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