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Vol 76:不妊治療のKPI~医師と培養士の連携について~

Tiempo de lectura: 2 minutos

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組情報

放送分:2019年10月13日放送分
ゲスト:亀田IVFクリニック幕張 院長 川井 清考先生
テーマ:「不妊治療のKPI~医師と培養士の連携について~」
番組を聴く:

番組内容

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのサイエンティフィックアドバイザーであり、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

トシ: よろしくお願いします。今日も亀田IVFクリニック幕張にお邪魔をして、院長、川井清孝先生からお話を伺います。今日のテーマは「医師と培養士の連携」についてになります。

川井: よろしくお願いいたします。

トシ: 医師、ドクターと培養士の連携についてなんですけども、先生。ドクター、医師は常に患者さんと毎日触れ合って、話を直接患者さんから聞いて治療を行っていく中で、培養士はラボの中で先生が採卵した卵をとって、それを培養してっていう、培養士さんって患者さんと触れない訳じゃないですか。過ごしている空間も時間も全然違う訳なんですけれども、そのあたりどういう感じなんですか? 先生はどれぐらい時間を取ってらっしゃるんですか? 培養士さんとの時間。

決定事項は全てメールに残す

川井: はい。ここは本当にもう程度問題がすごく難しいんですけれど、先日、ちょうどこのラジオに出た当院の培養室長の平岡と私が知り合って、タッグを組んで今年で6年目に入ったんです。4月に平岡が当院に来てくれたので、ちょうどまるまる5年経ったところなんです。この間、平岡とのやり取りを見ていて、どれぐらいあるのかなって。今、60,000通。

トシ: 60,000通?

川井: を、超えてくるような形になるんです。今、当院のルールとしてあるのは一応、夜の10時から朝の5時の間は「メールを投げるな」と。お互いに。

トシ: (笑)

川井: それがお互いのルールであって。最近この60,000通っていうのは、聞きたいことを投げても、もう今は比較的自分たちのプライベートな時間まで入っていかない訳ですから、まあ休みのときはメールをほっといてもらってもいい、と。それを追い詰めるようなメールはしませんが、そういう形でもうかれこれ5年経ったんですね。今でもやっぱり一日数十通のメールのやり取りはあるので、そういう部分で本当に「おはようございます」から始まるんですけど、僕たちの中ではそれが当たり前。平岡がそう思ってるかは別として。

トシ: (笑) 思ってないと思う。

川井: そういう環境でいるので、当院はよく言ってるんですけど、基本的に言った言わないというものを排除するために、まあこれはインシデント、アクシデントを避けるため。あと、コミュニケーションエラーを避けるために、基本的には決定事項はすべてメールとして残せ、というのが当院のルールになっておりまして。メールに残るか、議事録に残らないものは基本的に当院のルールとしては認めないというのが明確にあります。
 なのでそういう意味では、じゃあ言った言わない、あとは医者が悪い、培養士が悪い、患者が悪いということになってきてしまいますので、当院の中では何を基準にして、その培養士さんと今回の結果に対して振り返るかというものを基本的にずっと探していた、というのが現状なんですね。

トシ: 確かにそこは難しいですよね。だって結果としては、卵が移植したら妊娠しなかった、着床しなかった、または卵を培養したけれども胚盤胞期胚にならなかった、とかそういうことは分かりますけど、じゃあ誰が責任、になったときに難しいじゃないですか。

ラボ、ドクターそれぞれのKPIを定める

川井: はい、そうですね。これがトシさん、今良いものが結構あって。2017年に世界的にすごく大きい生殖の学会のヨーロッパ生殖医学会というところから、実際どういう項目を見なさいねっていうものを、コンセンサスミーティングといって、ある程度全体の、世界の著名な先生が集まって決めたインディケーター、指標があるんです。

トシ: 僕、それ知りませんでした。

川井: これが2017年に出ているんですけれども、ラボとドクターのキーパフォーマンスインディケーター、KPIというものがあって。これでわれわれ会話をしている、というのが一般的になってきてます。

トシ: 僕、日本のクリニックを回っていてこのKPI、この話を聞いたことが無いですけれども。僕、正直、培養士さんの知り合いって結構いる方だと思っているですけれども、KPIの話は聞いたこと無いです。

川井: このKPIというのはどういう項目があるかということなんですけれども、例えば受精率。これはIVFの受精率、ICSIの受精率、あとは胚の発生率、着床率。例えば何歳までの卵の場合でこれぐらい達していたらある程度培養成績は安定していますよ、あとはこれ以上だったらエクセレントですね、というライン引きが明確になっています。なので、こういう項目があるんですよトシさん。

トシ: ええー。でも、こういう項目があるなら多くのクリニック、全てのクリニックにあってもおかしくない、あった方が良いというかそういう感じが。もし僕が患者だったらそれが見たい、と思ってしまいますね。

川井: はい、そうですよね。例えばですね、なかなかですね。
これをじゃあ、われわれカルテにいろんな患者さま情報というのを入力をしていくんですけれども、これを多角的な観点から切り出すというのは結構なかなか難しくて。
例えばクリニックとして移植成績がこれぐらいですよ、こういう受精成績がこれぐらいですよ、と。ただ、例えばKPI、ヨーロッパで決められている39歳以下で射出の精子で、なおかつフレッシュな卵子で、というものによってすごく条件、クライテリアが厳しいんですね。それのためだけに抜き出しているということを今までしていなければ、そこを再度集めていくっていうのは結構大変なんです。それがやっぱりなかなか普及してない理由の一つなんじゃないかなと思います。

トシ: いやこれ、すごい難しいと思いますよ。でも先生は、それを取り入れているってことですか?

川井: はい。当院は、培養士と医師をつなぐ間の品質管理を取り扱うスタッフを常駐させているんです。
彼が結局、われわれ卵を採ってきて、その卵がちゃんと採れているか。実際その卵の成熟率が良いか。まずそこから始まって、パフォーマンスインディケーターというものがありますから、そこが悪ければ医者の採卵が悪いんだよ、って話になってくるんですね。

トシ: 先生の、責任。

データを集めて解析するための専門スタッフがいる

川井: そうなんです。その後は、そこが崩れていなければ培養室の先生がこれぐらいだよっていうのを、第三者的な目で基本的にデータをリアルタイムで出してくる当院のスタッフがいますので。
そのスタッフが随時、われわれがラボ業務をやっていたりとか診察をやっている間にそのデータをリアルタイムで更新をして、だいたい一週間に一度、その最新のデータを送ってくるというのが当院の仕組みとなっています。

トシ: へえー。僕、初めて聞きましたね。こういう品質管理は担当するスタッフがいる。いや、聞いたこと無いです。

西村: そういうものなんですねっていう、本当に新しい情報ばっかりでちょっとびっくりなんですけれども。

トシ: いや、僕も新しい情報ばっかりですね。これまでいろんな学会に出て、いろんな先生やスタッフと話をした中で、管理担当という方とはまだお会いしたことが無くて。初めて聞きました。

川井: いろんなデータから逆に解析をしていくんですけど、スクリプトといって、プログラムを書いて情報抽出を始めるところから始めていくんです。だから、ちょっとまあ、彼がやっている仕事を見ていて、われわれついていけないので。でも出てきたデータはリアルタイムのデータなんです。

トシ: 先生。私、この管理体制を見守るスタッフがいるところでまず驚いたんですけれども、その人が日々のデータを全部集めて抽出して、先生や培養士さんがこういったデータが見たいだろうと組み合わせて、データを出す訳ですよね?その中で、先生方の中で問題点とか、発見したこともやっぱりあるんです?

川井: はい、それは本当にたくさんあって。何を示したらいいのか迷うところなんですけど。例えば医薬品というところからいくと、今、卵巣刺激をしたりとか患者さまに投薬する薬というのは、どちらかというと、新しい薬が出てきているというよりは不純物が少ないとか、逆に患者さんに基本的には害が少ない、あと、使い勝手が良い。そういう薬剤がこの不妊業界では新薬として結構出てきています。

トシ: そうなんですね。

KPIを管理することで見えてくるもの

川井: 実際その新薬を使っていったときに、どうしても新しいものを患者さまのためにと思って取り入れるんですが、われわれがその薬に慣れるまでに一過性に成績が崩れることがあるんですね。
実際これは感覚で最終的には補正をしていったりとか、学会で意見交換をしながら補正をしていくんですけど、このPI、KPIを付けていくと落ちる瞬間がリアルタイムにも分かるんです。
なので、そういう意味では、例えば新薬を導入したときにやはり成熟率が落ちた、と。落ちたときにわれわれ医師が悪いのか、ラボの成績が落ちたんじゃないかと言い合いになりそうになった時期があるんです。
それで実際このKPIを見ていくとやはり新薬が、われわれとして患者さんのためにと思って導入した時期が少し成績を狂わせているという時期がありまして、じゃあその薬を使いながら元の成績に戻すのを求めるか、元の薬に戻すのかっていうのを随時これを管理をしながら見ていくということを日々行っています。
もう一つは培養液ですね。われわれ、患者さまに投薬するものというものは医薬品ですから、ある程度の品質管理ってものが徹底をされているんです。ただし、培養液であったり凍結液っていうのは日本の中でそれを規制する法律というものが、薬事法という訳ではございませんので、一応今でも研究用試薬という部類に入っているものを使っています。
 海外では培養液、あとはこういう凍結薬、そういうふうなものがメディカルデバイスといって、日本の薬事法に似たようなものですごく厳密に管理をされているんですが、日本ではそれに値するものがございませんので、逆にそれに準じた形で信用して使っていくことしかできないんですね。

トシ: なるほど。そうなんだ。

川井: ただ、こちらに関しても、やはり培養液などのばらつきなど。こういうロットが変わると成績が変わったりとか。あとはやはり使い方によって変わってきますので、実際当院も今まで4種類の培養液を使っていますが、この4種類の培養液のだいたい3カ月に一度ぐらいは基本的にその成績が崩れていないかどうか。これは、症例が多ければ1カ月に一回、症例が少なければ6カ月に一回でも良いと思うんですけども、ある一定の安定した成績が出るぐらいの数がたまったところで評価をする、ということを当院ではルーチンワークとして取り入れていますね。

トシ: 私ちょっとそういうの知らなかったんですけど、培養液もそうなんですね。いや、だって、たくさんメーカーさんあります。各メーカーさんもたくさん種類ももちろんある中で、結構難しい、そこを選択というのはとっても難しいと思います。

川井: 特に培養液であれば、マウスエンブリオアッセイといって、マウスの卵でちゃんと細胞毒性が無いかどうか、エンドトキシンを調べたりとか、そういう部分を見たりとか。あとはアンモニアの蓄積ですね。そういうものがやはり細胞毒性が強いですから、そういう部分を見て、それで安全性をクリアをしていく。というものが向こうでは基本的には項目として入っているんですが、やはりそれを通っていないものをわれわれは使う気にはならないので。

トシ: そうですね。ちょっと私、大学生の頃を思い出しましたよ。私が使っていたのはウシの卵とかマウスの卵だったんですけども、培地のロットがやっぱりあって、良いときの培地はまとめ買いしてましたね。なんかそういうのがありましたね。ちょっと思い出しました。いや、まさか日本の、薬事法に似たものが無いというか。あった方が良いような気がするんですけれども。

川井: やはり今、日本に600以上の生殖専門のクリニックがありますけれども、実際そこでは海外でちゃんと通ったそのメディカルデバイス、もしくは日本の企業だとしてもそれに準じた、ちゃんと品質管理をしたものを発売しておりますので、大きい問題は患者さんにとっては無いと思うんですけれども。
 やはり、中には実際、使い方が少しクリニックの相性とうまくいかないこともありますので、そういう部分はこのKPIなどの機能を使っていくと結構良い結果になってくるんじゃないかなと思います。

トシ: そうですね、見えてきますからね。感覚でやってしまうとどうしてもちゃんと分からなくて、それこそ本当、ドクターが採卵したのが悪いだとか、培養士の育て方、培養方法が、とかうやむやになっちゃうところを、こういったKPIというのを取り入れるとそれが明らかになって、どこに原因があったのかというのが。こうなると各クリニックとしてもレベルは上がるし、本当にこのキーパフォーマンスインディケーターというパフォーマンスですよね。

新たなKPIを模索していくことも大切

川井: 本当に、今のところではこのKPI、ヨーロッパの生殖医学会の方からでは、39歳以下の着床率という項目しかこのKPIには入っていないんですけども、それこそトシさん、ERA検査が出てきて、ERA検査をどのタイミングで入れると費用対効果が良いとか、あとは患者さんの効果が良いとか、このあたりも本当に次の10年の中ではすごく大事になってくるんじゃないかなって、最近すごく感じます。

トシ: 先生、ありがとうございます。そう、私もこのERA検査というものは着床不全の方を対象にしているとは言ったものの、じゃあ1回? 2回? 3回? 何回移植して駄目だった方が一番費用対効果が良いのかってところはまだ不明確です。先生がおっしゃるようにそこです。そういったところがこういったキーパフォーマンスインディケーターで見えてきたら、それは本当に私、思ってます。このERA検査というものはスタンダードになるはずだと思っています。ただ、スタンダードになったとしても、その使うタイミングというものが何かで伝わらなきゃいけない。それがこういったKPIで定まれば、すごく私たちとしても嬉しいですね。やっぱり費用対効果というところで、そうあってほしい。

川井: はい。一緒に探していければな、と思います。

トシ: 先生、ありがとうございます。よろしくお願いします。
 来週は「男性の妊活」ということで、精子側のクオリティ、質というものにお話を伺いたいと思っています。

川井: はい。とっても大事だと思うので、よろしくお願いいたします。

西村: なんかあれですよね、男性の妊活が今これから注目されるんじゃないかっていう感じで、映画の公開なんかもあるんですよね、先生。

川井: はい、ちょうど10月の5日ぐらいから映画の公開があるみたいで。当院も男性側の予約が入ったりしていますので、やっぱりすごく注目されているんじゃないかな、と思います。

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