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Vol 80:子宮内細菌は良い菌と悪い菌の割合が大切

Tiempo de lectura: 2 minutos

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組情報

放送分:2019年11月10日放送分
ゲスト:立川ARTレディースクリニック 院長 右島富士男先生
テーマ:「子宮内細菌は良い菌と悪い菌の割合が大切」
番組を聴く:

番組内容

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのサイエンティフィックアドバイザーであり、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

トシ: よろしくお願いします。今日はスタジオに、立川ARTレディースクリニックの院長、右島富士男先生にお越しいただいています。

西村: 右島先生、よろしくお願いいたします。

右島: はい。ご紹介にあずかりました、立川ARTレディースクリニック院長の右島富士男と申します。

(二人): よろしくお願いします。

右島: よろしくお願いいたします。

西村: 先生、まずはクリニックのご紹介を皆さんにお願いできますか?

右島: はい。立川ARTレディースクリニックは2010年、立川市の中心地であります曙町で10月4日に開業した不妊専門のクリニックであります。
 10月4日という日は、皆さん、どういう日かご存じです?

西村: 10月4日?

右島: これはね、だるまさんが七転び八起き、ということを聞いたことがあるかと思いますけど、その8回目の起き上がった日が10月4日なんですね。その日に合わせてわれわれのクリニックを開業した、ということでありまして。

(二人): へえー。

右島: どんな状況になっても立ち上がってまたやっていこうと、そういう気持ちの中で始めたクリニックであります。

西村: では今日は右島先生と一緒に。トシさん、今日は子宮内の細菌などについて?

子宮内細菌と出産の関係

トシ: そうです。先生からいろいろお話を伺いたいのは、妊娠を通して細菌というのが関わっているのはここ最近分かってきた内容ですので、そのあたりを昔のことからいろんな話を先生からお聞きしたいと思って今日来ていただきました。

右島: この細菌の話っていうのは、これはあの、最近の話じゃなくてですね。
 以前から、切迫流産あるいは切迫早産の原因として細菌感染症が大きな問題となっていたんですね。特に切迫早産ということになりますと、膣の中の環境、これはとても重要で。
主な細菌としますと乳酸桿菌(かんきん)、ラクトバチルスという菌がいまして、その菌が発する酸、それによって膣の中というのはpH4.5以下に保たれている。その結果として他の菌が発生しない。そのために他の菌の毒性を発揮させない。そのために切迫早産にならないというのが産科領域で実際に考えられていたことでもあります。
切迫早産で来た患者さまには、昔やっていたことなんですけれども、pHを測る、その結果として4.5以下であるか、4.5以上であるかということを調べることによりまして、ある程度この細菌叢の異常があった場合には細菌性の切迫早産であろうと判断することもありました。

トシ: そのときのpH値が細菌性の原因になった場合は、やっぱり中性あたりになるんですか? 7点、8点とか?

右島: 7ぐらいになる方もいますし、破水をしてしまっている方は7.4以上にもなっていますね。実際にその羊水も見られる方もいらっしゃいますし、他のような4.5以上、5とか6とかという方もいらっしゃいます。

トシ: これ、膣の話だと思うんですけれども、数年前は「子宮内は無菌だ」と、それが定説であったかと思うんですね。今回、この次世代シーケンサというものが登場して「やっぱり菌はいるよ」となってきたかと思うんですけれども、そのあたり、またお話を。

胚移植時に細菌が子宮の中へ移動することも

右島: そうですね。実際の子宮内の細菌ということになりますと、いわゆる細胞内寄生菌、とくに有名なのがクラミジア感染。あるいは、東南アジアで今でも大発生しておりますウレアプラズマの感染。そういった類の菌というのが主な子宮内の感染ではないかと言われていますけれども、二次的に子宮の中に菌が入っていくという、そういうこともある訳ですよね。
 一番その機会が多いのが、子宮の中に体外受精、胚移植の場合ですと、胚移植のときに頸管(けいかん)を介して子宮の中に。カテーテルに乗った細菌が子宮の中に入ってしまうということは簡単に想像がつくことですよね。

トシ: どうしても避けられない。

右島: それはもう、避けられないことですよね。頸管も比較的長いんですよね、数センチはあります。数センチの中にたくさんの細菌が存在している。その細菌が良いものかどうか、あるいは悪いものかどうかということによって、その移植された胚の運命が変わってくるということは往々にしてあることだと感じておりました。

トシ: 先生がそういうふうに考えられてたというのは、いつ頃からですか?というのも、私たちが検査として子宮内の細菌叢を見る検査を出したのはまだ1年前(2019年時点)です。

右島: 細菌の研究というのを意識しはじめまして。まあ本職ではないんですけれどもね、大学にいた頃からでありまして。
リプロダクションを中心にやる前のレジデントの頃からなんですけれども、細菌の影響というのはとても大きいなと思っていたのは、産科をやっていて切迫早産の患者さんに出会ったとき。このときに異常に感じたことであります。
やっぱり切迫早産の患者さんの、こんなこと言うと失礼かも知れませんけど、膣内は汚い。場合によっては臭いを伴うことがあります。普通の患者さんが外来で見られるようなそういう状況ではなくて、ちょっと顔を反らせてしまうような状況があるときもありました。これはどういう菌がいるんだろうか、ということを意識し始めたのが産科をやっていたという、そういうときの記憶としては残っております。

トシ: では先生。私たちアイジェノミクスから提供している検査、子宮内の細菌叢を見るマイクロバイオーム検査というのがございます。
これはもう、目的はラクトバチルスを子宮内に割合が多くあった方が良いというのを目指して提供する検査なんですが、先生どうですか? この検査をお使いいただいていて。

ラクトバチルスの割合が増えると子宮内のpH が下がる

右島: そうですね。われわれがいつも感じているのは、移植のときに子宮頸管に存在している細菌がカテーテルを通じて子宮の中に入っていく、そういう過程を考えたときに、どうしても頸管内の細菌が子宮の中に入っていくということは避けられない事実だと思っております。
 特に乳酸桿菌、いわゆるラクトバチルスと呼ばれているものですけれども、この菌が重要で、ある程度のたくさんの菌がいないと健全な子宮内膜を保つことができない。すなわちどういうことかと言いますと、ラクトバチルスの作る環境というのはpHを下げることですね。
膣内ですとpH4.5以下になることが一般的ですけれども、子宮内においてもpHを少し下げるということはとても重要なことで、どういうことを意味しているのかと言いますと、ラクトバチルスの存在によって悪い菌が入らなくなってくるという、そういう効果がある訳ですよね。
十分なラクトバチルスが移植された菌の胚の周りに存在しているということはとても重要なことではないかと思っておりますし、その結果として胚が他の悪い菌から守られているという、そういう環境を作っていくんではないかなと考えております。

トシ: なるほど。一方で、もし私たちのこの検査で結果が「病原菌がありますよ」と。私たちどうしてもこの慢性子宮内膜炎に関与している10種類をターゲットにして、いるかいないか、もしいたら何パーセントいるかというのを詳細に出します。このあたりの菌、先生のイメージ、いたとき胚に与える影響、どのように考えていますか? 今、イメージとしてですけれども。

pHが高いと悪い菌の割合が増えていく

右島: そうですね。健全な菌がたくさんいる場合、それは健全な菌によってその悪い菌が排除されるということも期待することは当然としてあると思います。
ところが健全な菌がいない、ラクトバチルスがそれほどいないという患者さんもどうしても出てくる訳ですよね。むしろその健全な菌よりも病原菌の方が多いという場合には、そういう状況で子宮内に胚が移植されますと、悪い菌にその胚が殺されてしまうというような状況が発生する訳ですよね。
数が少ない場合にはその健全な菌がやっつけてくれるということは期待できるかと思いますけれども、ある程度、一般的には5~10パーセント以上、そういった悪い菌が存在しているということになってきますと、そのエンブリオ、胚に対しての影響が大きいと考えられています。

トシ: 私たちの検査もその病原菌に対しては、数パーセントであれば私たちは大丈夫ですよ、特に気にする必要は無いですよという結果になります。やっぱり1割、10パーセントを超えてきたときに何らかの治療であったりとかした方が良いですよ、といったメッセージが入ってくる。やっぱりそのあたりですね。

右島: 悪い菌が入ってきますと、悪い菌の相乗効果が起こってくるんですね。乳酸菌の数が少なくなってきますと、当然子宮内のpHも上がってきます。その結果としまして4.5、それ以上ですけれどもpHの値が上がってくる。
そうしますと、細菌にとっては快適な環境になってくる訳ですよね。そうしますと、細菌の数が増えてしまう。細菌の数が増えてきてしまいますと、胚に対しての毒素がそれだけ増えてくる、あるいは攻撃性も増してくるということになるかと思います。
そういった菌がたくさんいる場合には、一般的にはその菌に対しての抗生剤を使っていくという治療方法が一般的になってくるのではないかなと思います。

トシ: 私たちのこの検査も、結果で得られた菌に対する抗生剤を提案する形を取っております。あくまでこれは推奨です。なので、これを使ってくださいという訳ではないんですけれども、この提供、提案する抗生剤で、やっぱり先生の経験から、耐性菌を持っているケースがやっぱりあるかと思うんですけれども、どれぐらいのイメージがありますか?

右島: 具体的に調べたことは無いんですけれども、耐性菌というのが存在することは確かです。どうしてかと言いますと、やはり東南アジアの方々が日本に入ってくる機会が多くなっている、と。それだけだったら良い訳ですけれども、あらゆる産業にその人たちが加わっていく訳ですよね。社会情勢の変化とか、社会的な側面もありまして、経済的に女性たちがお金を稼ぐ方法としての、手段としての一つの産業が発達しているという最近の状況を考えますと、どうしても広がってしまっているというのは事実かと思います。
 そういった方々が持ってくる細菌というのが、やっぱり日本には入っていなかった菌が大多数なものですから、当然その抗生物質に効かないような細菌も存在しているということは事実かと思います。

トシ: なるほど。ありがとうございます。

右島: そこで重要になってくるのが、細菌叢を変えていくという治療方法ですね。膣内に乳酸菌を投与する。あらかじめ細菌の変化をもたらせてくれるのがいわゆる月経。血液が入っていますと、当然膣の中のpHというのは4.5以下ではなくてそれ以上になっている。その時期から乳酸菌を投与するということによりまして、その中の細菌環境をその時点から変える。
 そういった場合には、最終的に子宮の内膜を測定する時期になってきますと、乳酸菌が支配的になってくると。それらの乳酸菌の力を利用して、耐性菌を含めた悪い菌を駆逐していくということが一つの方法として現在臨床応用されているという、そういう状況でございます。
※生理中の膣剤の使用は推奨されていませんが、海外では乳酸菌付きのタンポンが売られており、それを使用することで生理中から加療を開始することも可能になります。

トシ: とても分かりやすくありがとうございます。例えば私たちも、耐性菌がどうだったかというときに、再検査をして初めて分かる形なんですね。そういったときに、先生が仰ったようにラクトバチルスを増やしてあげることでそういった悪い菌が、耐性菌を持った菌が増えないように細菌叢を作る。

右島: そうです。

トシ: ありがとうございます。

西村: さて、お時間となりました。アイジェノミクス・ジャパンのトシさんと一緒に、立川ARTレディースクリニックの院長、右島富士男先生とご一緒にお届けしてまいりました。トシさん、来週はまた先生とご一緒にどんなテーマでお届けしますか?

トシ: そうですね、来週はこのERA検査。前から紹介している着床の窓の時期を見つける検査ですね。これを先生にもお使いいただいておりますので、そのあたりの話を伺いながら、テーマとしては「子宮内膜側のタイミング」として話を聞きたいと思います。

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