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Vol 81:子宮内膜の成熟度

Tiempo de lectura: 2 minutos

病院の先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組情報

放送分:2019年11月17日放送分
ゲスト:立川ARTレディースクリニック 院長 右島富士男先生
テーマ:「子宮内膜の成熟度」
番組を聴く:

番組内容

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。お話を進めていただくのは、スペイン発の不妊治療を専門とした遺伝子検査会社アイジェノミクス・ジャパンのサイエンティフィックアドバイザーであり、工学博士のトシさんです。トシさん、よろしくお願い致します。

トシ: よろしくお願いします。今日もスタジオに、立川ARTレディースクリニックの院長、右島富士男先生にお越しいただいています。テーマは「子宮内膜側のタイミング」についてになります。先生、よろしくお願いします。

右島: よろしくお願いいたします。

西村: 今日は最初に、先生から何かエピソードをお伺いできたらなと思うんですが。

病理組織検査から遺伝子解析へ

右島: 今日のテーマとなってきますのが子宮の内膜についてなんでしょうけれども、胚移植と子宮の内膜というのは非常に重要な関係にありまして、胚の成熟度と子宮内膜の成熟度が一致した場合、非常に着床率が高くなるというデータが出ている訳ですよね。
 この子宮内膜の成熟度を調べる検査というのは、アイジェノミクスさんが始めたメッセンジャーRNAを求めたその成熟度という前に、古典的な検査があった訳ですね。それは病理組織的な検査でありまして、子宮内膜日付診というような検査が、まあ現在でもある訳ですけれども、いわゆるその形態的な様子を見て、この内膜が何日目の内膜に相当するのかというような形態的な状態を病理学の先生が見ていただいて診断を行うというような検査が以前から行われていました。
 ただ、やっぱりあくまでも見た目ですからね。細胞の中の状況が実際にどうなっているんだろうか、というようなことは以前から、ちょっと僕らとしましても限界があるんじゃないかなと思ってまいりまして。
そこで新しい検査が出てきたということを考えますと、この検査をもう一度使ってみようかなと思い始めたのが、最初のERA検査を行い始めたきっかけでございます。

トシ: ありがとうございます。ERA検査はメッセンジャーRNAという、RNAですね、細胞から出てくるもので実際にどういった遺伝子が働いているのかというのを見て着床の窓の時期を見ている検査であります。だから、分子生物学的な、昔からあった日付診とはまったく違った方法で見る方法。
ERA検査については、このラジオ番組で何回もご紹介させてもらっているんですけれども、やはりその中で私、今回ちょっと先生と話したいのは、その着床の窓っていうものを、よく言葉では出てくるんですけれども、どんな窓をそれぞれみんなイメージしているかっていうの、みんな違うなと感じてきてて。本当に家の窓をイメージする方もいれば、いやいや、全然小さな小窓をイメージをしてたりとか。先生、そのあたり、窓と聞くとどういう、もしかこう、引き戸のような窓だったりとか?

右島: これはですね、僕は常々思ってることですけども、学術用語というものに騙されてはいけない、と。まず、分からないものに名前を付けるんですね、学者たちはね。

西村: そうなんですね。

右島: 実際にインプランテーションウィンドウとありまして、着床できる窓が存在するというようなことを言い始めた先生がいます。ところが、そのインプランテーションウィンドウっていうのを見た人は誰もいません。

トシ: いませんね。

右島: そう。それが一体何であるのかというのを、実際に具体化して説明した先生方も、一人もいません。ある程度はこういうことであろうかという推測のもとでお話をしている先生はいるかもしれませんけれども、やっぱりその言葉に惑わされてはいけないというのが僕の考え方です。
言葉をうまく使うと、それが一人歩きしてしまっている時代であるということがあると思ってます。

トシ: 先生のおっしゃる通りで。私たちの、例えばERA検査が着床の窓の時期を見つけるという訳なんですけれども、実際にこう名前を指摘された先生がいらっしゃって。
ERA検査は着床の時期ではなくて、卵を戻す時期を見つける検査が正しいんじゃないかと。エンブリオトランスファーの時期って名前の方が本当は良いんじゃないかということがあって(笑) あながち間違っては無くて、それは。むしろ合っていたりもして。ちょっと考え直させられたのがあります。

右島: そうですね。実際に子宮の内膜がウインドウのように開いている訳じゃなくて、着床の時期を明示してくれているものだと考えているのは僕は同感だと思います。実際に子宮の内膜の成熟度、それを見ていると考えても良いかなとは思います。
現在、主に行われている胚移植というのは胚盤胞移植という方法です。胚盤胞と言いますと着床寸前の胚でありまして、一番着床しやすい状況に発生したエンブリオ、胚であるということの認識が今では一般的でありまして、それを実際に臨床応用されているという先生方が一番多いと認識しておりますけれども、その胚盤胞を移植してもなかなか妊娠しない方がいます。何回も移植しても妊娠しない、いったい何に問題があるんだろうかということになる訳ですよね。
 多くの先生方はやっぱり胚に問題があるんじゃないか、年齢的にちょっとこういってる方ですから、着床することの能力が落ちてるんじゃないかな、という方もいらっしゃいますけれども、若い人でもそういう方いらっしゃるんですね、着床しないという方がね。そうなってきますとその理論というのは間違いかな、と思いまして。
それで、その子宮の内膜を調べてみますと、子宮の内膜の成熟度が遅くなっている、そういう状況がERA検査を用いることによって分かってきました。それを用いて治療いたしますと、やっぱり難治性の着床障害の患者さんが改善できるという経験をするようになってまいりました。

トシ: 先生、後半はですね。まだ私、ちょっと先生と話したい内容として、まず着床の窓の長さについてです。

着床の窓と年齢の関係

右島: 長さということに関しましては、僕は着床の窓という言葉、あんまり好きじゃないですね、はっきり言いますとね。着床の窓があることによってその先がまったく見えなくなってくる。実際何が起こっているのかっていうのが分からなくなってくるための一つの壁になっちゃってるんじゃないかな、と思います。
 それをもう少し細かく言いますと、僕が考えているのは内膜の成熟度。それと、卵の状態。これがちゃんとうまくインターアクション、会話ができているかどうかというところがとても重要じゃないかなと思ってます。
 まずはその子宮内膜の成熟度から言いますと、僕らのデータから、一般的な傾向から言いますと、若い人に比べますとやっぱり年を取っている、と。30代後半から40代の人の子宮内膜の成熟度、いわゆるERAの状態ですけれども、一般的に移植している時期よりも1日遅れている、という状況は多くなっている印象を持っています。それから、卵の発育もそれに相応してでしょうか、少しずつ発生が遅くなっていくような印象も持っております。
そういったことを考えますと、その卵と内膜のインターアクション、それを揃えることがとても重要なことだと思っております。その意味でERA検査を行いまして、現在の子宮の内膜の成熟度、それを示してくれているのがそのERA検査ではないかなと思います。
 それから、子宮の内膜に移植するエンブリオ、いわゆる胚盤胞と言われている卵の時期ですよね。これがやっぱり、移植した後にどんなことが起こってくるのかと言いますと、その胚盤胞の周りにタンパク分解酵素が発現してくる訳ですよね。タンパク分解酵素が発現して、子宮内膜を溶かしている。それから、その溶かされた内膜からエンブリオがお母さんの体の中に潜っていく。この過程を着床と呼んでいる訳ですけれどもね。
その過程というのがとても重要になってくるかと思いますし、スピードということを考えてみますと、僕の印象でしかなくて申し訳ないんですけれども、やっぱり年を取るにつれて遅くなってくる。実際にウインドウの時期というのを調べたことは無いんですけれども、年を取るにしたがってそのウインドウの時期が少しずれていく。それから成熟度も遅くなってくる。それから、ウインドウの時期がもしかしたら短くなってきてるんじゃないかな、という印象を持ったりします。
 それに伴って、内膜じゃなくてエンブリオの方は、タンパクを発現するスピード、子宮の内膜に入っていくスピード。これもやっぱり少しずつ遅くなっていく。内膜の方は時間的に短くなっていって、エンブリオの方は時間がかかるようになってくる。そうしますとやっぱり結果として着床できない、ということが起こってくるんだろうなと今、印象として思っております。

トシ: そこで質問ですけれども、卵側の、胚盤胞期胚のグレード? 胚盤胞期胚でも初期の方なのか、後期の方なのか。このあたりの、どっちの方が、先生の今の話を聞くと、後期の方が?

胚盤胞グレードと着床の窓の関係は今後の課題

右島: そうですね、はっきりと時間的な状況というのが読めてくる、と。場合によっては胚盤胞のグレードが若い、1とか2とかって場合には3、4と進んで、5、6ということで着床してくる訳ですよね。その時期の時間がかかり過ぎてしまうということも考慮に入れなきゃいけない。
だから、この時期に胚盤胞を移植してくださいというよりも、もっと具体的に胚盤胞の時期まで示してくる、あるいは場合によってもうちょっとデータを絞って、年齢的には遅くなってきますから、その状況まで分かってくるようになれば、それはもっと応用の効くERA検査の治療方法になってくるかなと思いますし、サジェスションにも影響が出てくるかな、と。結果的には着床率にも影響が出てくるかなと思います。それが今後のERA検査を有効に使っていくという一つの課題になってきますし、それがうまくいった場合にはそれを恩恵として受ける患者さんも増えてくるんじゃないかなと思います。

子宮内膜を厚くするためのアプローチ

トシ: ありがとうございます。もう一つ、子宮内膜側の厚みについてです。私たちERA検査をする上で、やはり何ミリ以上あった方が、という話をさせてもらってます。薄いよりは厚い方が良いというのは感覚的にあるかと思うんですけれども。

右島: 臨床的にわれわれがこう治療していますと、やはりその傾向はどうしてもあるようですね。僕らがやっている治療方法としますとG-CSFと言いまして、白血球を増やすお薬を使って子宮の内膜を厚くしていくという方法を使っています。われわれとしましては、名前を出しますと、GESTっていう方法を使っています。

(二人): GEST?

右島: GEST法。G-SCF Endometrial stimulating treatmentという方法を使いましてね。これはヨーロッパの研究者たちがやられている方法ですけれども、それを使うことによって多少内膜が厚くなってくるということで、妊娠効率を上げていくという方法をわれわれのクリニックではやっております。その治療法をやっているのがわれわれのところと、東大と、日本医大。この3つの施設でしか今は日本ではやられていないという状況でありますけれども、内膜の状況を変えるということには一つのアプローチとしては有効な手段かなと思ってます。

トシ: ありがとうございます。私たち、患者さんから問い合わせを日々受けるんですけれども、その中で過去にあったのが、ERA検査を受けたいと思っている、と。ただ、子宮の厚みとしては十分厚くなってなくて、先生はまず厚くしようかと言われる。厚くする方法何か無いですかね? って言われたときに私たち、やっぱり無くてですね、考えが。サジェスチョンがなかなかできなくて。そういったGESTというのがあるんですね。

右島: そうですね。白血球の力を借りるんですね。

トシ: 白血球の力を借りて子宮の中を厚くする。なるほど。

右島: 反応性の良い人はいますけれども、そういう人は多いんですけれども、でもその中にはやっぱり反応が悪い方もいらっしゃることは確かです。

トシ: ありがとうございます。
 先生、さっき出てきたGEST。これちょっと、また次週聞きたいので。GESTって何でしたっけ?

右島: GESTは、G-SCF Endometrial stimulating treatmentの頭文字を取りましてGESTという方法で行っております。

トシ: 次週、ちょっとまたお願いします。

右島: はい。よろしくお願いいたします。

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