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生殖医療のエビデンスについて。生殖医療の定量的考え方についても

FM西東京にて毎週あさ10:00~放送中の「妊活ラジオ~先端医療の気になるあれこれ」。毎週さまざまな先生方をゲストにお招きし、不妊治療の最先端医療技術についてわかりやすくお伝えしていきます。

番組内容

2021年6月20日日放送分

 

西村:今週ご出演いただきますのは、浅田レディースクリニック理事長の浅田義正先生です。

まず浅田先生、浅田レディースクリニックのご紹介、お願い出来ますか?

浅田レディースクリニックについて

浅田:浅田レディースクリニックは、不妊治療専門のクリニックとして2004年に始まったんですが、名古屋の北の春日井市というところの勝川という駅前で始まりました。

2010年に名古屋駅前クリニックを開院して、2018年から3つ目のクリニックとして東京の品川に浅田レディース品川クリニックを開院しました。

西村:そして先生の自己紹介も是非お願いします。

浅田:自己紹介ですか(笑)不妊治療専門に今やってますが、産婦人科、その前は内科も一時やってたんですけど産婦人科をやって、それから1993年、94年、アメリカに留学の機会を得て、ちょうどそれが顕微受精の黎明期と言うか始まったところだったんで、顕微受精の研究に従事して95年、日本に帰って来ましてそれからずっと顕微受精をライフワークとしてやって来てます。それからは不妊治療専門としてずっとやって来ました。

西村:ありがとうございます。

さて、今週のテーマでございますが、「生殖医療のエビデンス」と題してお届けしてまいります。

エビデンスに基づく医療とは

リュウタロウ:今日のテーマ、「生殖医療のエビデンス」は先生からご紹介いただいたテーマです。お聞きした時には、重要だけどものすごい壮大なテーマだな、と思いましてですね。今日はぜひ、どのような視点からエビデンスのお話をいただけるのかというところからお伺い出来ればと思っております。

浅田:はい。最近いろんなところでエビデンスという言葉を聞くと思うんですね。生殖医療に限らず、医療の現場で昔からやって来た医療、習慣的にやって来たことも、本当に効果があるのか?と。コロナ感染でいろいろ言われてる時も、ちゃんとエビデンスのある政策をとっているのかと、そういう風に批判されるところもある訳なんですね。だからその医療の確からしさ、正しさみたいなことをやっぱり検証しながら良い医療を進めていかなきゃいけないということで、エビデンスが必要になってきます。

リュウタロウ:やっぱり検証しながらって言葉がすごく必要だなっていうのは感じます。

浅田:ただ、どんな医療でもそうですけど、最初はよく分からないけど良さそうだ、というようなところで始まっていくので、生殖医療は、本当に一番若いと言うか新しい医療ですので、我々も本当にいいのか悪いのか分からない状態でいろいろ新しいことにチャレンジして、それでデータをとって、やっぱりいいっていうものを続けて来て、効果がなければやめていくというような、そういう過程をたどって医療を進めて来たんですね。で、やっぱりエビデンス、その確からしさと言うか、正しさをどのように判定していくかというのが非常に大事になってくる訳ですね。

日本と海外におけるエビデンスレベルの違い

マイ:先程、他の医療でもエビデンスっていうのがかなり重要なものだという風にお話いただいたんですけれども、他の医療と比べた時に、生殖医療においては現在エビデンスっていうものはどのような状況になっているのかっていうことをお話いただけますでしょうか?

浅田:日本においては今、保険適用の話題もありますし、生殖医療のガイドラインをつくろうとしてるというとこですね。だから日本においてはほとんど正式なガイドラインでエビデンスがいいとか悪いとか評価されたものは今、ない状態ですね。

マイ:そうなんですね。

浅田:いろんな学会がいろんな分野でいっぱいガイドラインはつくってるんですけど、まだ生殖医療においてはそういう状態だと言えます。

リュウタロウ:海外と比べて、というところはどうでしょう?

浅田:海外はですね、やっぱり長い歴史の中でエビデンスレベル、ガイドライン、そういうものをみんなで割と透明性のあるところで議論してつくっていくという、そういう歴史がある訳ですね。だから、例えばイギリスは皆保険で無料で体外受精もやるというお話にはなってますが、そのための生殖医療のガイドラインも印刷すると片面印刷でA4、7cmぐらいになる訳です、厚みが。

マイ:そんなに・・・。

浅田:膨大なんです。ただ、中に書いてあるリコメンデーションは213しかないんですけど、あとは何かと言ったら過去の論文を全部解析して評価に値する論文かどうかをまず見て、その上で全体の論文の中から真実としてやっていいものを選び出してと、そういう作業をしてる訳ですね。だから膨大な時間と膨大な資料、ちゃんとそういうことをやってるんですけど、日本ではそういうことがあまりちゃんとやられて来なかったということで、今やっとそこに手が着いたと言うか、保険適用の話題から急に、急いでつくってるというのが今の現状ですね。

リュウタロウ:海外ではやはり学会主導でそういったものが整えられる、あるいは日本の他の分野でも・・・?

浅田:イギリスで言えば政府の機関です。

リュウタロウ:なるほど。

浅田:ただ、保険適用になったら全部の体外受精を好きな時に保険で出来ると思ったら大間違いで、イギリスのガイドラインでは、40歳以下の方で体外受精3回までしか出来ないんですね。40以上になって来ると1回しか出来ないんです。

マイ:1回ですか・・・。

浅田:だから、やっぱり保険でお金を出す方も無料なんですけど、もうしっかり制限してると。だいぶ日本の保険診療と違うという風になってます。

リュウタロウ:なるほど。

マイ:メリットとデメリットがいろいろあるっていうことですね。

浅田:そうですね。ただ、誰かが言ったからこれがいいとか、そういうのじゃなくてやっぱり論文ベースでちゃんと論文を評価した上でいいものを選ぼうという、そういう姿勢がやっぱり海外は強いですね。

生殖医療は定量的考え方が乏しい?

リュウタロウ:もう少しエビデンスについて深掘りしていきたいなと思うんですけれども、以前ちょっと先生とディスカッションさせていただいた時に、生殖医療は定量性、定性性というとこで定量性が乏しいんじゃないかっていうご指摘があったかと思うんですけども、その辺りをもう少し詳しく具体的にお話聞かせていただくことは出来ますでしょうか?

浅田:はい。定性と言うと、マルかバツか、これはいいか悪いかといったことで。不妊治療にお酒を飲んでいいのか、コーヒー飲んでいいのかと、マルかバツかみたいなことで考えるんですけど、定量性というのはお酒をどれだけ飲んだら本当に妊娠率が下がるのか、コーヒーをどれだけ飲んだら妊娠率が下がるのかということです。実際、お酒やコーヒーを飲んで避妊しようと考える人がいたら大変なことになりますよね。

リュウタロウ:なるほど。

浅田:定量的に言ったら影響力が非常に少ないことでも、他のいろんなことと同じように語られる訳ですね。不妊治療をやればこれだけの妊娠率が出るのにと思うんだけど、例えば不妊治療で40%妊娠率が出ます、と。でも妊娠率がほとんど出ないようなことも、患者さんが一生懸命やってたりするんですね。

リュウタロウ:なるほど。

浅田:だからそういうところに、やっぱり何かやる時に自分で定量的に評価をして、そこに優先順位をつけて不妊治療に取り組んで欲しいなということをずっと感じて来た訳ですね。

リュウタロウ:やはり患者様からも、定性的な質問というのが結構多いっていうことでしょうか。

浅田:いくらでもありますね。

リュウタロウ:なるほど。実は弊社のWEBの問い合わせとかも、先生がおっしゃるように定性な質問って結構やっぱり多いんですよね。マルでもなくシロでもなく、っていう説明が弊社はなかなかこう、難しいなと思う時がよくあるんですけれども、先生はどういったかたちでそれを患者様にお話を?

浅田:極端なことを言えば、「先生、マグロ食べていいですか?」と。

それはマグロが食物連鎖の最終として有機水銀が溜まるみたいな、そういうところから来てる訳ですね。でも、それはあなたがめちゃくちゃお金持ちで、妊娠中に毎日本マグロを1本ずつ食べてたら、何か影響があるかも知れませんね、という、そういうお話になりますし、「うなぎ食べていいですか?」という人も。あれ、ビタミンAが入ってるということで、それを毎日3食うなぎを食べ続けたら何か影響があるかも知れませんね、と。今言ったふたつも、実は不妊治療には関係ないんです。

リュウタロウ:はい。

浅田:赤ちゃんがお腹の中にいる時にそういうものを摂り過ぎると良くないかも知れないということが言われてるんですが、普通の人が普通に生活してて、ほとんど何も影響ないんですね。でもいいか悪いかと言ったら、やっぱり摂らない方がいいよね、とかそういうお話になるんで。だから本当に定性で考えてしまうと、いっぱいいろんなことを気にして、いっぱい制限をしてということになるんですね。でもそんなこと気にせずに、普通に不妊治療をやったら、全然効果のレベルが違うよ、ということを私はいつも訴えてるんですね。

物事を考える時、人生の中でいろんな判断をする時に、定量的な判断をしたと、そうするとやっぱりそこで優先順位つければかなり楽になると思うんですね。自分の出来ることと出来ないことを分けられるし。

リュウタロウ:確かにマルかバツっていうのはなかなかこう、現実にはないですね。

浅田:不妊治療で言うと、今言ったように妊娠するためにすることと、妊娠してから赤ちゃんのためにすることが全然別なんです。栄養摂ってなくても妊娠しちゃうんですよ、人間って。

リュウタロウ:なるほど。

浅田:戦争時代とかね、難民キャンプで栄養失調のお母さんも栄養失調の赤ちゃんを産めちゃうんです。ただその後順調に赤ちゃんが育つとか、妊婦さんが健康でいられるとか話が別なんですね。

だからそこのところもはっきり分けて欲しいし、その辺の情報がごっちゃに入って、で、規則正しい生活で栄養摂ってたら妊娠出来るんだと思ってる人もいる訳です。ただその目的と自分の行動がちょっとずれてるなと思うことが多いんで、定量的に考えましょうよ、と僕は言いたいと思ってます。

リュウタロウ:なるほど、なかなかこう患者様からすると結構難しいのかな、今の分かりやすい事例だったらいいんですけど治療1個1個で定量的な判断って、結構難しい場面もあるのかなと思うんですけど。

浅田:そうですね、治療ごとにやっぱり期待される妊娠率ももちろん違いますし、いろんなオプションがあって、今いろいろやられてるんで、すごいやる価値があるかどうかという判断の時にも定量的に考えると思考が整理出来ると。あれもこれもじゃなくて、あれかこれかにした方がいいと思ってます。

今後エビデンスをどう捉えていくのか?

マイ:今、いろいろお話いただいたと思うんですけれども、生殖医療において、今後そういったエビデンスっていうものをどのように捉えていったら良いかっていうことについてお聞かせいただけますでしょうか?

浅田:やはり我々、今までは先端的な医療として、ドクターそれぞれ割と勝手なことをやって来た訳ですね。

クリニックごとでやってることが違うと。いろいろな不妊治療を。でもそのデータをちゃんとみんなが開示して、本当にいいものを中から選んで全体のレベルを上げていくということが大事だと思いますね。

リュウタロウ:そうすると今、政府が主導しようとしてることはやはりこう、皆様の役に立つようになっていくのかな。

浅田:やはり生殖医学界とか、そういう学会の活動としてやっぱりエビデンスをちゃんと評価したガイドラインをしっかりつくることが大事だと思いますね。

それで全体の平均じゃなくて、先端的ないいものをやっぱりそこの中にちゃんと取り入れていかないと、みんなで決めたのはいいけど平均が下がっちゃったということも起こり得るんで・・・。

リュウタロウ:そこは気を付けないと、高いレベルで平均化しないといけないってことですね。

浅田:そうですね。

リュウタロウ:学会主導でやっていく中で、やりやすい部分、やりづらい部分とかあるかと思うんですが・・・。

浅田:生殖医療はやっぱり僕らは大学で始めた訳ですよ。

でも大学はいろんな制度もあって、例えばいつ排卵するかってことは、2、3日前にならなければ分からないけど、それを使おうと思ったら1週間前に予約しなきゃいけない。土、日は診療しちゃいけないとかもね。そういう制約もあって、民間というかプライベートの方にどんどん移ってきた訳ですね。学会はやっぱり大学の教授中心なんで、体外受精ってあんまりやってない人が多いんですね。だから実際やってる人、専門家をいかに入れて、その専門家をより多く集めた上で議論していかないといけないと思うんですが、その辺のところがやっぱり今後上手くやっていけるのかな、という不安があります。

リュウタロウ:その辺りが他の医療と生殖医療は少し違うところなんでしょうか?

浅田:そうですね。がんの先生はいっぱいいるんだけど、生殖の教授はどんどん減っちゃってるんで心配です。

リュウタロウ:なるほど。

西村:さて、お時間となりました。

今日は、浅田レディースクリニック理事長、浅田先生に、生殖医療のエビデンスについてお伺いしました。

さらに来週は、AMH検査について浅田先生にお話を伺ってまいります。

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